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スーパーマーケットへ買い物に行くと、ほとんどの食品が包装された状態で陳列されています。普段は意識もしないことですが、「食品包装」はどのような役割を持っているのでしょうか。今回は、食品包装の目的と求められる機能、食品包装の種類と特徴などについてご紹介します。
食品包装が持つ役割とは
私たちの身の回りにある食品は、その大半が包装された状態で販売されています。食品が包装されているのはなぜなのか、その目的については日常の買い物であまり意識することがありません。
なぜ多くの食品に包装が施されているのでしょうか。また、どのような目的で行われているのでしょうか。実は食品包装には次のような四つの重要な役割があります。
包装する食品の保護・保存
食品を保護するという役割は、多くの方が最初に思い浮かべるのではないでしょうか。実際に、包装をしなければ形を保てないものや置いた場所に付着してしまうものもあります。また、多くの人が触れた食品は衛生的に問題があるだけでなく、購入する側としては不快な感情が起こるでしょう。
包装は、直接の接触を防ぐ機能と同時に食品を保存するという機能もあります。直接外気にさらされることなく包装されていることで、腐食が進みにくく品質保持期限が延長されます。これは食品残渣(ざんさ)の問題にとっても有効です。
このように、食品包装のひとつ目の役割は、外から受ける力や環境変化による劣化から食品を守り保存状態を維持することです。
流通上の取り扱いを便利に
食品包装は消費者の目に見えないところでも重要な役割を担っています。それが、流通における利便性向上です。
例えば、生卵が個別で流通していたとしたら、その取り扱いが非常にやりにくくなります。置くと転がり、少しの衝撃で割れてしまい、一度に運べる量も少数に限定されます。しかし、ここに卵のパックや紙製トレーがあると取り扱いの利便性は大きく変わります。安定して積み重ねることもでき、少々の衝撃で壊れることがなく、一度に多くの数を運搬できるようになります。
このように、輸送・保管・陳列など流通における取り扱いを便利にし、かつ効率を向上させることが、食品包装のふたつ目の役割です。
食品に関する情報の表示
三つ目は消費者に情報を伝達する役割です。
食品は包装がなければ消費者が必要とする情報を記載できないものが大半です。例えば、生肉の消費期限は包装に記載するのが最も適切です。
食品包装に記載して消費者に伝達する情報は消費期限・賞味期限だけではありません。原材料名・内容量・保存方法・製造者など、食品表示法によって定められた内容、使い方やアレルゲン含有なども伝えることができます。
このように、食品包装は食の安全に関する重要な情報を消費者に伝達する役割を担います。
広告としての機能
食品包装は広告としての機能も持ちます。
目を引く色使い、商品の良さを訴求するメッセージなどは、消費者に対し視覚的なアピールをして購買欲を高める狙いがあります。例えば、スナック菓子では風味を分かりやすく伝えるために、食品そのものではなく風味の元となる食品のイメージを前面に表示しています。これも消費者に対する視覚的なアピールです。
このように、宣伝効果により商品の購買意欲を促し、消費者に分かりやすい訴求を行うことが四つ目の役割となります。
食品包装に求められる機能
ご紹介したように、食品包装は保護・保存、取り扱いの利便性、情報表示・伝達、広告効果の四つの役割を持っています。これらの役割を担うため、加えて環境問題や法的な規制などに対応するため、食品包装にはどのような機能が必要になるでしょうか?
密閉性・遮熱性・強度
食品を保護・保存するためには、包装材の密閉性や遮熱性、強度などが必要です。密閉されていなければ保存状態に影響を与える可能性があります。また、熱により変質したり傷んだりしてしまう食品では、包装の遮熱性が確保されていなければなりません。同時に、包装に強度がなければ中の食品が簡単に壊れてしまう場合もあります。
安全・衛生
食品包装は消費者が直接手で触れるものですから、十分な安全・衛生の機能を満たしていなければなりません。
手に持ったとき、開封時にケガや事故につながらないようにできているかを考慮した安全な設計が必要です。
また、衛生面では製造段階から消費者の手元での保存までを考慮する必要があります。具体的には異物混入やいたずら防止としての機能が求められます。
使用利便性
食品包装は食品を包むと同時に、中の食品を使用しやすくるすためのツールとしての機能が求められる場合もあります。
例えばドレッシングの包装は握ることで絞り出されるよう設計されているものが多く、消費者が使うときに便利なようになっています。
このように、消費者の利便性を向上させる機能も重要です。
環境への配慮
たびたび環境問題として取りあげられる海洋ゴミには、食品包装も多く含まれています。こうした面から、リサイクルに適していて環境への影響が考慮されているかということも、食品包装を考えるうえでは重要な課題です。
情報の明示
情報がしっかり伝わるよう考慮されたデザインも大切です。食品の安全を守るうえで、食品に関する情報の表示・伝達は欠かせません。これを明確に伝えるためには、情報が見やすく読みやすい食品包装となっている必要があります。
生産性
食品包装は付加価値を高める効果もありますが、多くの場合は消費者にとって食品包装のコストは価格に含めて考えられることはありません。食品包装にコストを掛けすぎて、それを売価に反映させると買ってもらえなくなる可能性は十分にあります。
このように、食品包装の製造コスト、包装作業コストが見合っているかも重要です。
適法
食品には、食品衛生法やPL法、日本農林規格などが関係します。また、包装に関しては容器包装リサイクル法があります。
食品包装は、これらの関連法に適合していなければなりません。
食品包装の種類
食品包装は、食の安全を守る重要な役割を果たしながら新技術を応用し進化し続けています。現在食品包装には、次のようにさまざまな種類があります。
密封包装
密封することで外からの害虫や微生物の侵入を防ぐ包装です。ビン詰め・缶詰・レトルトパウチなどが代表例です。
真空包装
カビ・害虫を防ぎ酸素をなくすことで好気性菌と酸化も防止します。ハムやベーコンの包装に使われています。
ガス封入包装
不活性ガスとして窒素や二酸化炭素、これらの混合ガスなどを封入する包装です。窒素ガスは色調を保って酸化を防止する目的で使われることが多く、二酸化炭素は静菌・防虫作用があります。また、好気性菌・カビを抑える働きもあります。
二酸化炭素はプラスチックフィルムを透過しやすい特徴を持つため、透過しにくい窒素ガスとの混合ガスが用いられることもあります。
ポテトチップスを代表する菓子類の包装によく使われています。
脱酸素包装
脱酸素剤を封入して酸化と微生物繁殖を防ぐ包装の方法です。食用油や飲料などに使われています。
無菌充填包装
加熱することができないものを無菌環境で包装するために使用します。生ハムや生菓子などに使われています。
食品包装の進化は世界の食を支えている
食品包装が持つ役割と、それらを満たすために必要な機能、代表的な食品包装の種類についてご紹介しました。
食品包装が進化することにより、食品の保存状態を維持したまま遠い地域まで輸送することが可能となりました。また、表示や衛生面でも活躍し、食の安全を守る重要な役割も果たしています。食品包装は今や世界の食を支えていると言っても過言ではないほど、人々の食に深く関わっています。