2023年7月、NISSHAがこれまで培ってきた意匠表現や造形技術が統合された事業ブランド「Nissha SurfaceWorks」は誕生しました。人とプロダクトの最初の接点であるサーフェスに、洗練された外観や心地よい触感、機能性を付与することで、人々の感性に響く体験価値を提供しています。ブランドのリリースから一年。ブランド運営に携わってきたメンバーが集まり、一年間の取り組みを通して実感している「SurfaceWorks」の価値や、表現したい未来の心地よさを考えました。
対談メンバー
野村 真:NISSHA株式会社 産業資材事業部マーケティング部 Design & CMFグループ クリエイティブディレクター
三好 麻衣:コーポレートコミュニケーション部広報グループ 兼 産業資材事業部マーケティング部 マーケティンググループ
竹田 隆一:産業資材事業部マーケティング部 Design & CMFグループ コミュニケーションデザイナー
野原 万歩:産業資材事業部マーケティング部 マーケティンググループ
変わりゆくトレンドを見据えた「表現」への飽くなき探究
「SurfaceWorks」は、色彩や質感、触感が人に作用する感性的な価値と、プロダクトの表層にさまざまな仕組みを統合した機能的な価値が両立したものづくりを提案しています。
野村:私たちは、お客さまのこだわりに応えていくために、40年にわたってフィルムの材料や印刷表現のバリエーションを豊かにしてきました。グラビア印刷工法そのものは最新技術ではないですが、突き詰めていくとものすごく繊細な世界で、多様で高精細な表現が可能です。日々、そうした技術力を活かしながら情緒的なサーフェスを探求しています。
竹田:「NISSHA TREND VISION」やサンプルブックの制作過程でつくるアートワークにも、デザイナーは目に見える限界までこだわりをもっていますよね。妥協することなく、細部まできちんとつくり込む。そうした姿勢に私たち自身のアイデンティティが表れているように思います。
野村:社員一人ひとりがこだわるからこそ、クライアントもこだわりをぶつけて下さるのが嬉しいです。もちろん、仕事である以上は効率性が求められますが、NISSHAとお客さまとの間には、何度も試作を重ねていくうちに築かれる信頼関係があるように感じています。納品後しばらく時間が経ってからも「御社が向き合ってくれたおかげで、表現したい色を最後まで突き詰めさせていただいたことは今でも思い出深いです」とお客さまからあたたかい声をかけてくださることもありました。
お客さまが描きたい未来を具現化するパートナーとして
三好:例えば、株式会社SUBARUさまとのプロジェクトの振り返りで、担当のデザイナーさんに後日お話を伺ったところ「デザイナーさんはもっとわがままになっていいんですよ」という弊社の工場長のひと言がとても印象に残っていると話してくださって。自社のことながら、お客さまの高い要求に対して、粘り強く誠実に応えてきた経験がその言葉に込められていると感じました。また、チャレンジングなものづくりに向き合う私たちの姿勢が、このような信頼につながり、私たち自身の成長にもつながってきたと考えています。
NISSHAはトレンドリサーチに独自の洞察を交えたNISSHA TREND VISIONや、それに基づき提案するデザイン集(サンプルブック)を使ったワークショップを、お客さまとともに定期的に開催し、まだ見ぬ未来のユーザーとプロダクトについて考察しています。
野原:繊細なデザイン表現を可能にするだけではなく、世界各地で開発・生産体制を整えていることも自社の強みですね。それによって、他にはないユニークなポジションが見つかっているのだと思います。
野村:先日、コロナ禍で少し疎遠になっていたヨーロッパの取引先のもとへサンプルブックを持って訪問しました。ある自動車メーカーを訪ねたときに、私たちがプレゼンする前と後で、明らかにお客さまのリアクションが変わったんですよね。ブックを見ながら「こんな多彩な表現ができるのか」と興味を向けてくれて。途中から他部署のデザイナーにも声をかけてくれ、プレゼンが終わる頃には「今日この場に参加できて良かった!」とあたたかい拍手をいただきました。
