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インタビュー|高触感加飾フィルム開発から見るNissha SurfaceWorksの価値づくりとは

2026/08/18

INTERVIEW

Nissha SurfaceWorksの加飾フィルムのひとつであるAlphaMatte*(アルファマット)は、奥行きのある意匠パターンと触感を同時に付与できることを特徴とし、多様な意匠表現を可能にしてきました。特に木目意匠では、本杢のような凹凸感や質感を付与することで、表情を豊かにすることができます。 また、金型テクスチャーに依存しないフィルムでの部分マット意匠によって高度な意匠を実現できることから、お客さまから高く評価されてきました。

*AlphaMatteは、NISSHA株式会社の商標または登録商標です。

AlphaMatteによる多彩な意匠表現。部分的なマットとパターンの組み合わせにより、奥行きのある豊かな表情を実現しています。

そうした技術を保有しつつ、NISSHAは新しい表現技術を日々追求しています。
今回は、Design & CMFグループが作成しているサンプルブック『SENSE 3』に掲載される、触感をさらに高めた新技術の高触感加飾フィルム開発に携わったメンバーに話を聞きました。
NISSHAの新技術はどのように生まれているのか—インタビューの様子をお届けします。

Design & CMFのサンプルブックはこちら


話し手(右から順に)
鶴谷 知紀:NISSHA株式会社 産業資材事業部 マーケティング部 Design & CMFグループ 係長 モビリティチームリーダー
原 尚司:同事業部 営業一部 営業二グループ グループリーダー 本プロジェクトマネージャー
吉永 拓也:同事業部 製品技術部 設計三グループ 係長
西垣 光:同事業部 製品技術部 設計一グループ
松本 淳:同事業部 開発一部 要素開発グループ 係長

   
― 触感表現を向上させる新技術開発に携わられたとのことですが、「AlphaMatteだけでは足りない」と感じられた瞬間があったのでしょうか?

原プロジェクトマネージャー(以下、原):私は中国のお客さまを担当しているんですが、2024年頃にフロントセールスを行っている中国の現地メンバーから、より高い触感を求めるお客さまからの要望を聞いたり、競合他社からそういった触感を実現する技術が出てきたことのインプットを受けて、今のAlphaMatteでは受注が取れなくなると危機感を覚えました。

原 尚司:産業資材事業部 営業一部 営業二グループ グループリーダー 本プロジェクトマネージャー

松本:焦りのようなものを感じつつも、開発の立場としては、「本当にこれが求められているんだろうか?」と少し半信半疑な部分がありました。でも、海外の展示会へ視察に行った際に「市場から求められている」と、自分の目を通して確信に変わりました。

鶴谷:実はこういった高い触感の工法というのは、過去にもあったんです。ただ、成形段階に進むと、その触感が低減してしまうという課題がありました。
でも、過去に課題としていたことをそのままにしておくんじゃなくて、改良に挑み続けることで、もっとお客さまの要望を実現できるのではないかな、と思っていました。

西垣:印刷手法やインキで改良・改善しようとしても限度があるので、フィルムに凹凸をつけることで触感を付与する過去の工法を1回見直してみようというところが始まりでした。過去に使っていた材料や設計を徹底的に再評価してみると、ほんのわずかな材料の差でも結果に違いが出ることが分かりました。
そうした中で、製品化できるレベルをどこに設定するかを探りながら開発を進めていくのは難しさもありましたね。
最初は、チームのみんなでどの触感がいいかとか、これならお客さまからも高い評価をいただけるのではないかとか、実際に試作サンプルに触れて話し合って、海外営業にもリアルな意見をもらって。その上で品質をクリアする水準を決定していきました。

左からAlphaMatteの幾何学サンプル、AlphaMatteの木目サンプル、高触感加飾フィルムの木目サンプル

― 最終的に『お客さまに紹介できる』と判断されたポイントはどこにありましたか?

原:当社のお客さまである自動車メーカーの成形工場で実際に成形してみて、「量産できる」という評価をもらえたことが大きかったと思っています。お客さまの工場で成形ができないと全く意味がないものになってしまうので。このとき、成形した上で基準をクリアした手触りが残っているサンプルが出来上がって、これなら積極的に提案していけると思いましたね。

西垣:設計確立に向けてお客さまの工場で成形評価を実施し、「この高触感加飾フィルムには、付与した凹凸形状が成形後にも必要十分に残っている」と評価いただけました。お客さまに満足していただけないと設計確立に至ることはできないので、この工程は非常に重要です。
そしてこれからは、より多くの引き合いを頂くことで、品質をもっとブラッシュアップする機会に変えていきたいなと思いました。だからこそ、サンプルブックのディレクターである鶴谷さんに、「やっていきましょうよ」と説得にかかりました。

鶴谷:成形メーカーや自動車メーカーといった当社のお客さまが目にするのは部品になった状態のものですし、さらには、車に乗るエンドユーザーの方が見られるのも部品の状態です。そこで良いものができないと意味がないんですよね。
コンセプトとしてご提案することはいくらでもできるんですけど、お客さまの期待を高めた上でコンセプト止まりになってしまうと、結局は期待を裏切ることになってしまいます。
今回のプロジェクトでは、実際にお客さまに使っていただけるようなレベルまで到達しているサンプルが出来上がって、エンジニアサイドのメンバーからも「サンプルブックにぜひ載せましょう」、「お客さまに広く紹介していくべきだ」という声が上がりました。

