昇華転写プリントとは
1 昇華転写プリントとは
昇華転写プリントの仕組み
昇華転写プリントとは、専用の「昇華転写インク」でプリントされた転写紙とポリエステル生地を重ね、熱と圧力を加えて染色する方法です。熱を加えると、インクが気化するとともにポリエステルの分子の結合がゆるみ、この隙間に昇華転写インクが定着されることで生地に色が定着します。
昇華転写プリントのメリット
●鮮やかな発色
昇華転写プリントのメリットのひとつはその鮮やかな発色です。階調表現に優れ、写真やグラデーションのプリントに向きます。また、データを調整することで、細かい色調調整が可能。デザイナーのイメージに合わせてプリントの発色をコントロールすることができます。
●生地の風合いを損ないにくい
インクを直接生地表面に乗せていく顔料プリントでは、生地を触った時にはインクの層を触ることになり、生地の風合いを損ねてしまいます。昇華転写プリントでは、生地繊維内にインクが染みこんでいるので、生地の風合いを損ないにくいという特長があります。
●シンプルな工程で小ロット・短納期対応が可能
昇華転写プリントではインクジェットプリントのように後工程(蒸し、洗い)が不要です。そのため小ロットでの生産に向きます。また、プリント後の整理加工も一般的には行わないため、短納期対応が可能です。
●環境負荷低減
上記とも関係しますが、工程数が少ないことでエネルギーの使用を抑え、また水の使用量が少ないので、環境負荷低減が可能です。再生ポリエステルへのプリントも可能で、環境負荷の低減につながります。
昇華転写プリントのデメリット
●大量生産には不向き
小ロット対応という長所の裏返しですが、大量生産でもm単価が下がりにくい傾向があります。
●ポリエステルにしか印刷できない
これは昇華転写プリントの工法上やむを得ない部分なのですが、ポリエステルであれば、ベロアやメッシュ、キャンバスなど様々な風合いの生地にプリント可能です。綿や麻などとの混紡生地にもプリントできますが、洗濯堅牢度などは生地ごとにテストが必要です。
昇華転写プリントが使われている分野
●服地
ブラウスやスカートなどのレディスアパレルをはじめとしてTシャツなどのスポーツウェア、和服など、様々な洋服の生地に使われています。
●バッグなどの雑貨
バッグやスカーフなどの雑貨の用途も多いです。
●インテリア
空間デザインの手法のひとつとして、生地にグラデーションやアートワークをプリントして、カーテンやクッション生地に使われています。
●店頭装飾用パネル
化粧品や家電量販店の売り場などでよく見かけるコルトンパネル(アクリルなどの透明な板に絵柄をプリントして背面から照明で照らすタイプの看板)と同様の用途で、店頭装飾に使われています。ポリエステルの生地にプリントすることで、絵柄の交換やパネルの輸送コスト削減に貢献しています。
●販促用ののぼりやイベント用のタペストリー
街でみかけるのぼりも昇華転写プリントで作られていることがあります。また、広幅の生地にもプリントできるので、イベントや展示会で使われる大型のタペストリーも作ることができます。
2 昇華転写プリントに対応できる生地、材料
生地
昇華転写プリントでは基本的にポリエステル生地にプリントを行います。
綿や麻などとの混紡生地にもプリントできますが、ポリエステルの部分にしか色が乗らないため、全体的に色の濃度が浅い(薄い)仕上がりになります。ただ、それが一概に悪いということではなく、独特の風合いが出るためデザインとの相性ではプリントの選択肢に入ってくると思います(洗濯堅牢度などは生地ごとにテストが必要です)。
ざっくりとしたイメージですが、ポリエステルの混率が70%であれば、プリントの濃度も70%になります。
生地以外の材料
ちょっと変わった用途としては、マグカップに昇華転写でプリントすることができます。
生地をプリントする設備とは全く異なる設備なのですが、ポリエステルがコーティングされた特殊なマグカップと、昇華転写インクでプリントした転写紙を使い、マグカップの形状に合わせて熱と圧力を伝える専用の転写機で製作します
3 昇華転写プリントの注意点
印刷と転写後では色が異なる
昇華転写プリントでは
①転写紙のプリント
②転写
という2つの工程がありますが、転写紙のプリントには専用の昇華転写インクを使うので、転写紙にプリントした段階では、仕上がりの色と全く異なる色味になります。転写機にかけることでインクが発色して正しい色味になるので、色調の確認には転写まで行う必要があります。
生地によって色の調整が必要
一般的に生地のプリントでは「P下」と呼ばれる白い生地にプリントを行いますが、生地の「白」はそれぞれ微妙に異なります。黄色味の強い白、青みの強い白など様々です。
プリントされた色は、この生地そのものの色の影響を受けるため、正確な色表現のためには生地ごとに合わせた色調の調整が必要になります。
