可燃性ガスの定義とその危険性をすっきり解説!
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可燃性ガスの定義とその危険性をすっきり解説!

可燃性ガスとはどういったものか、その定義と危険性についてご紹介します。また、混合ガスの中にも可燃性ガスの性質を持つものは多数存在します。それらに対しても適切な取り扱いがされるよう、2016年に定義の改正が行われましたので、併せて解説しています。

目次

可燃性ガスとは、空気中または酸素中で一定の濃度に達すると燃焼するガスのことです。平成28年11月1日、この可燃性ガスの定義に関する規定の変更がありました。こちらでは、可燃性ガスの定義と変更内容、可燃性ガスの持つ危険性について解説していきます。

可燃性ガスの定義

「可燃性」とは、酸素などの酸化剤と反応して燃焼(光や熱を発して激しく酸化すること)しやすい性質のことを指しますので、可燃性ガスとは、そういった燃えやすい性質を持つガスのことです。

可燃性ガスは、一定の条件下で引火すると爆発事故の原因となる恐れがあります。

とはいえ、基本的には可燃性ガス単独で爆発事故になるというわけではありません。可燃性ガスが、可燃性の物質(ここでは可燃性ガス)の燃焼を助ける空気や酸素などの「支燃性ガス」と一定の割合で混合され、さらに「着火源(火種)」に触れることで引火した際に、爆発する可能性があるのです。つまり、「支燃性ガス」と「着火源」がなければ、通常は爆発することはありません。

ただし、アセチレンや酸化エチレンなど衝撃や光によって爆発を引き起こす「分解爆発性」を持つ可燃性ガスや、ホスフィンといった自然発火する「自然発火性」を持つ可燃性ガスなどは、単独でも爆発を起こすことがあります。

法令や国際的な機関による可燃性ガスの定義

日本では、「容器保安規則(昭和41年5月25日通商産業省令第50号)」の第二条第一項29号によって、可燃性ガスの種類について具体的に定義されています。

水素、メタン、エタン、プロパン、一酸化炭素、エタノールなど31種類のガスの名称が明記され、さらにそこで名称を指定されていない種類のガスであっても、次の条件のいずれかに当てはまれば、可燃性ガスに分類されるとしています。条件をクリアすれば複数のガスが混ざった混合ガスなども可燃性ガスに分類されるということです。

  • 爆発限界(空気と混合した場合の爆発限界をいう。以下同じ。)の下限が10%以下のもの
  • 爆発限界の上限と下限の差が20%以上のもの

可燃性ガスの爆発の危険性は、ガスが空気と混合した場合のガスの濃度が影響します。ガスの種類によって、爆発を起こす最低濃度と最高濃度は決まっており、爆発を起こす最低濃度を「爆発下限界」、最高濃度を「爆発上限界」と言います。上の二つの条件にある、爆発限界の下限が爆発下限界、上限が爆発上限界を指します。

爆発下限界より低い濃度であっても、爆発上限界より高い濃度であっても爆発はせず、爆発の可能性がある爆発下限界と爆発上限界の間を、「爆発範囲」と呼びます。

また、国際連合が勧告する「GHS(化学品の分類および表示に関する世界調和システム)」にも、可燃性ガスの定義が示されています。

それによると、標準気圧101.3kPaで20℃の環境下で、「濃度13%(容積分率)以下の空気との混合気が可燃性であるもの」、「爆発下限界に関係なく空気との混合気の爆発範囲が12%以上」のガス。さらに、それらには当てはまらないもので、標準気圧101.3kPaで20℃の環境下において空気との混合気が爆発範囲を有するものを、可燃性ガスとしています。

平成28年11月の改正内容

前述の「容器保安規則」においては、平成28年11月1日付けで、「高圧ガス保安法及び関係政省令の運用及び解釈について(内規)の一部を改正する規程」が制定(追加変更)されました。

