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現代社会の必需品であるエアコン。室内の温湿度を調整するエアコンは、快適な生活環境を維持するために欠かせない機器となりました。では、エアコンはどうやって室温をコントロールしているのでしょう。それには冷媒という特殊な物質が大きな役割を果たしているのです。
エアコンってどんな機械で、どんな仕組みで機能しているのか。その機能を支える冷媒とはどんな物質か。エアコンの仕組みの基礎知識と、空調に欠かせない冷媒の役割について紐解いていきます。
エアコンとは
エアコンとはエアーコンディショナーの略で、室内の空気を快適な温度・湿度に調整するための機器のことです。
人の体感温度は室内の温度や湿度によって大きく左右されます。エアコンは室内の温湿度を制御することで、夏は涼しく冬は暖かい室内環境を実現します。快適な住環境の維持や健康管理のために、現代では欠かせない設備のひとつです。
エアコンを構成する主なユニットと役割
エアコンは室内機と室外機、そしてそれらをつなぐペアコイルの主に3つのユニットで構成されています。
室内機

室内機は室内の空気を取り込んで冷却または加熱し、再び部屋へと送り出す装置です。室内機には熱交換器と呼ばれるユニットが組み込まれています。熱交換器の内部には冷媒という物質が流れており、この冷媒が空気を冷やしたり温めたりすることで室温が調整されます。冷媒はエアコンにとって最も重要な要素のひとつなので、この後の章で詳しく説明します。
室外機

室外機は冷媒が室内で引き受けた熱気あるいは冷気を室外へ放出する機能を担う設備です。室外機で重要な役割を果たすユニットはコンプレッサーと熱交換器です。コンプレッサーは冷房時に冷媒を圧縮する目的で使われるユニットです。冷房の仕組みについては、このあとの章で詳しく紹介します。また、室外機は放熱効率を高めるためのファンも備えています。外部環境にさらされるため、周囲のゴミや障害物を取り除くなどの注意が必要な設備です。
冷媒配管(ペアコイル)

室内機と室外機をつなぐ配管です。ペアコイルを通して冷媒が室内外を循環することで、室内の温度が調整されます。
エアコンと空調の違い
エアコンと空調はしばしば混同されますが、実際には指し示す範囲が異なります。
一般的に、「空調」は空気の温度だけでなく湿度や清浄度、さらには換気も含めて制御する概念を指します。一方で「エアコン」は、空調設備の一部として温度や湿度の調整を行う機器そのものを表すことが多いです。また、家庭用の空調機器はエアコンと呼ばれ、ビルなどの大規模な設備では空調と呼ばれることもあります。家庭用エアコンは室内の空気を循環させつつ温湿度の調整やホコリの除去を行いますが、ビルの空調は屋外と室内で空気を換気しながら室内環境を整えます。このように空調という言葉には換気の概念が含まれていると言えます。
冷房と暖房
エアコンは冷房と暖房のふたつの機能を備えています。
冷房運転では室内の熱を冷媒に移し、その熱を室外で放出することによって室温を下げる仕組みを利用します。一方、暖房運転では室外の熱を冷媒で取り込み、圧縮して高温にした状態で室内へ送ることで部屋を暖めます。両機能は同じ配管やユニットを使うものの、冷媒の流れ方と放熱・吸熱の向きが逆転している点が特徴です。
今回は冷房のケースを題材に、エアコンが室温を調整する仕組みを見てみましょう。
冷房のしくみ・原理
エアコンの冷房は、冷媒が熱を運ぶ性質を利用して室内の空気を冷やす仕組みです。ここでは冷房がどのように動作するかを簡単に紹介します。