また、色調の確認には照明環境も影響を与えるため、正しい色調管理には照明環境も管理する必要があります。
繊細な色味の表現が難しい
プリントの絵柄はデータで作られることが多いと思いますが、PCのモニターは赤・緑・青の3色の光の集まりで色を表現するのに対し、プリント生地はシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の4色で色を表現しています。この違いにより表現できる色にも差ができてしまいます。また、モニターの色もすべてのモニターで同じというわけではなく、調整していないと個体によってかなり差が出てしまうことがあります。これらの前提を正しく理解していないと、実際にプリントしてみたときにイメージと違った、といったことが起こってしまいます。
なお、プリンターは上記のCMYKの組み合わせで色を作りますが、自然界の全ての色を表現できるわけではありません。蛍光色やラメなどの金属調、その他特殊な色は、一般的な生地用のプリンターでは表現が困難です。
試作と量産で色が異なる場合がある
プリンターの設定や周囲の温湿度、インクの量や印刷スピードなどの条件により、プリント製品のでき上がりは大きく変わります。
昇華転写の場合はこれに加えて転写時の温度などでも色が変わることがあります。試作と量産でプリンターのこれらの条件を変えてしまうと、試作と量産で色が異なるということが起こる場合があります。
4 昇華転写プリントの品質管理
上記3.で述べたように、プリント生地の品質管理には様々な要素が関与しています。
まとめると、以下のようになります。
- モニターとプリント生地の色の作り方の違い
- プリンターの色調再現能力
- プリント条件(プリンターの設定や周囲の温湿度、インクの量や印刷スピード)
- 生地の地色の影響
- 照明環境
これらの条件をコントロールしつつ、お客さまの持つ色のイメージを正しく理解することで、プリント生地の品質管理が可能になります。
5 日本写真印刷コミュニケーションズの
高精細な転写技術「Fabright」
印刷の専門会社が色彩を調整
当社は、京都に本社を置く印刷会社で、書籍やカタログなど紙の印刷物を主力に事業を行ってきた会社です。文化財の複製から高級ブランドの製品カタログまで、色調にこだわりを持つお客さまとのお仕事を続けてきました。
近年では、印刷会社ならではの色調管理技術や写真撮影、スキャニングの技術を、生地への昇華転写印刷に展開した高品質なプリント生地を製作しております。お客さまのご要望に合わせて色調データを調整し、お客さまのイメージ通りの色に近づけていくことができます。
Made in KYOTOの国内生産
生地へのプリントは京都市内の工場で行っており、品質面、納期面、コミュニケーション面で信頼性の高い国内生産です。
- 画像データを加工修正する製版技術
- 工程間を管理するカラーマネジメント技術
- 色域を最大に引き出す印刷オペレーション技術
により、「入力」から「出力」までトータルで制御が可能です。
理想の色調を再現するために生地ごとの発色特性を理解し、ベストな色調を表現するためのデータづくりと印刷設備のコントロールを行っています。
安定した品質
当社では紙の印刷で培った技術を活かし、高発色で美しいアパレル生地を実現します。
作成されたデータをテスト出力する際に、生地ごとの発色の違いや印刷条件を考慮しつつ、お客さまのイメージされている色に近づけていくデータ修正作業を行います。データ入稿時に、あらかじめターゲットとなる色調(カラーチップや色見本素材)などをご提供いただければ、初回のテストプリントからお客さまのイメージに近いプリントを製作することが可能になります。
また、試作と量産で同じ設備を使用し、プリント条件などもそろえるため、試作と量産で色調が異なることはありません。試作時の生地を色見本として使用することで、より厳密な色合わせが可能になります。
アパレル関係の昇華転写のことは
日本写真印刷コミュニケーションズにご相談ください
当社では昇華転写プリントを中心にテキスタイルへのプリントを行っています。
高度な色調管理技術を強みとして、お客さまのご希望の生地に、理想の色を表現します。
対応する生地の種類も様々で、ポリエステルであれば薄手のオーガンジーから厚手のキャンバスまで、ニット素材や混紡生地にもプリントが可能です。
当社の昇華転写プリントは、発色の良さに加えて、水を使わない点や小ロット対応ができるという点で環境負荷も低く、再生ポリエステルへの印刷が可能など、サステナブルの観点からもご提案が可能です。短納期対応も可能です。また、レーザーカッターを使った小ロット裁断も提供しており、工程の短縮に貢献します。
ぜひ一度、当社のプリントサンプルをご覧いただきたいと思います。お問い合わせフォームより、サンプル帳をご請求いただくことができますので、ぜひご利用ください。