メタンチオールとは
メタンチオール(Methanethiol)は、化学式CH₃SHで表され、「メチルメルカプタン」という別名でも知られています。
主な特徴
- 主な特徴
- 化学式CH3SH
- 沸点6 ℃
- 融点-123 ℃
- 引火点-17.78 ℃
- 比重0.9
- 水溶性2.3g / 100 mL(20℃)
この物質は無色の気体で、非常に特徴的な腐ったタマネギのような強い悪臭を放つのが特徴です。自然界では特定の種実類、チーズ、動物の血液や組織などに微量含まれており、人間の口臭やおならの臭いの原因物質の一つでもあります。
また、メタンチオールは空気よりも重いため、滞留しやすいという特徴も持っています。
生物の代謝活動や有機物の分解過程を通じて広範囲にわたって発生するため、私たちの生活環境にも密接に関係している物質です。
メタンチオールの発生源
メタンチオールは、自然界および人工的な環境の両方で発生します。
自然環境での発生源
自然環境においては、湿地や沼地などの水域で、微生物の活動により有機物が腐敗する過程でメタンチオールが発生します。
また、藻類が代謝するジメチルスルホニオプロピオナート(DMSP)の一次生成物としてもメタンチオールが生成されます。チーズやキノコなどの発酵食品にも微量のメタンチオールが含まれており、これが特有の香り成分です。
人工的な発生源
メタンチオールは人工的な活動によっても発生します。排気ガスや食品廃棄物などが、メタンチオールの主な人工的発生源です。
車両や工場から排出される排気ガスには、微量のメタンチオールが含まれることがあります。また、食品廃棄物が腐敗する過程でもメタンチオールが発生することがあり、これにより不快な臭いが生じることがあります。
そのほかに、パルプ製造の過程で木材が腐敗する際にもメタンチオールが発生します。
メタンチオールの主な利用用途
メタンチオールはプラスチック工業や殺虫剤の原料として使用されるほか、ガス漏れ検知のために、無臭のガスに付臭剤として添加されることもあります。
メタンチオールによる影響
メタンチオールはその特有の強い臭いだけでなく、環境に対してもさまざまな影響を及ぼします。
環境への影響
メタンチオールは大気中に放出されると大気汚染の一因となる可能性を持つ物質です。特に高濃度での存在は臭気の問題を引き起こし、周囲の環境に不快感を与えるだけでなく、動植物にも悪影響を及ぼすことがあります。
さらに、メタンチオールは水質汚染にも関与します。水域に放出されると魚や水生生物の生態系に悪影響を与える可能性があります。
人体への影響
メタンチオールは、吸入や皮膚接触を起こすことで人体に影響を与える可能性がある物質です。まず鼻や喉に刺激を与え、咳や喘息の症状を引き起こす可能性があります。頭痛、めまい、混乱といった神経系の症状を引き起こす原因にもなります。長時間の曝露が続くと慢性的な呼吸器系の問題を引き起こすリスクもあります。
また、メタンチオールの液体は皮膚や眼に接触すると強い刺激を与え、結膜炎や皮膚の損傷を引き起こす可能性があります。
そして、長期間にわたるメタンチオールへの曝露は、内臓への悪影響を及ぼすことがあります。特に肝臓、腎臓、心臓に対して、慢性的な損傷を引き起こすことが報告されています。
メタンチオールへの対策
メタンチオールはその強い臭いと環境への影響から、適切な対策が必要です。
発生の抑制
メタンチオールの発生を抑制するためには、家畜や食品廃棄物の適切な処理が重要です。家畜の排泄物や食品廃棄物が腐敗する過程でメタンチオールが生成されるため、これらの廃棄物を適切に管理し、早期に処理することが求められます。
除去・分解技術
メタンチオールを除去・分解する代表的な方法は酸化処理です。酸化処理により、メタンチオールを除去・分解することで、大気や水域への影響を軽減できます。 さらに、バイオフィルター技術も効果的です。微生物がメタンチオールを分解することで、臭気の原因を取り除くことが可能です。
まとめ
メタンチオールは、強い悪臭を放つ化学物質で、自然界と人工環境の両方で発生します。湿地や食品廃棄物、排気ガスなどが主な発生源です。また、大気汚染や水質汚染などの環境問題、そして人体への影響が懸念されており、特に長期間の曝露は内臓に悪影響を及ぼす可能性があります。 そのため、メタンチオールの発生抑制や除去技術が重要です。
メタンチオールの測定に適したセンサーガスクロマトグラフSGC
メタンチオールは極めて低濃度でも悪臭を放つため、正確な測定が求められます。ここでは、メタンチオールの測定に適しているNISSHAエフアイエスのセンサーガスクロマトグラフSGCを紹介します。
センサーガスクロマトグラフSGCは、メタンチオールを迅速かつ高感度に検出できる装置です。半導体式のガスセンサーと小型カラムの組み合わせにより、ppbレベルという極めて低濃度のメタンチオールの検知が可能です。
測定は非常に簡便で、試料ガスをカラムに注入するだけで自動的に測定が開始され、わずか4〜8分程度で結果が得られます。センサーガスクロマトグラフSGCは自然大気をキャリアガスとして使用しているので、高圧ガスボンベを用意する必要がなく、取り扱いが非常に安全かつ手軽です。また、装置自体は小型で軽量なため、持ち運びも簡単で、設置場所を選びません。
測定結果は専用のソフトウェアによりクロマトチャートとして視覚的に確認できます。
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