R1234yfの特長
- 冷媒番号(ASHRAE番号)
- R1234yf
- 区分
- A2L=微燃性、無毒
- 組成(化学式)
- CF3CF=CH2 / 単一冷媒
- 燃焼下限界濃度(LFL)
- 6.2%
- オゾン破壊係数
- 0
- 地球温暖化係数
(GWP) - < 1
R1234yf冷媒とは?
R1234yf冷媒は、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)に分類されます。HFOは先行して開発されたハイドロフルオロカーボン(HFC)の地球温暖化係数が高いという課題に注目し開発された冷媒です。
自動販売機やカーエアコンなどによく使われており、HFC冷媒のR134aと性質が似ているため、その代替としても利用されています。
R-134aとの違い
R1234yf冷媒は、現在幅広く利用されているR134aと似たような特徴を持っており、どちらもオゾン破壊係数(ODP)は0です。
しかし、大きく異なるのが地球温暖化係数(GWP)です。「地球温暖化係数」とは、地球温暖化に対する影響度を二酸化炭素と相対的に比較した数値であり、二酸化炭素のGWPを1として、数字が小さいほど影響は小さくなります。R134aとR1234yfのGWPを比べてみると、R134aのGWPは1430であるのに対し、R1234yfは1以下(IPCC AR5基準)です。
つまり、R134aには二酸化炭素の1430倍の温室効果があり、その欠点を改善しようと開発されてきたのがR1234yf冷媒なのです。
R1234yf冷媒のメリット
環境負荷が低い
R1234yfの大きなメリットは地球環境への負荷が低い点です。オゾン層を破壊する恐れはなく、温室効果も極めて低いことがわかっています。過去に長年使われてきた特定フロンにはさまざまな問題がありましたが、この冷媒であれば地球環境への悪影響が少ないと考えられます。
自然発火しにくく、比較的安全性が高い
温室効果を抑えるため地球温暖化係数を下げようとすると、別の課題として燃焼性が高くなる傾向が出てきます。燃焼性が高いとは、つまり、自然発火しやすいということです。また、HFOは人への毒性もあり、全体的に見て安全性が高いとは言い切れない部分もあります。
そのようなHFOのなかでも、このR1234yf冷媒については燃焼性や毒性が低い点が特徴です。自然発火しにくく、比較的取り扱いやすい冷媒です。
R134aと同等の冷却性能
冷却性能は、R134aと比較して5%以内の差です。エネルギー効率についても大きな違いはなく、同等の性能があるといえます。
R1234yf冷媒の注意点
R134aに比べてコストが高い
冷却性能の面ではR134aとあまり変わりませんが、コスト面では大きく異なります。R1234yfは、R134aに比べてコストが高い点は考慮が必要です。
まだ市場に普及していない
現在のところ、R1234yf冷媒はまだ世の中に登場したばかりの新しい冷媒であり、市場に十分に普及したとは言えない状況です。ただし、将来的にはR134aを利用したカーエアコンを減らしていくことが決まっており、その代替としてR1234yfの利用が進められています。
日本におけるR1234yf冷媒の取り扱いに関する法律・規制
高圧ガス保安法
高圧ガス保安法は、高圧ガスによる事故を防止し公共の安全を守るための法律です。R134aなど、これまで一般的に使用されてきた冷媒は不活性のため、高圧ガス保安法による規制の適用除外となる範囲が多くありました。しかし、R1234yf冷媒はわずかながら燃焼性があり、これまでよりも規制の対象範囲が広くなっています。さまざまな場面において、以前の冷媒より厳しい規制を受けるため、取り扱いに注意が必要です。
フロン排出抑制法
フロン排出抑制法は、フロンの製造から廃棄までを適正に管理するよう定めた法律です。R134aをはじめとするこれまでの冷媒はこの法律の対象で、エアコンなどを整備・廃棄する際には適切にフロンを回収・処理することが義務付けられています。一方で、R1234yf冷媒に関してはこの法律のフロン類に該当しません。環境への影響があまりないため、この法律による規制の対象外と定められました。
消防法
火災予防などを目的とした消防法では、火災の危険性が大きいものに対して危険物として定めています。R1234yf冷媒はわずかに燃焼性があるものの、消防法の危険物には該当しません。
以上のとおり、R1234yfはフロン排出規制法と消防法においては規制の対象に当たりませんが、高圧ガス保安法などいろいろな法律の規制を受ける可能性が有るため、取り扱いにおいてはあらかじめ法規制の確認が必要です。
R1234yf冷媒の今後の展開
オゾン層を破壊する特定フロンについては既に全廃が決定しており、R134aなどについても温室効果の高さから使用が制限されていきます。その代替として新しいタイプの冷媒が主流となれば、利用できる機器が増えコストも下がってくるはずです。R1234yfについても今後さらに普及していくことが期待されています。
まとめ
これまでに利用されてきた冷媒は、オゾン層の破壊や地球温暖化に影響したりなどさまざまな問題がありました。それらの問題を改善するために開発されたR1234yf冷媒は、地球環境に優しい冷媒と言えます。今後は、エアコンなどに使われる冷媒の主流となっていくかもしれません。
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