コーティング加工の受託先を選定する際、「どの方式が自社の塗工条件に合うのか」「どこまで対応してもらえるのか」を事前に把握することは非常に重要です。本コラムでは、薄膜塗工に強みを持つキスリバースグラビアコーティングに焦点を当て、その特徴・対応条件・注意点を詳しく解説します。受託先選定の判断材料としてお役立てください。

コーティング加工とは、主にプラスチックフィルムなどの基材(PETフィルム・不織布など)の表面に、機能性材料や接着剤・保護材などの塗液(塗材)を均一に塗布するプロセスです。
光学フィルム・電子部品・医療用途・包装材料など、幅広い産業で採用されています。
塗工方式にはさまざまな種類があり、塗材の粘度・塗布量・基材の特性・要求精度によって最適な方式が異なります。代表的な方式として、グラビアコーティング、スロットダイコーティング、ロールコーティング、マイクログラビアコーティングなどが挙げられます。
受託加工業者に依頼する際は、自社の塗工条件(基材幅、加工速度、塗液条件、要求膜厚等)と加工業者の対応可能範囲が一致しているかどうかを事前に確認することが、品質・コスト両面で重要なポイントとなります。

キスリバースグラビアコーティング(Kiss Reverse Gravure Coating)は、グラビア版の回転方向と基材の進行方向を逆向きにし、グラビア版と基材が「キス(軽接触)」する形で塗液を転写するコーティング方式です。グラビア版と基材の接触圧を極めて低く保つことで、デリケートな基材を傷めることなく、薄くて均一な塗膜を形成できます。
主要なコーティング方式と比較すると、キスリバースグラビアコーティングの位置づけが明確になります。
| 方式 | 粘度対応 | 膜厚精度 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| キスリバースグラビアコーティング | 低〜中粘度 | ◎ | 薄膜塗工に最適 |
| スロットダイコーティング | 低〜高粘度 | ◎ | 幅広い粘度・膜厚に対応 |
| ダイレクトグラビアコーディング | 低〜中粘度 | ○ | 高速・量産向き |
| 小径グラビアコーティング | 低粘度 | ◎ | 超薄膜対応・塗工幅に制限あり |
| ロールコーティング | 中〜高粘度 | △ | 厚膜・粘性材料向き |
スロットダイコーティングが粘度・膜厚ともに広いレンジをカバーするのに対し、キスリバースグラビアコーティングは低粘度・薄膜領域に特化した精密塗工を得意とします。一方、小径グラビアは超薄膜塗工に対応できますが、塗工幅が限られる場合があります。キスリバースグラビアは、精密さと実用的な塗工幅のバランスに優れた方式と言えます。
キスリバースグラビアコーティングが特に優位性を発揮するのは、以下のような塗工条件です。
● 塗液の粘度が低い(〜100mPa・s以下)
● 乾燥後の膜厚が薄い(2nm〜60μm Wet)
● 帯状など、部分的なパターン塗工が必要な場合
● 光学的透明性や均一性が求められる用途
● デリケートな基材(薄いフィルム・伸縮性基材など)への塗工
NISSHAは、光学フィルムや電子デバイス関連材料をはじめとする薄膜コーティング加工の受託実績を積み上げてきた企業です。
その中でもキスリバースグラビアコーティングは、薄膜・高精度の塗工が要求される製品群において中核的な役割を担う技術として位置付けています。
NISSHAのコーティング技術ポートフォリオには、スロットダイ、ダイレクトグラビア、小径グラビアなど複数の方式が揃っており、用途・条件に応じて最適な方式を選定できる体制が整っています。その中でキスリバースグラビアは、低粘度材料の薄膜塗工という特定領域において、他方式と差別化された強みを持っています。
NISSHAが保有するキスリバースグラビア装置は、以下のような基本スペック・プロセス条件を備えています(目安値。詳細は要問い合わせ)。
● 対応基材幅:〜1,500mm
● 対応基材厚み:12~350μm
● 乾燥方式:熱風乾燥(溶剤系・水系ともに対応)
● その他条件については別途お問い合わせください
グラビア版のセル深度や回転速度を精密に制御することで、塗布量(Wet膜厚)を安定させることが可能です。また、グラビアロールの設計・選定がコーティング品質を左右するため、塗工条件に応じた最適なグラビア版選定のノウハウが重要となります。
NISSHAのキスリバースグラビアコーティングが対応できる主な塗工条件と、その代表的な用途を紹介します。
キスリバースグラビアコーティングは、粘度の低い塗液を安定して塗工することを最も得意とする方式です。一般的な目安として、数mPa・s〜100mPa・s以下の低粘度材料に対して安定した塗工が可能です。
低粘度材料の代表例としては、以下のようなものが挙げられます。
● ハードコート剤(UV硬化型・熱硬化型)
● 帯電防止剤・防汚コート剤
● 光学調整コート(反射防止・高屈折率材料)
● 各種プライマー・アンカーコート剤
● 薄膜接着剤・粘着剤(低粘度タイプ)
低粘度液体は表面張力の影響を受けやすく、塗工条件の微妙なズレが筋ムラや塗工ムラに直結します。NISSHAでは長年の塗工経験に基づくグラビア版選定・速度設定のノウハウにより、こうした課題に対応しています。
