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リーファーコンテナという特殊コンテナがあるのをご存知でしょうか。温度管理機能のついたこの特殊なコンテナは、食品の輸送だけでなく医療を支えたり知的財産を守ったりする存在としても活躍しています。リーファーコンテナの特徴と種類、メリット・デメリットをご紹介します。
リーファーコンテナとは
リーファーコンテナとはどのようなものなのか、その特徴とそれにより運ばれる対象物について見てみましょう。
冷蔵機能を持つ特殊なコンテナ
世界ではさまざまなものを低温で運ぶ、温度管理のされた輸送の需要が高まっています。こういった温度管理輸送のために、冷却装置を備え付けた特殊なコンテナがリーファーコンテナです。
リーファーコンテナに対し、一般的なコンテナはドライコンテナと呼ばれます。
リーファーコンテナは壁の内部に断熱材が入っているため外側に冷気が逃げにくく、一定温度に保つことができます。リーファーコンテナによって冷凍・冷蔵貨物を輸送することをリーファー輸送と言います。
リーファーコンテナで運ばれるもの
リーファーコンテナは次のようなものの輸送に使われます。
- 冷凍食品や冷蔵食品
- 消費期限を大幅に伸ばすことができ、簡単に調理できることから世界中で冷凍食品や冷蔵食品の需要が高まっています。こういった冷凍・冷蔵食品の流通のことをコールドチェーンと言い、コールドチェーンの大量輸送においてリーファーコンテナが活躍しています。
- 生鮮食品
- 鮮度を保ったまま輸送することで商品価値が保たれる生鮮食品の輸送には温度管理が不可欠です。肉や魚のように温度管理の徹底が必要な場合、リーファーコンテナでの輸送が適しています。
- 一定温度で保管が必要なワイン
- ワインは高温にさらされると品質が著しく劣化し、商品価値を失ってしまうことがあります。高額で取引されることもあるワインは、商品価値を保つために温度管理された輸送が必要になります。
- 生花
- 生花の輸送にも温度管理のできるリーファーコンテナは適しています。輸送中にしおれてしまったり枯れてしまったりしないよう、低温の状態を保つ必要があるためです。
- 温度管理が必要な薬品
- 医薬品のなかには保管温度が指定されているものがあり、そういったものについては、輸送中にも指定温度範囲内に保たなければなりません。以前は途上国に運ぶことのできなかったワクチンなどもリーファーコンテナによって大量に輸送できるようになりました。
- 高温で変質する恐れのあるフィルムや美術品
- 高温条件下に置かれると変形・変質の可能性がある特殊なフィルムや、変色してしまう恐れのある美術品などは、温度管理輸送が求められます。こういった場合にもリーファーコンテナが使われます。
リーファーコンテナの仕組み
リーファーコンテナは冷却装置を稼働させるために電力が必要です。リーファーコンテナの電源としては、一般的に3相400Vが使用されます。これは世界で使われることの多い電源で、国際輸送にも使われています。
しかし、日本は世界と比べても電圧の低いことで知られる国です。そのため、日本国内ではトランスにより変圧し200Vが使用されています。
コンテナヤードや船上輸送の場合、専用の電源装置と電源コードによって接続することにより冷却装置を稼働させます。陸上輸送の場合は牽引車のジェネレーターから電源を取るのが一般的ですが、大型のリーファーコンテナの場合は大型発電機を一緒に積むこともあります。また、貨物列車で輸送する際には電源用コンテナを並べて積載し、電源を取ります。
温度管理には一般的な冷凍サイクルによって熱交換を行う冷却装置が用いられます。冷媒としては、オゾン層への影響がないハイドロフルオロカーボン(HFC)のうちでも、特にR134aやR404aが使われています。
リーファーコンテナの種類
リーファーコンテナは製造元により異なる特徴がありますが、大きく分けると次のような種類にまとめることができます。
一般的なリーファーコンテナ
製造元により温度設定が異なりますが、一般的にリーファーコンテナでは-20℃から+20℃まで温度管理が可能です。
