CMFデザインと産学連携
NISSHA Design & CMFグループでは、デザイン・芸術系大学との産学連携を実施しています。NISSHAが独自に培ってきたCMFデザインのプロセスを大学の学生の方々に学んでもらう取り組みを行いました。
今回は京都芸術大学プロダクトデザイン学科の風間学科長が担当する2年生・3年生の後期授業の中で実施した、約1か月半のカリキュラムについてご紹介します。
※CMF:Color(色)・Material(素材)・Finish(仕上げ)を表す言葉
デザイントレンド分析手法を背景に、マテリアルと向きあう
はじめに産学連携のお話をいただいたとき、プロダクトデザインを学ぶ学生のみなさんがCMFデザインにどこまで関心を持ってくれるのか?もっと具体的な造形面や機能面について学びたいのではないか?という懸念がありました。
ただ、風間学科長からは「プロダクトデザインの世界観を作り出すのはCMF。だから、CMFデザインのスペシャリストとしてグローバルにデザイン提案をしているNISSHAのノウハウを伝えてほしい」とご相談いただき、産学連携プロジェクトが実現しました。
後期授業期間の半分を占めるカリキュラムの中で、私たちが毎年作成している最新のデザイントレンド分析をまとめた『NISSHA TREND VISION』の中にある4つのテーマを軸として世界観を構築するプログラムを提案。学生の方に自ら素材を探し、CMFデザインの観点から加工・デザインするプロセスに取り組んでもらいました。
CMFデザインのスペシャリストであるNISSHAのグループ会社、株式会社エムクロッシングにもご協力いただきました。代表の吉川氏から「素材が社会課題を解決する可能性」について講義を行ってもらい、素材の重要性を再認識してもらう機会を設けました。
エムクロッシングは世界中から収集した先進素材ライブラリー “Material ConneXion Tokyo” を運営。素材提案のスペシャリストとしてコンサルティング業務を行っています。
ペルソナ像を意識した段階的なデザイン制作フロー
カリキュラムは大きく4つのフェーズがあり、各グループ4名の合計8グループに分かれてグループワークを行う形としました。プロダクトデザインでは、エンドユーザーを想定して進めていくことが重要です。そのため、常にユーザーのペルソナ像をイメージしてもらいました。
Phase 01 : Team Discussion
TREND VISIONのテーマから1つを選択し、ペルソナ像から連想される人物のライフスタイルについて話し合い、トレンドの構成要素を抽出してコンセプトシートに記述
Phase 02 : Research & Discovering
コンセプトシートに記載したペルソナ像や製品のイメージからCMFを導き出し、マテリアルを収集、それをテーマに合わせて加工
Phase 03 : Visual Making
各グループで制作したマテリアル作品を被写体として構成し、テーマの世界観を表現したマテリアルムードボードを作成、撮影
Phase 04:Presentation
撮影したムードボードとマテリアル作品を並べてグループごとに世界観と作品の制作意図をプレゼンテーション
Phase 01では、まずテーマを理解し、そこからペルソナ像と暮らしぶりを設定する段階で、いずれのグループも苦労している様子でした。世の中には多様な人々が生活しており、海外も含めたライフスタイルを思い描くのは難解だったようでした。
Phase 02、マテリアル作品づくりのための素材探しや加工にも積極的に取り組んでもらえました。コンセプトシートに素材のイメージをしっかり落としこめているグループほど素材探しがスムーズで、加工にも十分な時間をかけられているように見えました。しかし、みなさん初めて体験するカリキュラムだったこともあり、Phase 02での作業時間が足りなかったグループも多く、参加者アンケートでは「もっと加工作業に時間をかけたかった」「完成度にこだわりたかった」といった意見をもらいました。
デザインの世界観を魅力的に撮影するノウハウ
Phase 03では、世界観をビジュアライズするための撮影方法について、プロのフォトグラファーによるレクチャーを実施。NISSHAエフエイト株式会社のフォトグラファー有田氏、ディレクター神内氏から「カメラを通していかに世界観を表現するか」について分かりやすく伝えてもらいました。
NISSHAエフエイトは、NISSHAの旧社名「日本写真印刷」の中にも含まれる「写真」や動画など撮影全般を提供するグループ会社で、お客さまの製品の持つ魅力を最大限に伝えるビジュアルを制作しています。
強く印象に残っているのは、レクチャー後に全グループの撮影の質が向上し、大変魅力的なボードを制作してくれたことです。光の陰影や、画面内の主従関係を考えた素材レイアウトなど随所に工夫が光り、いずれのグループも世界観の演出に成功していました。
Phase 04の最終プレゼンテーションでは、参加者全員が各テーマの世界観のなかで他者と重複せず、自分だけのマテリアル作品を発表してくれたように思います。本カリキュラムを通して、私たちの想定を超える素材選定と加工に取り組み「ありそうでどこにもなかったCMF」や、「素材と加工方法を聞いて驚いてしまうCMF」を生み出してくれたことは、私たちにとっても刺激的な発見でした。
ムードボード・マテリアル作品紹介
特に世界観を強く感じさせるムードボード、および印象的なマテリアル作品の一部をご紹介します。
作品写真はカリキュラム後にNISSHAエフエイトにて撮影しなおしたものになります。
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