当社独自の視点から行ったリサーチとトレンド分析によって作り上げたテーマをもとに、NISSHAの最新技術を活用して制作されるサンプルブック。今回は、全体のデザインディレクションを務める江口、鶴谷の2名へインタビューを行い、「サンプルブックができるまで」について話を聞きました。
聞き手
中西 美佳:NISSHA株式会社 産業資材事業部 マーケティング部 Design & CMFグループ プロダクトディレクションチーム シニアデザイナー
話し手
江口 もも子:同グループ アートディレクター ライフプロダクツ チームリーダー
鶴谷 知紀:同グループ 海外モビリティ チームリーダー
幅広い業界に対応するCMF DESIGN BOOKと、量産性を両立させたモビリティ業界向けBOOK
中西:現在サンプルブックのデザインディレクションはモビリティ業界へのご提案は鶴谷さん、幅広い業界へのご提案は江口さんの担当ですが、どういうところを目指しているか教えてください。
鶴谷:モビリティの方は新しい技術を取り入れつつ、お客さまにそのまま採用していただけることが一番嬉しいと思っています。意匠をさらに改良してより良いデザインにしていくということは前提としてあるのですが、量産性も考慮しながら作っています。トレンドはちゃんと加味しながらも、すぐに量産ラインに乗せられる。そんな意匠を作ることを大切にしています。
江口:CMF DESIGN BOOKではCMF(Color Material Finish = 色・素材・仕上げ)の最新のトレンドをデザインインスピレーションとしてご提案しています。ライフプロダクツには、小型のワイヤレスイヤホンから、大型の冷蔵庫までさまざまなサイズがあり、市場が広いので特定のターゲットを絞り込むのが難しいんです。普遍的なデザイン、例えば一般的なヘアライン意匠やメタリック意匠は「BASIC BOOK」というサンプルブックでご提案させていただいています。
サンプルブック制作プロセスの核心:トレンドリサーチ力の応用と、開発部門との連携
中西:それでは、具体的にどのようにブックが作られるのか、制作プロセスについて教えてください。
鶴谷:私たちDesign & CMF グループでは「NISSHA TREND VISION」というトレンド分析レポート作りと活用に力を入れているので、モビリティ業界へご提案するデザイン制作にもその流れを反映しています。TREND VISIONをモビリティ市場に結びつけるのが最も難しいプロセスです。意匠のクオリティを向上させるためには試作を重ねることなども大切ですが、特にTREND VISIONをどう落とし込むかが重要です。
江口:CMF DESIGN BOOKでは「NISSHA TREND VISION」を分解してテーマを考えています。その上で、開発部門に現在の取り組みについてヒアリングを行い、テーマとの組み合わせを検討します。そこからは出来上がったテーマをもとに、各デザイナーが意匠作りを深掘りしながら進めていきます。開発部門との連携も重要で、長年の関係からお互いに必要な情報を共有しながら進めています。
中西:開発部門と一緒に走ってるという感じですかね?
江口:走ってるというとすごいかっこいいですけど。
中西:ブック制作を通して、社内で取り組んでいる開発の内容を広める広報的な役割も果たしていると言えますね。
鶴谷:そういう視点で言えば、最近、モビリティ業界へご提案するブックのSENSE 1とTECH 10に載せている「Rich Surface LU」というサンプルがあります。全社的にモビリティに関連する意匠や技術の開発が進んではいるものの、さまざまな事情で日の目を見ていないものもブックに掲載することでご紹介できればと思っています。Rich Surface LUは意匠として非常に優れたものなので、お客さまの声を聞くために載せています。
中西:意匠価値があるものに、新しい可能性を見つけ出すことができれば、社内での開発が加速する原動力になるかもしれないですね。
江口:芽が出そうな開発品についてお客さまの声を実際に知ることが重要ですね。開発が進んでいても、社内での議論だけでは実際のニーズが見えにくいので、CMF DESIGNシリーズはその発表の場としても機能しています。モビリティ業界へ向けたブックのSENSEは量産を見据えており、コストや意匠表現に関するお客さまのご要望に応えることが求められています。CMF DESIGNは未来寄りのコンセプト意匠が載っているブックとして位置付けられていますね。
デザインディレクションするときに大事にしていること
中西:デザインディレクションするとき、これは必ず大事にしたいと思っているこだわりはありますか?
江口:サンプルブックの各アイテムにアピールポイントを盛り込むことが重要ですね。色にバリエーションがある意匠はただの色違いではなく、明確な特徴を持たせる必要があります。TECHやWOODとは異なる視点で、CMF DESIGNでは工法の違いや特性を強調し、各アイテムのポイントを明示しています。例えば、意匠Aはこの点が優れている、意匠Bはこの点が魅力的だという風に、デザイナーからしっかりと伝えるようにしています。
鶴谷:僕はですね、もちろん色々ありますけど。強いて言うなら、見て楽しいものにしています。
江口:うんうん大事ですよね。
鶴谷:現実的な選択肢として、シルバーやブラック、使いやすい木目などは重要ですが、カラフルな意匠もセットでご提案するなどアレンジを広げて考えています。バランスを取りながら、実用性と独自性を兼ね備えたデザインを目指しています。
江口:ちょっとワクワクするやつですね。大事かもしれないですね。
中西:そうですね。お客さまに選んでいただいて終わり、ではなくて「これ、何かに使えそう」とクリエイティビティを広げてもらえるような、記憶に残るデザインも届けていきたいですね。
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