フロンセンサーの種類と特徴を方式別に比較
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フロンセンサーの種類と特徴を方式別に比較

フロンガスの検知・測定に使われるセンサーのなかでも、使用率の高い赤外線式フロンセンサーと半導体式フロンセンサーそれぞれの特徴を解説します。フロンガスセンサーがなぜ必要なのかにも触れながら、フロンガスセンサーの選択に役立つ情報をまとめました。

目次

フロンガスは地球環境に影響を与えます。そのため、規制の対象として漏洩を防止しなければなりません。フロンガスの漏洩を防止するために重要になるのがフロンセンサーです。その際使用されるフロンセンサーにはどういった種類と特徴があるのでしょうか。フロンセンサーを方式別に比較して、それぞれの特徴をあらためておさらいします。

フロンガスの歴史とフロンセンサーが重要な理由

冷媒として使われてきたフロンガスは、いくつかの転換期を経て現在に至ります。その歴史から、フロンセンサーがなぜ重要なのかを考えてみます。

フロンガスとは

1920年代、自然界には存在しないフルオロカーボンという物質が開発されました。これは炭素とフッ素の化合物で、一般的にフロンと呼ばれるようになります。

フロンは、化学的に安定して不燃性で液化しやすいという冷媒に理想的な条件を備えていました。冷媒ガスとして1960年代からエアコンの普及とともに大量に生産されることになります。

これまで冷媒に使われてきたフロンガスには、主に次のようなものがあります。

  • クロロフルオロカーボン(CFC)
  • ハイドロクロロフルオロカーボン(HCFC)
  • ハイドロフルオロカーボン(HFC)

フロンガスの種類について詳しくは、「冷媒の働きと種類―これまでの歴史と次世代の冷媒」と「すっきりわかる!冷媒の5つの種類とそれぞれの特徴」をご覧ください。

フロンガスを取り巻く環境

冷媒ガスとして広く普及してきたフロンガスですが、1970年代になってフロンガスの扱いに転換期が訪れます。

まずはフロンガスがオゾン層を破壊することが判明し、各国が協同してモントリオール議定書を策定、規制が開始されました。フロンガスのうちCFCとHCFCはオゾン層破壊性があり、特定フロンガスとして規制対象になりました。

その後オゾン層破壊性のないHFCが冷媒の主流となっていますが、今度はHFCが地球温暖化係数(GWP:そのガスがCO2の何倍の温室効果があるのかを表す係数)の高い温室効果ガスであることが明らかになり、次の課題として浮上しています。

HFCのなかでも現在注目されているのは、地球温暖化係数が675のR32。以前主流だったR410aが地球温暖化係数2090だったことを考えると比較的低いとはいえ、CO2に対して700倍近くの温室効果があり、まだまだ高い数値です。こちらも早急に代替となる冷媒が必要ですが、これに変わるような、同程度の熱交換効率を持ちながらコストや安全性に優れた冷媒はまだ実用化に至っていません。

なお、R32とR410aの違いについては「冷媒R32の持つメリット・デメリット―普及した理由とR410Aとの違い」でご紹介していますので、ご参照ください。

フロンガスの課題

紹介してきたように、フロンガスは、オゾン層破壊と地球温暖化という2つの観点から漏洩防止の徹底を図らなければならなくなりました。

そこで、日本ではフロン排出抑制法を制定し、情勢に合わせて改定しながら適切なフロンガスの取り扱いと漏洩防止のための義務を定めています。

フロン排出抑制法の内容については「フロン排出抑制法の改正と内容―フロン活用と地球環境のバランスを保つには」で詳しく解説しておりますので、ご参照ください。

フロンセンサーの重要性

フロンガスには紹介したような問題があり、大気中に開放されることがないように管理の徹底が求められます。

フロンガスの漏洩防止はフロンガスを扱う者にとって重要課題であり、万が一漏洩があった場合、それを素早く検知し漏洩量を最小限に抑えなければなりません。しかし無色透明で無臭のフロンガスは、人の五感では漏洩を発見できません。そこで、フロンガスを検出するためのセンサーが重要になってくるのです。

需要な役割を持つフロンセンサーにはいくつかの方式があります。代表的な赤外線式(NDIR)と半導体式について、それぞれの特徴を見てみましょう。

赤外線式(NDIR)フロンセンサー

非分散型赤外線吸収法(NDIR=non-dispersive infrared)を利用したセンサーです

赤外線は電磁波の一種ですが、電磁波は物質の表面に到達したとき透過・吸収・反射の3つの方向に分かれます。赤外線を物質に向けて照射したとき、対象が透明な気体であれば反射はせずに透過または吸収されます。物質表面で吸収された赤外線はその波長が持つ波によって物質を構成する分子と共振し、分子の振動を増幅させます。吸収しきれなかった赤外線は、物質を透過して反対側へと通り抜けます。

このような赤外線が分子に及ぼす影響をもとに計測することで物質を特定または濃度測定を行うのが非分散型赤外線吸収法(NDIR)です。

測定対象となる物質が吸収する特定の波長がどれだけ透過するかを検知することによって測定を行います。赤外線透過率とガス濃度の関係はランベルト・ベールの法則によって導き出されます。

ガス選択性に優れている

赤外線式のセンサーはフロンに限らず幅広いガスに対応するのが特徴です。

精度と安定性、応答性にも優れますが、精密光学機器であるため高額で大掛かりな装置になります。

赤外線式センサーの機能

赤外線式センサーの検知範囲は500ppm~40,000ppm程度と広範囲の検知が可能です。

応答速度は10秒以内と高速です。

半導体式フロンセンサー

半導体式フロンセンサーは、金属酸化物半導体の性質を利用したセンサーです。

ヒーターによって加熱された金属酸化物が空気中にあるとき、金属酸化物の表面には酸素が吸着し電子を捉えているため一定の抵抗値があります。

この状態の金属酸化物にガスが触れると、酸素はガスの成分と結びつくことを優先するため金属酸化物から離れます。これにより、金属の抵抗値が低下します。

この抵抗値の変化を測定することでガス濃度を求める仕組みを応用しているのが、半導体式フロンセンサーです。

低濃度から測定できガスの選択も可能

半導体式フロンセンサーは低濃度から高い感度で測定が可能で、応答性に優れています。

半導体に不純物を添加することで干渉の度合いが変わることを利用し、ガスの選択性をもたせることができます。シリコン耐久性に弱いと言われていますが、センサーに外部フィルターを搭載することで耐久性の向上が可能です。

装置がコンパクトで安価、長寿命という点も半導体式の特徴です。

半導体式センサーの機能

半導体式フロンセンサーの検知範囲は500ppm~10,000ppm程度と、赤外線式と比較すると劣りますが一般仕様には十分な範囲を検知できます。

応答速度は10秒以内で赤外線式と同等ですが、一般的には半導体式の方が応答性に優れます。

赤外線式フロンセンサー・半導体式フロンセンサーの比較

あらためて赤外線式と半導体式の違いをわかりやすく表にまとめましたので、ご参照ください。

使用環境に最適なフロンセンサーの選択を

フロンセンサーを方式別に比較し、それぞれの仕組みや特徴をあらためておさらいしました。

フロンガスの検出は状況によっては濃度測定の正確性も求められます。しかし、漏洩の防止という観点から考えると、いかに素早く、低濃度から検出できるかという点が最重要となってきます。

今回ご紹介した内容を、使用環境に最適なフロンセンサーを選択する際にご活用いただければ幸いです。

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