水素ステーションで使われる金属の脆性破壊の研究に活用されているセンサーガスクロマトグラフSGC
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水素ステーションで使われる金属の脆性破壊の研究に活用されているセンサーガスクロマトグラフSGC

目次

次世代のエネルギーとして期待されている水素。この水素は金属に吸蔵されると水素脆性という材料特性の低下の問題を起こすことが知られています。水素ステーションの設備に使われる金属の安全性を高めるためには、この水素脆性についての理解を深める必要が有ります。そうした水素脆性の研究において、センサーガスクロマトグラフSGCが活用されています。

水素ステーションの蓄圧器の安全性を高める研究

今回紹介するのは大阪大学大学院基礎工学研究科材料構造工学講座の堀川敬太郎准教授。堀川准教授が研究しているのは金属材料の水素脆性についてです。特に、燃料電池用の水素を貯蔵する水素ステーションの蓄圧器や配管に使われる鋼や水素貯蔵容器の封止弁やライナーなどに用いられるアルミニウム合金などが現在の研究対象です。 水素燃料電池といえば燃料電池自動車(FCV)がすぐに思い浮かびます。FCVの車体はできるだけ軽くすることが求められるため、搭載される水素タンクの材質には金属ではなく繊維強化プラスチック(FRP)が一般的に多く採用されています。一方で水素ステーションの蓄圧器や配管には金属が使われます。蓄圧器は一時的に圧力を高めた状態で水素を保存する設備です。水素の圧力が非常に高いことや、水素充填時の環境温度が-40℃から100℃前後まで急激に変化することなどから、蓄圧器の材質はFRPではなく肉厚のCr-Mo鋼などの金属でなければその条件をクリアできません。
一方、高圧水素用配管材料として使用されている金属の代表はステンレス鋼。特にオーステナイト系ステンレス鋼がよく使われています。オーステナイト系ステンレス鋼はフェライト系やマルテンサイト系のステンレス鋼と比較して原子の充填率が高い鋼材です。つまりオーステナイト系ステンレス鋼の内部構造はフェライト鋼やマルテンサイト鋼よりも密であるため、水素を拡散させにくいのです。
このような特長を持つステンレス鋼でも、高圧の水素に触れる配管で使用するうえでは水素脆性の危険は伴います。水素脆性のメカニズムの研究は、こういった水素用容器の安全性を高めることに役立っているのです。

鋼の遅れ破壊のメカニズムを解明する取り組み

鋼の遅れ破壊イメージ

堀川准教授の研究対象は、水素脆化による「鋼の遅れ破壊」という現象です。
遅れ破壊は、ボルトなどの鋼中の水素が高濃度化することで塑性変形(延びたり曲がったり)することなく脆性破壊(ポキンと折れる)が突然起きる現象です。遅れ破壊は明確な前兆が無いため、発生を予期するのが難しい現象です。そのためこのような脆性破壊の兆候を見つける研究は、危険予知のために重要なのです。
堀川研究室では、水素原子が金属中でどのように動くか、どのように表面に欠陥を作っていくのか、そういった基礎的な挙動の解明から研究を始めました。脆性破壊を引き起こす水素には、金属に内在しているものと、金属表面から乖離して金属内部に入り込む水素の2種類があります。通常、金属中にもともと含まれる水素はppmレベル以下の極微量なので、水素脆化には大きな影響はありません。一方で、材料表面から入り込む水素は脆性破壊の要因となることが多いです。このような水素は、溶接やめっきといった加工プロセスを通して材料表面から取り込まれた多量の水素が金属の中に溜まっていくと考えられています。
そして、金属中の水素濃度が高くなり、引張応力の作用が加わると金属の表面に亀裂ができるといった破壊の前兆現象が起こり、亀裂面から水素が離脱します。こうした現象を動的に分析することで、金属の破壊がどのようなメカニズムで発生するのかを明らかにすることができるのです。

コンパクトで使いやすい小型ガスクロマトグラフSGCとの出会い

SGC

堀川准教授とセンサーガスクロマトグラフSGCの出会いは2010年頃まで遡ります。
その頃、堀川准教授はある企業からの相談を受けて昇温水素脱離試験機を探していました。当時の昇温水素脱離試験装置の主流は、検出器にTCD(熱伝導度型検出器)を使ったガスクロマトグラフでした。このガスクロマトグラフはサイズが大きいうえに取扱いやメンテナンスも難しく、感度的にも少し不満が有りました。もっとコンパクトで使いやすい装置はあるだろうかと探している中でSGCに出会います。
ただ、そのときSGCにはまだ昇温水素脱離試験向けに最適化された機種が有りませんでした。しかし当時のエフアイエス(現NISSHAエフアイエス)の技術メンバーは試行錯誤を繰り返し、昇温水素脱離試験に対応したSGCを開発したのです。

微量に放出される水素を検出できたセンサーガスクロマトグラフSGC

SGCの大きなメリットは、TCDでは測れなかった極微量の水素濃度が測れたことでした。金属の試験片から放出される水素の濃度はppbレベルです。TCDでは、この濃度域の水素を正確に測定することができませんでした。SGCは10ppbの水素から測定ができるので、微量な発生でも測定が可能だったのです。

水素ステーションの安全性向上をめざして

水素脆性の研究は、燃料としての水素を安全に使っていくために重要な役割を果たしています。
たとえば、高圧タンクに充填した水素が金属壁材の内部に入らないようにする保護膜の研究や、金属内部の水素を動きにくくする方法の研究など、水素を安全に貯蔵できる高圧タンクを開発するために水素脆性の理解は欠かせません。また、液化水素を輸送する船舶の構造の検討においても水素脆性の危険性は考慮しなければなりません。
このように、堀川准教授の研究は、水素を安全に利用できる未来を実現することを目指しているのです。

センサーガスクロマトグラフSGCの情報はwebサイトで

センサーガスクロマトグラフSGCはNISSHAエフアイエスが提供するガス分析装置です。仕様などの詳細は製品webサイトで紹介しています。ぜひご覧ください。
製品webサイトはこちら >

また、水素脆性の分析に特化した昇温脱離型水素分析装置PDHAシリーズも用意しています。測定装置にはSGCを使用し、昇温脱離試験に必要な周辺設備をセットで提供します。PDHAシリーズについてもwebサイトで紹介しています。
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