冷凍専用の低温タイプ
極めて低温に維持することで完全冷凍状態を保ったまま輸送することのできる、冷凍専用タイプのリーファーコンテナです。-60℃まで設定可能なものもあります。
CAコンテナ
Controlled Atmosphereの略で、「環境管理」や「空間管理」と訳されます。温度だけでなく室内の酸素や二酸化炭素の濃度もコントロールし、貨物にとって最適な環境を保ったまま輸送することを目的としています。
青果物はそれぞれ適切な酸素濃度や二酸化炭素濃度がありますが、低酸素環境下では呼吸代謝が抑制され成熟が緩やかになります。これにより鮮度を保ったまま輸送することが可能になるのです。
鮮度保持電場装置使用コンテナ
コンテナ内に特殊な電場状態をつくることにより、0℃以下でも凍らない状態にして鮮度保持輸送が可能なタイプです。電場の生成には特殊な専用シートが用いられます。
冷凍・解凍の過程で劣化してしまう食品でも、過冷却状態にすることで凍ることなくエチレンガスの発生を抑制でき、長期間の鮮度維持が可能になります。
リーファーコンテナを使うメリット・デメリット
リーファーコンテナを使う具体的なメリットとデメリットをまとめると、次のようになります。
メリット
- コールドチェーンの拡大
- 世界で需要の高まっているコールドチェーンの拡大に、リーファーコンテナは大きく貢献しています。特に、アジア諸国ではコールドチェーンの急速な需要増加が続いていますが、その対応には船で大量に運べるリーファーコンテナでの輸送が適しています。
- 低コスト輸送
- 積載量が大きく船上輸送・陸上輸送の積替えも可能なため、低コストでの輸送が可能です。また、陸上輸送が可能ということは、直近の場所まで輸送できることを意味します。
- 出荷時期・販売範囲が限定されない
- 出荷時期が限られてしまうようなものや、遠くまで輸送できずに近場での消費のみに限定されていたような食品でも、時期・範囲を限定せずに流通させることができます。また、リーファーコンテナは幅広い温度管理が可能なため、さまざまな貨物に対応します。
- 物流で共用可能
- 貨物コンテナとしての規格に沿った構造になっているため、一般的なコンテナ同様に物流での共用が可能です。同業者間での共用や積替えでのリレー輸送ができます。
- 一時保管や倉庫としても使用可能
- リーファーコンテナの便利な点は、一時倉庫としても使うことができそのまま保管ができることです。コンテナを客先の施設内に置いておき、出荷まで保管する目的でも使うことができます。
デメリット
- ドライコンテナに比べ低容量
- リーファーコンテナは壁内に断熱材が入っているため壁が厚くなります。一方でコンテナとしての外郭寸法は規格化されているため、内部容量が減ることになります。
- 床部の強度が低い場合がある
- リーファーコンテナは壁内に断熱材を入れる関係上、ドライコンテナと比較して床強度が低い場合があります。特にフォークリフトによる荷役作業を行う際は、リフト作業が可能かどうか確認しておくとよいでしょう。
- 電源が必要
- ドライコンテナと違い、リーファーコンテナには冷却のための電源が必要です。使う場合には電源の確保も考慮しなければなりません。
- 騒音がある
- 冷却装置が常に稼働しているため、ドライコンテナと比較すると多少の騒音があります。
- 手配の計画性が必要
- リーファーコンテナは特殊コンテナであるため、使用の際には早めに予約しなければならない場合があります。CAコンテナのようにさらに特殊なものは、より計画性を持って手配を進める必要があります。
リーファーコンテナにより世界の至るところにものが届く
温度を管理した状態でさまざまなものを輸送できるリーファーコンテナについて、特徴やメリット・デメリットをご紹介しました。
アジア諸国を中心に急速に拡大しているコールドチェーンを支えるため、活躍しているのがリーファーコンテナです。リーファーコンテナにより、世界の至る場所へ低コストで冷凍・冷蔵食品を届けられるだけでなく、医薬品や美術品の輸送の安全度を高めることもできます。今後さらにリーファーコンテナが活躍する場面は増えていくと予想されます。