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NISSHAエフアイエスの半導体方式冷媒センサーは、空調機器の国際規格であるIEC60335-2-40 Ed.7 ANNEX LL、米国のUL60335-2-40 Ed.4 ANNEX LLに適合しています。このセンサーはNISSHAエフアイエスの開発メンバーたちの長年の努力の結果により完成しました。なぜ冷媒センサーが必要になったのか、その経緯やセンサーの特長など、冷媒センサー開発の背景を紹介します。
半導体方式の冷媒センサーが注目された理由
NISSHAエフアイエスが空調機器用の冷媒センサー開発に着手することになったのは2017年頃のことです。それ以前、冷媒センサーの需要はあまり大きくありませんでした。また、冷媒用センサーの主流はIR(赤外線)方式で、NISSHAエフアイエスが得意とする半導体方式はリークテスターなどに一部使われている程度でした。転換点となったのは日本国内の空調機器規格の改訂でした。フロン排出抑制法の改訂により、冷媒の漏洩を検知するセンサーを空調機器へ搭載することが義務化されることになったのです。このとき組み込みセンサーの採用候補に挙がったのが半導体方式の冷媒センサーでした。
NISSHAエフアイエスのお客さまである空調機器メーカー様にとって、これまで必要のなかった冷媒センサーの導入は追加コストになります。そのため、できるだけコスト負担のかからないセンサーを導入したいというニーズが生じました。IR方式など他の方式の冷媒センサーよりも低コストで導入できる半導体方式冷媒センサーはそうしたお客さまのニーズに適うものでした。さらに半導体方式の冷媒センサーは空調機器への組み込みが比較的簡単だったこともお客さまに受け入れられるポイントとなりました。
こうした背景を受けて、空調機器の規格に適合する半導体方式冷媒センサーの開発が始まったのです。
室内機、室外機の両方に対応する半導体方式冷媒センサーの仕様
ここでNISSHAエフアイエスの半導体方式冷媒センサーの基本仕様を紹介します。このセンサーは空調機器に組み込むことに最適化されています。空調機器は室内機と室外機のふたつの設備から構成されているので、NISSHAエフアイエスではそれぞれの設備に適したセンサーモジュールを開発しました。室内機用と室外機用のセンサー仕様に大きく関わるのはそれぞれの使用環境です。特に室外機は風雨に晒される設備であるため、雨水や湿度に対する耐久性が求められます。そこでNISSHAエフアイエスの室外機向けセンサーでは保護ケースでセンサーモジュールを被覆することで耐湿性を向上しています。
また、冷媒の漏洩はわずかな量のレベルから検知することが求められるため、センサーの測定レンジは1,000~10,000ppmと低濃度に設定されています。
日本のフロン排出抑制法に対応、そして欧州、米国市場へ
前述したとおり、規格改定への対応は日本のフロン排出抑制法への対応から始まりました。では、なぜ冷媒センサーの搭載が義務化されたのでしょう。その理由は現在一般的に使われている代替フロン(HFC)冷媒の燃性と温暖化効果に関わっています。R32などのHFCは微燃性ガスであり、漏洩は引火の危険につながります。またHFCの多くは温室効果が非常に高いため、漏洩は地球環境に影響を与える問題でもあります。こうした課題への対策として空調機器から漏洩する冷媒を検知する必要性が高まったのです。
NISSHAエフアイエスでは、まずこのフロン排出抑制法に対応するセンサーの開発から着手しました。そして開発した冷媒センサーは国内のお客さまの製品での採用につながりました。この国内での開発を足掛かりとして、同じく冷媒センサーの組み込みが規制化された欧州と米国向けのセンサー開発に取り組んだのです。
IEC、UL規格に適合した開発のポイント
