オゾン除菌―新型コロナウイルス対策でも活躍する除染技術の紹介
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オゾン除菌―新型コロナウイルス対策でも活躍する除染技術の紹介

オゾンは病原性微生物を破壊する強い除染効果を持つ物質です。オゾン燻蒸による除染・殺菌処理は、作業負担が少なく効果的な方法として感染対策の現場で活用されています。この記事ではオゾンの特長やオゾン燻蒸の概要を紹介します。

目次

オゾンはウイルスや細菌などの微生物を破壊する強い除染効果を持つ物質です。オゾンによる除菌処理は、作業負担が少なく効果的な方法として新型コロナウィルス(COVID-19)の除染作業にも利用されています。

この記事では、オゾン除菌の概要について紹介します。

ウイルス除染や除菌処理で活躍するオゾン燻蒸処理

病原性微生物の除染・除菌には様々な方法があります。一般的にはアルコールや次亜塩素酸による拭き取り洗浄がよく知られています。拭き取りによる洗浄は確実性の高い方法である一方、拭いたところしか洗浄できないために室内の隅々まで洗浄するのは難しいとう課題があります。

このような拭き取り洗浄の課題を補完する目的で活用されているのがオゾン燻蒸です。オゾン燻蒸は除染能力の高いオゾンガスを室内に放出することで、部屋中をくまなく処理します。また、拭き取り洗浄と違って空気中に浮遊する病原性微生物も破壊することができます。

オゾン燻蒸と消毒液による拭き取り洗浄を組み合わせた除染作業は、新型コロナウイルス(COVID-19)対策としても活用されています。

なぜオゾンはウイルスを除染できるのか

では、なぜオゾンは病原性微生物を除染できるのでしょうか。

オゾンは酸素原子が3つ結合した構造を持ち、化学式O3で表される分子です。大気中で安定的に存在する酸素分子(O)に対して、オゾン(O)は非常に不安定な物質です。オゾン(O)は自然界で簡単に分解されて酸素(O)になり、それと同時に強い酸化力を持つ酸素原子(O)を放出します。この酸素原子には大腸菌やインフルエンザウイルスなどの病原性微生物を殺菌、不活化する効果があることが知られています。オゾン燻蒸はこの効果を利用しています。

オゾンの除染能力(どのくらい燻蒸する必要があるか)

オゾンの除染能力は室内のオゾン濃度と燻蒸時間の積算値で表されます。この数値はCT値( Concentration-Time Value )と呼ばれ、オゾンの除染効果を示す指標として使われています。

CT値=オゾン濃度(ppm)×燻蒸時間(min)

除染対象となる病原体によって適切なCT値は異なります。たとえば、大腸菌や新型インフルエンザ(H5N1)はCT値60のオゾン燻蒸処理でほぼ100%死滅したという実験結果が報告されています。

これは、濃度1ppmのオゾンで60分間燻蒸することを意味します。オゾン濃度を高くすれば作業は短時間で終わると考えられますが、オゾンの濃度を上げることには注意が必要です。高濃度のオゾンは人体に有害であるためです。

オゾンの人体への影響

オゾンは自然界で容易に分解して無害な酸素(O2)になるため、燻蒸後の室内に長い時間にわたって残存することはありません。しかし高濃度のオゾンは人体に有害な物質でもあります。産業衛生学会では労働環境におけるオゾン濃度の基準値を0.1ppm以下としています。さらにオゾン濃度が0.5ppmを超えると気道に刺激を感じ、1ppmでは2時間程度の曝露で頭痛や胸部痛が起こるとされています。つまり、前の章で紹介したような濃度1ppmでの燻蒸は人体に影響のある高濃度のオゾンを使用する処理になります。このような高濃度オゾンでの燻蒸は無人の環境で実施しなければなりません。オゾン燻蒸を実施する際にはオゾン濃度や人の出入りの管理に細心の注意が必要なのです。

オゾンの新型コロナウィルス(COVID-19)への効果

オゾン燻蒸は新型コロナウイルス(COVID-19)の除染作業にも活用されています。日本国内の医療機関の実験によれば、1ppm~6ppmの高濃度オゾンによる短時間での燻蒸処理だけでなく、人体に影響のない0.1ppm以下のオゾンを長時間放出した場合でも新型コロナウイルスを不活化する効果があることが確認されました。

これらの実験は新型コロナウイルス対策のさまざまな場面でオゾン除染が活用できる可能性をしめしました。たとえば、医療機関など高い衛生管理が求められる施設では高濃度オゾンを使って効果的な除染が実施できます。また低濃度でのオゾン燻蒸は、飲食店や劇場、公共交通機関のような十分な空気の入れ替えが難しい施設での換気機能の補助として活用できる可能性があります。

このようにオゾンによる除染は、新型コロナウィルスの感染拡大防止、さらには経済活動の活性化への貢献が期待されています。

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