STORIES

未来のデザイントレンドを捉える|Design & CMFのサンプルブックづくり(インタビュー 後編)

2024/12/10

CMF DESIGN

前編では、モビリティ業界と幅広い業界に向けてそれぞれ制作しているサンプルブックの目的や制作プロセス、そしてデザインディレクション時に重視しているポイントについて、江口、鶴谷にインタビューを行いました。後編では、サンプルブックの今後について深堀りした内容をお届けします。

聞き手
中西 美佳:NISSHA株式会社 産業資材事業部 マーケティング部 Design & CMFグループ プロダクトディレクションチーム シニアデザイナー
話し手
江口 もも子:同グループ アートディレクター ライフプロダクツ チームリーダー
鶴谷 知紀:同グループ 海外モビリティ チームリーダー

デザイナーとエンドユーザーの視点をつなぐ:市場トレンドを踏まえたデザイン提案

中西:今作っているサンプルブックを、誰に一番届けたいですか?

鶴谷:一番は自動車メーカーのデザイナーの方々にお届けしたいと思っています。ただ単に「いいものを作りました」というだけではなく、「この内装の自動車に乗る人はこういう価値観を持っているから、こちらが好まれます」といった具体的なご提案を通じて、説得力のあるCMFデザインを提供したいと思っています。

江口:CMF DESIGN BOOKには複数の目的があると思います。まず、NISSHAとして考えている未来の方向性やトレンド情報をお伝えすることです。また、リサーチ能力をアピールし、デザイナーの方々に分かりやすくお届けすることも重要です。ライフプロダクツの市場は広大で多様なので、サンプルブックが広報的な役割を果たし、NISSHAに相談すれば面白い提案をしてくれるかもと期待していただけるようなブックにすることも大切だと思っています。

海外モビリティ チームリーダー 鶴谷

アートディレクター ライフプロダクツ チームリーダー 江口

中西:ありがとうございます。それではサンプルブックを作る上で力を入れていることを教えてください。

鶴谷:そうですね、トレンドの落とし込みが一番の力の入れどころです。限られた手札の中でどのように表現するか頭を使いますし、開発中の技術を取り入れようとしてもまだ実現が難しい場合もあります。また、NISSHA TREND VISIONをどう具体化するかや、全体のバランスを整えることも重要です。工法的に偏った内容にならないように気をつけながら、トレンドを意匠に落とし込み、ひとつのブックとしてバランスを保つことが課題ですね。

江口:モビリティ業界に向けたブックとは違って、CMF DESIGNではトレンドの落とし込みについてはフィルターをあまりかけずにアプローチできます。頭を悩ませるのはディレクターよりも、むしろデザイナーの方かもしれません。モビリティ業界へご提案するCMFデザインにはリサーチに基づく具体的な裏付けがあるのに対し、CMF DESIGNのテーマはコンセプトが抽象的なため、デザイナーが考えすぎて迷子になることがあります(笑)。

中西:私も制作に携わったことがありますが、CMF DESIGNは本当に自由にデザイン表現を考えられるんですよね。

江口:だから悩むんですよね。私、正解を知ってる人だとよく言われるんです。「このテーマの正解、知ってるでしょう?」みたいな。一本道の中でデザインの方向を見失った人を導くのは難しいですし、最初のアイデアが一番良かったということもあります。「なんでもいいよ」と言われても、どこまで自由にできるかの境目はあるんです。そのバランスを取りながら進めるのが力の見せどころだと思います。

新しい技術が広げるサンプルブックの可能性

中西:それでは、最後の質問になりますが、 今後、これからのサンプルブックでどんな挑戦をしてみたいですか?また、進化していくサンプルブックをどういう方たちに届けたいと思いますか?

鶴谷:サンプルブックだけでは伝えきれないことを補完していくような取り組みができたらと思っています。CMF DESIGN 2024で実現したARのアイデアは面白く、意匠を製品に実装されたように見せることができれば、お客さまの理解がより深まるかもしれません。また、モビリティ以外のお客さまからもサンプルのご要望が多いので、特定の分野にとどまらず、業界を広げて考えていくことが重要だと思います。今のトレンドリサーチ力を活かしながら、さまざまな方向にアプローチできれば、世の中にもっと貢献できると思います。そうした広がりをサンプルブックにも持たせることができれば嬉しいですね。

写真左から中西、江口、鶴谷

江口:多分変わらず新しい取り組みをアップデートしていくのかなって気がします。実は、サンプルブックでは毎年何か新しいことを必ずしてるんですよね。去年だとARとか、動画を入れたりとかもしました。過去に、家電市場向けWOODっていうブックを作ったことがあります。元々はモビリティ業界に向けて作ってくれていた木目意匠を、家電でも使える工法に変更してカスタマイズしたものなんです。そのブックがきっかけになってご相談を頂けることもあるので、そういう取り組みも続けていけたらと思っています。

中西:ARや動画は、お客さまがより使いやすくなるために取り入れたんですか?

江口:社内メンバーとお客さまの双方が使いやすくなることが理想ですね。特に海外のグループ会社のメンバーにも理解しやすい内容にする必要があります。誤解を避けるためにも、わかりやすさを重視したいですね。サンプルブックをさまざまな意見を集めるためのテストの場として活用するのも良いアイデアで、他のメンバーがやりたいことがあれば、ブックに合うものであれば取り入れてみるのも面白いと思っています。新しいことに挑戦するのも大切ですが、みんなが活躍できる舞台を整えることで、さらなるクリエイティブな発想が生まれるかもしれないと期待しています。

   

こぼれ話 話し手メンバーの来歴

大学時代に身につけたデザイン視点の広げ方

江口:私は大学はグラフィックデザインの専攻でタイポグラフィーを勉強していました。将来はグラフィックデザイナーになると思っていたんですが、卒業後はデザインから一旦離れて、全然違う業種(ホテル)に就職、和食サービス部門で働いていました。でも、グラフィックデザイン学科卒業の経歴があったので、広報に異動になってホテルのポスターやメニューを作る仕事をすることになったんですよ。その数年後にはNISSHAに転職、私のキャリアとしてはNISSHAの産業資材事業部が一番長いです。

設計者からデザイナーへ:理系のバックグラウンドから生まれた多角的アプローチ

鶴谷:僕は理系で工学部の機械システム工学科出身です。キャリアとして最初はカーナビやカーオーディオに携わり、樹脂や板金部品の設計、インターフェースの導光設計などを行っていました。自動車関連の仕事が中心でしたね。その後、デザインにもっと関わりたくて住宅設備機器メーカーに転職し、設計からデザインや商品企画にも携わるようになりました。主にキッチンのデザインを担当し、シンクやレイアウトを考えていました。今の仕事は商品企画としての視点は似ていますが、デザインの内容は大きく違う感じですね。

NISSHAについてご興味がありましたら、お問い合わせフォームよりご相談ください。

一覧へ
ページの上部へ