国際的にはIEC60335-2-40 Ed.7 ANNEX LL、米国ではUL60335-2-40 Ed.4 ANNEX LLという空調機器の規格において冷媒センサーの品質基準が規定されました。この規格に適合するセンサーを開発するうえで重要だったポイントは測定精度を担保することです。特にセンサーが高濃度の冷媒に晒された際の劣化対策は開発の要点でした。IECやUL規格の耐久試験では、濃度1%以上という高濃度の冷媒ガスにセンサーを晒すという試験項目があります。これに対して半導体方式センサーは、高濃度のガスに晒されると感ガス素子の温度が著しく上昇するという性質を持っています。そのため、温度上昇による素子の劣化は大きな課題でした。
NISSHAエフアイエスでは素子に使用する感ガス材を独自に開発しています。このオリジナルの感ガス材がNISSHAエフアイエスの製品の大きなノウハウとなっているのです。空調機器向け冷媒センサーにおいてはフロンに対して感度の良い感ガス素子を使用しています。このような素子はフロン濃度の分解能が高いので、より正確な漏洩検知を可能にしています。そのため、温度上昇などにより素子が劣化しても検出精度を担保しやすくなっているのです。さらに、感ガス素子の選定に加えてセンサーの駆動方法を工夫することにより、高濃度フロンに暴露することによるセンサーの劣化を回避しています。
また、IECやUL規格では繰り返し測定をした際の精度の担保も求められました。半導体方式センサーは感ガス材に冷媒が接触することで素子の電気抵抗が変化します。この抵抗の変化から冷媒の濃度を算出できるように設計されているのです。しかし、抵抗の上昇下降という変化が繰り返し行われると、感ガス材の状態が変化し抵抗が正しく測定できない懸念があります。空調機器向け冷媒センサーの開発においては、このような抵抗の繰り返し変化に対しても標準状態が維持されるよう最適な素子の開発を目指しました。その結果、IEC、UL規格で求められる繰り返し試験に適合するレベルの安定性を確保したのです。
搭載義務化に対応した苦労
空調機器用の冷媒センサーは、日本のフロン排出抑制法で義務化されるまでは存在していなかった製品です。つまりお客さまは冷媒センサーについてほとんど知識を持っていなかったのです。そのため冷媒センサーの開発は、お客さまにセンサーへの理解を深めていただくところから始めなければなりませんでした。
製品として存在しないということは、当初はそれを評価する設備も在りませんでした。まずは性能評価をするための設備を整えるところから始める必要があったのです。評価設備の整備やセンサーの仕様説明など、開発メンバーはお客さまとの対話を繰り返すことで半導体方式冷媒センサーという新しい製品への信頼を築いていきました。
こうした国内での導入経験を糧にして、次は欧州向けへ、そして米国向けへと開発を展開していったのです。特に米国への展開には労力を要しました。UL規格の評価をする試験機関に冷媒センサーの試験設備を導入することにも時間を要しましたが、お客さまによっては冷媒センサー搭載の義務化を認知していないケースもあり、日本以上に規制の理解を促す必要があったのです。NISSHAエフアイエスの開発メンバーは米国に2か月以上滞在し、UL規格の試験機関やお客さま企業とのコミュニケーションを粘り強く進めました。このような努力の結果により、FISの半導体方式冷媒センサーは国内だけでなく、欧州、北米でも採用実績を増やしているのです。
半導体方式冷媒センサーをさらに改良していきたい
NISSHAエフアイエスの冷媒センサーはIEC、ULの両規格に適合しました。しかしこれからもさらなる改良が求められています。それは半導体方式ガスセンサーが持つ特徴に対する改善です。
半導体方式センサーの感ガス材は複数のガスに同時に接触した場合、それらを個別に検知することはできません。だから検知したいガスに対して特に強く反応する感ガス材の選定が重要になるのです。冷媒センサーの場合も例外ではありません。対象となる冷媒への特異性を向上させた感ガス素子を開発することで、さらに安定した冷媒検知を実現できるようにすることが次なる目標です。
NISSHAエフアイエスではこうした改良目標に取り組み、より信頼性の高い冷媒センサーの開発をこれからも続けていきます。
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