野村:弊社の意匠表現の幅を改めて実感いただけたと思いますし、世の中のトレンドを捉えながら、先方の想像を超えたクリエイティブを提案できたのではないかと感じました。同時に、私たち自身が40年にわたって積み上げてきた経験や実績を、自ら伝えていく必要性も強く感じましたね。
竹田:私たちはとことん、表現することのおもしろさを探求していくスタンスでいたいです。どんなコンセプトで何を伝えたいか、どんな表現方法や工法がマッチするのかをチームとして考えていくことが、“誰もが心地よい未来を”描くためのシームレスな体験の提供につながっていくと思います。
「誰もが心地よいと思える未来」とテクノロジーの間に生まれるイノベーション
昨年、ブランド運営メンバーが主体となって制作したNissha SurfaceWorksのコンセプトブックには、これまで私たちが提供してきた価値や重ねてきた経験を言語化し、4つのバリューに落とし込みました。
1. Translation – お客さまの意図を汲み取る
お客さまの潜在的なニーズや意図を汲み取り、実現したい未来の製品へと翻訳する。使用する材料と、印刷や成形の加工方法との組み合わせなど、蓄積された知見と確かな技術によって、多様な意匠と造形のカスタマイズを提案できます。
2. Materialization – こだわりを具現化する生産体制
生産技術とグローバルなネットワークを活かし、お客さまのこだわりをカタチにする。設計からプロセスを構築する能力と、世界各地にある9つの生産拠点で最終的な製品化・量産化までを担えることが、高品質で誠実なものづくりへとつながっています。
3. Experience – 意匠と機能による新たな価値体験
「Surface Design」という発想から、人とテクノロジーのタッチポイントにイノベーションを生みだす。心地よさや美しさといった感性的な価値と、利便性や安全性といった機能的な価値を両立させることで、これまでになかった新しい体験を提供します。
4. Living Forward – 未来のものづくりを探究する
お客さまの“これがほしい”という少し先の未来を具現化するために、市場の変化やトレンドを詳細に分析、予測します。最新のテクノロジーとともに、人間らしさを大切にできる世の中を目指し、未来の私たちにとっても心地よいものづくりを探求します。
野村:これからの「SurfaceWorks」を考えるときに、社内の他の事業も含めてこれまで取り組んできたモビリティやディバイス分野で得意とする領域まで発想を広げ、3月のワークショップで出てきたような、人の健康に関するプロダクトやサービス、世の中にある社会課題の解決など、より良く生きるために必要なものづくりへの貢献がテーマになるのではないかと感じています。
野原:日々の生活にあふれる雑多な情報を最小限にして、わかりやすくて使いやすいデザインやシームレスな体験を提供することに、私たちのブランドに求められている “心地よさ” があると思います。
竹田:究極の心地よさは “気がつかない” というレベルまで日常に溶け込んだ状態だと思います。私たちは、日々の生活においてたくさんのものに囲まれていると思いますが、「なぜ、私たちに心地よさが必要なのか」を考える必要がないほどに安らぎがある未来を提案していけるとよいですね。
野村:私の家庭では小さな畑を毎年耕すことにしているのですが、忙しい日々のなかでも家族で共有したい時間など、一人ひとりが大切にしたい瞬間がありますよね。そうした時間を、当たり前として大切にできる未来につながるものづくりに携わりたいと思います。例えば、長く使いつづけたくなるインターフェースにはどんな要素が含まれていると良いだろうとか、進化するテクノロジーと人間がともに生きている世界ってどんな状態だろうとか。感覚的なことは言語化しづらいですが、“なんだかすごくいいんだよね” と感じてもらえる瞬間をつくりたいですね。
三好:少し概念的になりますが、自分らしくいられること、自分として生きていくことが生活の豊かさにもつながる循環が、私たちのこれからの心地よさを生みだしていくのではないかと思っています。日々感じている不安や心配ごとがなくなって、自分らしさというアクセルを全開にして生きられる未来。時間はかかりますが、そんな未来を支えるブランドになれたらと思います。
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