印刷済みキャリアフィルムのリサイクルにおける課題と、リサイクルされたマテリアルの可能性創出に向けて
今回は、以前の記事で紹介した使用済みキャリアフィルムリサイクルの取り組み第二弾になります。
キャリアフィルムとは転写工法では必ず使用されるPETフィルムで、一度の使用のみで廃棄されてしまうワンウェイプラスチックです。当社で行っている転写工法でもPETフィルムが多く産業廃棄物として排出されており、その処理方法は長らく熱回収(エネルギーリカバリー)に限られていました。廃棄物の削減や資源循環の観点からは、マテリアルリサイクルを経てPET樹脂として再生利用できることがより望ましいと考えられますが、印刷済みのキャリアフィルムにはPET以外にインクなどが混ざっているためリサイクルが困難でした。
この課題を解決するために、前処理やペレット化に向けた条件の見直しなどを行う事によって、キャリアフィルムのマテリアルリサイクルを実現しました。同時に、リサイクルされたPET樹脂に新たな価値を重ねて活用する方法を模索しています。
使用済みキャリアフィルムをマテリアルリサイクルして作られたペレットを、3Dプリンタを用いたユニーク品の造形可能性を模索した前回に続き、今回は個性ある少量生産技術を用いた成形品の製作を行いました。
キャリアフィルムのリサイクル × 少量射出成形機による一点物の意匠という付加価値
使用した卓上型の射出成形機(モールドロック®︎)は、射出成形というプラスチックの汎用的な成形技術を、卓上に乗るほどのコンパクトさと手軽さで実現することができます。量産時に使用される大型装置に比べて、コストや製造時のエネルギー消費を大幅に抑えることができ、また少量から取り組むことができる点も、マテリアルリサイクルの初期フェーズに適したプロセスとなっています。樹脂の溶融にスクリューを使用しないため、複数の色の樹脂を混ぜて使用することによりマーブル調や色鮮やかなデザイン表現も可能です。
今回の取り組みでは、マテリアルリサイクルしたペレットのやや黄みがかった色味と、このユニークな成形機の特性を生かし、大理石調のペントレーを製作しました。1点1点異なるフローを描きながら美しく表現されたこのマーブル模様は、一般的な射出成形機では安定した表現が難しいとされるもので、まさにマテリアルリサイクルというプロセスに由来したCMFといえます。このようなストーリーを内に秘めた製品の佇まいは、製品・材料をより大切にする気持ちを思い起こすきっかけとなりうるのではないでしょうか。
持続可能な製造プロセスを目指して
使用済みキャリアフィルムのマテリアルリサイクルに関する取り組みの第二弾として、卓上型射出成形機(モールドロック®︎)を用いたリサイクルPETの成形品をご紹介させていただきました。
私たちはこの取り組みについて様々な技術を組み合わせながら、リサイクルの可能性を広げていきたいと考えています。
第三弾についても掲載を予定しておりますので、どうぞお楽しみにお待ちください。
今回の取り組みで製作したペントレーサンプルは、「CMF DESIGN 2024」にも掲載しております。
※本稿でご紹介している内容は、マテリアルリサイクルの実施に向けた試験的な取り組みです。