エアコンが冷房で運転される場合、室内機に送られる冷媒は冷却されて液体化した状態になっています。そして室内の空気がエアコンに取り込まれると、その空気は冷媒によって冷たくなった熱交換器(蒸発器)に触れます。熱交換器に触れた空気は冷却され、ふたたび室内に送り出されます。このようにして空気を冷やすことで、エアコンは室温を下げるのです。
そして、屋内の熱を吸収した冷媒は液体から気体へと変化し、ペアコイルを通って室外機へ送られます。室外機に取り込まれた冷媒は、コンプレッサーによって圧縮され高温高圧のガスになります。このガスが室外機側の熱交換器(凝縮器)を通過。その際に冷媒ガスの熱は外気に放出されます。
熱を放出した冷媒はふたたび液体となり、室内機へ戻されます。このサイクルを循環することによって、室内の空気が冷やされるのです。
ここまで紹介してきたとおり、エアコンにとって冷媒という物質はとても重要な役割を持っています。次の章では、その冷媒について掘り下げます。
冷媒とは
冷媒とは、液体と気体を繰り返し行き来しながら熱を移動させるための物質です。吸熱と放熱のサイクルをスムーズに担うため、気化しやすく、圧縮にも耐えられる特性を持つ化合物が使われます。一般的に使用されている冷媒はフロン化合物です。しかし、オゾン層の破壊や地球温暖化への影響が懸念されるフロンの使用を見直す動きが活発になり、近年は環境に配慮した新しい冷媒が研究・開発されています。
冷媒の種類
エアコンの黎明期に使用されていた冷媒はクロロフルオロカーボン(CFC)でした。CFCがオゾン層を破壊する性質を持っていることが分かると、より安全な冷媒の開発が始まりました。現在の主流となっている冷媒はハイドロフルオロカーボン(HFC)です。HFCはオゾン層破壊の懸念はありませんが、地球温暖化効果が高いという課題があります。現在はHFCよりも地球温暖化効果の低い冷媒の開発が進められており、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)や、自然冷媒であるR290(プロパン)などが注目されています。
冷媒の漏洩の危険性について

先に説明した通り、冷媒は地球温暖化効果を持つ物質です。また、HFCなど現在使用されている冷媒の多くが可燃性を有しています。つまり、冷媒の漏洩は環境問題や安全性の観点から大きなリスクを伴うのです。
エアコンの冷媒が漏洩するとどうなる?
室内機と室外機の間を循環する冷媒が不足すると、エアコンの空調能力は低下します。その結果、温湿度の調整がうまくいかず不快感が高まったり、場合によってはエアコンの機器が過熱して故障するリスクがあります。さらにフロン系冷媒が大気中へ放出されることは地球温暖化やオゾン層破壊を助長する原因となります。HFCのような可燃性の冷媒の場合は火災のリスクも伴います。このような問題を回避するためには、定期的に異常を見つけるための点検・整備が重要と言えます。
冷媒の漏洩警報機とセンサー
冷媒の漏洩を迅速に検知するため、商業施設や工場など大規模な空調システムでは漏洩警報機の導入が進んでいます。規模が大きいほど冷媒の総量も多く、いざ事故が起きた際の環境負荷や健康リスクも大きくなるからです。
また2010年代に実施された空調機器に関する法規制の改正により、大規模設備のみならず家庭用空調機器の漏洩検知も義務付けられました。この法規制の改正は日本だけでなく世界基準であるIEC規格においても進められました。空調業界のこうした動きから、冷媒の漏洩を検知するセンサーの重要性が増してきたのです。
冷媒センサーの必要性
冷媒センサーは、空調システム内に取り付けることで、微量な漏洩を検知し異常を通知する装置です。冷媒の大きな漏洩が発生した場合、環境破壊への影響だけでなく火災や爆発の危険も伴います。微量の漏洩を検出できる冷媒センサーを導入することは、大規模なトラブルや修理費の高騰を防ぐことにつながります。また先に紹介した通り、現在は空調機器に冷媒センサーを組み込むことが義務化されています。空調機器開発において必ず検討が必要な部品となっているのです。
NISSHAエフアイエスの冷媒漏洩検知センサー

NISSHAエフアイエスは、空調機器への組み込みに適した冷媒漏洩検知センサーを提供しています。
NISSHAエフアイエスの冷媒センサーは空調機器の国際規格であるIEC60335-2-40 Ed.7 ANNEX LLに合格しており、直近の10年間で100万個以上を出荷した実績があります。
耐用年数10年以上の高い耐久性を有していることや、干渉ガスの影響を除去するフィルターを内蔵している点などが特長です。
小型軽量で、室内機向け、室外機向けのいずれのタイプも用意しています。
エアコンの機構設計などでセンサーの導入を検討されているみなさまは、ぜひ製品紹介ページをご覧ください。
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