印刷の種類方法について
印刷の種類方法について
プリントに限らず「生地に色や模様をつける」には様々な手段があります。
アパレル製品としての「製品(服)」ができ上るまでには、「繊維」を紡績して「糸」にし、「糸」を織ったり編んだりして「生地」にし、「生地」を縫製して「製品(服)」がなります。
服に色や柄を与える手段はこの各段階のどこで色を付けるのかで分類することができます。
先染め
ばら毛染め
紡績前の繊維(羊毛など)の状態で染めることを「ばら毛染め」と呼び、糸の状態で色が混ざった霜降り糸などを作ります。手芸屋さんなどで見かける、複数の色の混じった糸でセーターを編むと、表面に模様が現れますが、そのようなイメージです。
糸染め
紡績後の糸を染めることを「糸染め」と呼びます。複数の色の糸を使って柄を表現することができ、チェックやストライプなどシンプルな柄を表現することができます。京都の西陣織などは、非常に多種の糸を組み合わせること複雑な織柄を表現します。
後染め
浸染
織りあがった(編みあがった)生地を染料に漬けて染色する方法です。絞り染めやろうけつ染めでは、糸や糊を使って染料が生地に染みこまないようにすることで、その部分が染まらず、柄として表現されます。
捺染
染料と捺染糊を混ぜた「色糊」を、模様をつけるための「型」を使って生地にのせ、色素を定着させるためのスチーミング工程、糊を洗い流すソーピング工程を経て生地に色を定着させます。
プリント
プリントは、模様をつけるための染色方法であるという点で捺染の一種とも言えます。プリントにはアナログプリントとデジタルプリントがあり、おおざっぱに言うと、型(版)を作るのがアナログプリント、型(版)を作らずデジタルデータから直接プリントするのがデジタルプリントです。
(両者の違いについては
https://connect.nissha.com/fabright/digital_print/
をご参照ください)
製品染め
出来上がった服に後から柄をつける方法です。Tシャツのボディにプリントするなどの方法が一般的ですが、胸や背中の一部などプリントできる領域が限られます。
アパレル製品においては、トレンドが移り変わっていくため、迅速な製品化が求められます。
先染めは製品化するまでの期間が長くなってしまうことから、在庫リスクを回避するという観点では、先染めより後染め、後染めの中でも捺染やプリント、製品染めの方が低リスクと言えます。
以下、デジタルプリントの種類について、解説します。
デジタルプリントの種類について
デジタルプリントには染料インクジェット、顔料インクジェット、昇華転写などいくつかの種類があります。共通の特長としては、
- 型(版)を作らずデジタルデータから直接絵柄をプリントします。
- CMYKの4色インクの掛け合わせで色調を表現するため、色数の制限がありません。プリンターの機種によっては6色、8色といったバリエーションがありますが、限られた色の掛け合わせで幅広い色調を表現するという基本は変わりません。
- データ通りの出力が可能で、細かい柄やグラデーションも自由に表現が可能です。
- 型(版)を作らないため、小ロットに向きます。
■染料インクジェット
捺染と同様「色糊」を使用し、インクジェット方式で絵柄をプリントします。プリント自体はかなり高速にできますが、捺染と同様、プリント工程の後にスチーミング、ソーピングの工程が必要になります。
綿やポリエステルなど様々な生地にプリントが可能という特長のほか、色が生地にしっかりと染みこむので、染色堅牢度が高いこともメリットです。
■顔料インクジェット
顔料とは、物体を一定の色に着色する物質のうち、水や油に溶けず、不透明なものを指します。一方で染料は水や油に溶けます。染料インクジェットでは、色糊をスチーミング工程で発色させ、ソーピング工程で色糊を洗い流すという工程を経て色が生地に「染みこんで」いますが、顔料はインクそのものが生地の表面に「乗っている」状態です。生地表面にインクの「膜ができている」とも言えます。洗い流す必要はありません。
スチーミングやソーピングの工程が不要で設備がシンプルである一方、服にして着て動いたりした場合に、生地表面の「膜」が剥がれたり、割れてしまうことがあります。長年着たプリントTシャツの絵柄が剥がれてしまうという経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
■昇華転写
昇華転写では、「転写紙」という紙と生地を合わせて「転写機」にかけ、転写紙の絵柄を高熱で気化させ、生地に写すという方法を取ります。転写紙自体はインクジェットプリンタで行います。
スチーミングやソーピングの工程が不要で設備がシンプルであるという顔料インクジェットの特長と、色が生地に染みこむことで高い染色堅牢度を得るという染料インクジェットの特長を併せ持っているとも言えます。
一方、プリンターの性能に加えて、転写紙によって濃度の差が出たり、転写条件によっても品質が変わるなど、質の良い昇華転写プリントを行うには一定のノウハウが必要です。
なお、昇華転写は、インクの構造上、ポリエステル生地にしかプリントできませんが、近年では様々な種類・風合いのポリエステル生地が生産されており、生地と絵柄の組み合わせ非常にバリエーションに富んでいます。
ちなみに版を使って転写紙を作る方法もあり、その意味ではここで紹介しているのは「デジタル昇華転写」と言えます。
以上、「生地に色や模様をつける手段」についてまとめてみました。デジタルプリントの活用により、リスクを抑えつつ小ロットで生産することができるようになってきています。