薄膜塗工はキスリバースグラビアコーティングの最大の強みです。乾燥後膜厚として、サブミクロン(0.1μm台)から数μmオーダーまでの薄膜に対応した実績を持ちます。
薄膜コーティングが求められる代表的な用途として以下があります。
● 光学フィルム(偏光板保護フィルム、位相差フィルム等)へのハードコート
● ディスプレイ部材への反射防止コート
● タッチパネル用フィルムへの機能性薄膜
● 太陽電池・燃料電池部材への薄膜コーティング
膜厚の均一性は製品性能に直結するため、コーティング後の膜厚測定・品質管理のプロセスも合わせて重要です。NISSHAでは塗工後の検査・評価体制も備えており、品質保証の観点から受託加工を依頼しやすい環境が整っています。
グラビア版のパターン設計を工夫することで、ストライプ状(帯状)や部分的なパターン塗工にも対応できます。これは、塗工しない領域を意図的に設けたい製品設計において大きなメリットとなります。
帯状・パターン塗工の代表的な活用例として以下があります。
● 接合部に塗工不要領域を設けたフィルム(ラミネート加工前処理)
● 電極パターンを避けたコーティング(電池・電子部品関連)
● 部分的な滑り止めコート・グリップコート
● マスキングなしで実現するストライプ機能コート
パターン塗工の精度はグラビア版の設計精度に依存するため、要求精度に応じた版設計の打ち合わせが重要です。NISSHAでは塗工条件に応じた版仕様のアドバイスも行っています。
キスリバースグラビアコーティングはすべての塗工条件に万能ではありません。以下の条件では、他の塗工方式の方が適している場合や、対応が困難な場合があります。受託加工を検討する際には事前に確認が必要です。
キスリバースグラビア方式は、低粘度材料の薄膜塗工を得意とする反面、高粘度材料(目安:100mPa・s以上)や厚膜(乾燥後10μm超など)の塗工には不向きです。
高粘度液体はグラビア版のセルから転写される際に塗材が引き伸ばされにくく、塗工ムラや塗り残しが発生しやすくなります。また、厚膜を形成しようとすると複数回のパスが必要になるなど、工程が複雑化・コスト増となりやすいです。
高粘度・厚膜塗工が必要な場合は、スロットダイコーティングやロールコーティングなど、粘度・膜厚対応範囲の広い方式の検討をおすすめします。
フィラー・顔料・ビーズなどの固形粒子を含む塗材を使用する場合には、特別な注意が必要です。グラビア版のセルに粒子が詰まることで、塗工ムラの原因となる他、グラビア版自体を損傷させるリスクがあります。
粒子入り塗材を使用したい場合は、以下の点を事前に確認・相談することが必要です。
● 粒子のサイズ(グラビア版のセル深度に対して十分小さいか)
● 粒子の分散安定性(塗工中に沈降・凝集しないか)
● 粒子の硬度(グラビア版表面を傷めないか)
NISSHAをはじめとするコーティング受託加工業者に問い合わせる前に、以下の情報を整理しておくと、スムーズな技術検討・見積もり取得につながります。
| 確認項目 | 確認内容・準備事項 |
|---|---|
| 塗液の情報 | 種類・粘度(mPa・s)・固形分濃度・溶剤系 / 水系・粒子の有無・可使時間など |
| 基材の情報 | 材質・厚み・幅・伸縮性・耐熱性など |
| 要求膜厚 | 乾燥後の目標膜厚(μm)・膜厚許容誤差 |
| 塗工パターン | 全面塗工か帯状・パターン塗工か。パターンの場合は寸法・精度要件 |
| 要求品質 | 外観要件(ムラ・異物・泡など)・光学特性・密着性・耐久性など |
| 生産量・ロット | 試作数量・量産ロット・ロール長さの目安 |
| スケジュール | 試作の希望時期・量産開始の希望時期 |
特に塗液の粘度情報と要求膜厚は、方式選定の第一歩となる重要情報です。これらが整理されていると、技術検討のスピードが大幅に向上します。また、試作段階では塗液サンプルと基材サンプルの提供が求められることが一般的ですので、あらかじめ準備しておくとよいでしょう。
本記事では、キスリバースグラビアコーティングの特徴と、NISSHAが受託加工として対応できる塗工条件について解説しました。要点を整理します。
● キスリバースグラビアコーティングは、低粘度塗材・薄膜・帯状パターン塗工を得意とする薄膜塗工方式
● 他方式(スロットダイ、小径グラビア等)とはそれぞれ得意領域が異なるため、条件に応じた方式選定が重要
● NISSHAは複数の塗工方式を保有しており、条件に合わせた最適方式の提案が可能
● 高粘度・厚膜・粒子入り塗材は、キスリバースグラビアでの対応が困難な場合があるため要事前確認
● 受託加工の検討前に、塗液・基材・要求膜厚・塗工パターン・品質要件などを整理しておくと検討がスムーズ
コーティング受託加工の選定は、製品品質・コスト・開発リードタイムに直結する重要な意思決定です。ご自身の塗工条件がキスリバースグラビアコーティングに適しているかどうか、まずはNISSHAまでお気軽にご相談ください。
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