「爆発下限界が10%以下のもの」「爆発上限界と爆発下限界の差が20%以上のもの」であれば、混合ガスなどでも可燃性ガスに分類されるといった内容はすでにご紹介したとおりです。

2016年の改正では、それを判定する際の限界の数値を、「実測で得られたデータにより判定することとするが、簡易的に計算により算出する場合は、加重調和平均とし以下のとおりとする」と、以下のような計算式が明示されました。

実測が難しい条件下で混合ガスの爆発範囲を求めたい場合は、この計算式を用いることができるということです。

L = 100 /(n1 / L1 + n2 / L2 + ……+ ni / Li )

  • L :混合ガスの爆発限界濃度(Vol%)
  • Li:i 成分の爆発限界濃度(Vol%)
  • ni:混合ガス中の i 成分の濃度(Vol%)

可燃性ガスのもたらす危険

ここまででご紹介したように、可燃性ガスは火災や爆発事故の原因となり得る物質です。

爆発とは、圧力の急激な発生または解放の結果、激しい熱や光、破裂音などを伴い、周囲に破壊作用をもたらす現象を指します。急激な化学反応や核反応、容器の破壊などによって起こり、具体的には次のようなプロセスで進行します。

  1. 火炎が可燃物全体に伝播
  2. 燃焼によって引き起こされる温度上昇で、気体の体積が一気に膨張
  3. 密閉容器や閉ざされた室内などの閉鎖空間の圧力が急激に高まる
  4. 閉鎖空間を形成する壁面などのうち圧力に耐え切れなくなった部分(室内であれば窓や扉、容器であればふたなど)が壊れ、そこから一気に高圧の気体が噴出する

この一連のプロセスがごく短時間で起こり、破壊された閉鎖空間の周囲に甚大な被害をもたらします。例えば可燃性ガスが漏れても、密閉空間でなければ圧力が急激に高まるというプロセスが起こりにくいため、火災に留まり、爆発にまでは結び付かないこともあります。

当然火災も避けるべきですが、爆発はさらに危険でより広い範囲に被害をもたらす恐れがあるため、どのような現場でも絶対に避けなければなりません。爆発事故を起こすリスクのある可燃性ガスを取り扱っている場合は、そのことを意識し、適切な管理をすることが非常に重要です。

可燃性ガスに起因する可能性のある労災事故

厚生労働省の調べによると、平成26年は12名、平成27年は2名、平成28年は3名、平成29年は6名などと、毎年数名の方が爆発事故で命を落としています。そして、同省発表の「平成30年における労働災害発生状況について」を見ると、労災事故による死者数909名のうち、爆発による死者は7名。死亡災害全体に占める割合は、約0.77%です。

一方で、爆発事故による死傷者数は64名、労働災害全体の死傷者数127,329名から見ると約0.05%です。これらのデータから、爆発事故はほかの労災事故と比較して発生しやすいとは言えないものの、発生した場合には被害がケガでは済まず、死者が出るような大事故に発展しやすいということが分かります。

爆発事故のすべてが可燃性ガスに起因しているわけではありませんが、こうした労災事故の原因となり得ることは確かです。

また、爆発事故による死傷者64名のうち、28名が第三次産業に従事していました。死傷者全体に占める割合は、約43.8%。その後に建設業7名、鉱業2名、陸上貨物運送事業2名と続きます。

この資料では、個別の事故の詳しい状況までを知ることはできません。しかし、第三次産業の飲食サービス業などと同じように調理用の熱源、また、暖房器具の燃料などとして、可燃性ガスは私たちの暮らしの中でごく当たり前に使用されています。

過度に不安になる必要はありませんが、身近に存在する可燃性ガスにはそういった側面もあるといったことは意識しておく必要があるでしょう。

少量でも大事故につながるという意識を

可燃性ガスは少量でも大きな事故を引き起こす可能性がある物質です。ほんの少量でも甚大な被害につながるという意識を持ち、適切に管理して取り扱うことが大切です。

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