吉永:この高触感加飾フィルムのプロジェクトってちょっと特別かなと思っていて。営業やデザイナーなど、いろんな部門のメンバーが集まると、いつもは温度感のズレを感じるんですよね。1つの部門が独走して、他部門と協業できない状況だと「話が通じない、意図を理解しようとしない、それなら止めた方がいい」という流れになってしまうんです。
でも今回は全部認識が合っている状態だったので、そこに関しては止める理由がないなと感じたところが率直な感想です。

鶴谷 知紀:産業資材事業部 マーケティング部 Design & CMFグループ 係長 モビリティ チームリーダー

鶴谷:なんでこれだとダメなのかとか、そういうところが分かっていないと良いものが作れなかったというか。これだけのスピード感で進めるのも難しかったのかなと思います。明確な技術的ゴールをひとつのチームとして共有しながら一緒に知恵を出し合ったからこそ、ここまでできたのかなという気はしますね。
今回、僕たちはたまたまアサインされたメンバーっていう風にも見えますけど、この部門の誰かが関わらない製品ってまずないですよね。こういう取り組みを増やして、より良いものを作っていきたいですね。
プロジェクトが終わった後も関係性って続きますし、以前よりも繋がりが強くなって、社内の連携も深まったように感じます。

― 開発に携わるにあたり、大切にされていること・守ってこられたことを教えてください。また、それとは反対に変化してきたことはありますか?

松本 淳:産業資材事業部 開発一部 要素開発グループ 係長

松本:新しい工法なので、今までの印刷をベースとした独自の意匠表現を消してしまう可能性があるかもしれないなと思いました。
ただ、裏を返すとこれでしかできない表現っていうのもあって。NISSHAの意匠表現力の高さを守りながら、新しい工法による付加価値や、これでしかできない表面の質感などを与えられると思いました。

西垣:守るっていうところで言うと、やっぱり品質は第一に守らないといけません。品質を守るための水準を数字で落とし込むのか、プロセスで落とし込むのかとか、いろいろなアプローチの仕方があります。様々な制約の中で、品質を安定して保てる範囲をどう確保するのかというアプローチは、模索している部分です。

鶴谷:開発とか設計の皆さんからしたら当たり前と思っていることかもしれないですけど、インキ配合のバリエーションとかを数えたら、多分途方もないくらいの数の組み合わせを試していますよね。しかもそれを作ったら終わりじゃなくて、成形してそのフィルムがどうなるのかまで見ていて。
全部の制作工程を把握してくれているからこそ安定して供給できるし、品質を守ってくれているからこそ、こちらも自由度を持ってデザインできていると思います。

成形後もしっかりとした手触りが残る高触感加飾フィルム

他工法との比較も、営業・開発・デザインの各部門が集まって実施しています

― 量産のために妥協せざるを得ないことはありますか?

西垣:妥協して量産をするというのは、普段あんまり考えていないですね。できることとできないことはあると思いますが、限られたQCD*の中で、お客さまの求めるものを高い水準で量産したいという思いで業務に当たっています。
   
   

*QCD:Quality(品質)・Cost(コスト)・Delivery(納期)の頭文字で、「良い品質を、適正なコストで、納期通りに提供する」というバランスを見る指標のこと。

松本:例えば今は触感がトレンドですけど、2、3年後にはなくなっているかもしれません。旬を逃さないうちに合格点を満たしたところで市場に出して、製品を育てていくことを目標にしています。

鶴谷:フィルムの設計がしっかり確立していたら、トレンドの変化が起きた時に表面の意匠や凹凸のパターンを変えるだけで、それに対応できるかもしれないですしね。
今回の開発に至った経緯みたいに、過去の工法が無駄になるんじゃなくて、さらに発展して別の工法に繋がるかもしれない。そういう意味で、ベストを尽くして走りながら、理想を一緒に追い求めているのかなという風に思っています。

原:NISSHAがメーカーであるように、私たちがお取引しているお客さまもメーカーなんですよね。メーカーである限り、量産して、それぞれのお客さまに製品を届けて利益を出す。そこまでやって初めて仕事が完了すると思っています。
妥協というよりも歩み寄る姿勢を大切にすることで、量産性と魅力を両立したものを作ることができると思います。ただ、やっぱりそこで完成ではなくて、日々ブラッシュアップしながら、より良いものを目指していくことを忘れないようにすることが大事だと思いますね。

西垣 光:産業資材事業部 製品技術部 設計一グループ

吉永 拓也:産業資材事業部 製品技術部 設計三グループ 係長

吉永:すごい難しい質問なのかなと思います。妥協というと、諦めてしまうみたいなイメージですけど、どちらかというと「必要最低限」というか。
立場によってそれぞれのフィルターがあると思うんです。あらかじめその目標立てがうまくできていれば、最後の最後で妥協が生まれることはないのかなと思っています。

―「NISSHAらしさ」とは何だと思いますか?

鶴谷:社員がたくさんいる中で、「この取り組みはこの人しかしていない」みたいな事がすごいあるなと思っていまして。
正直なところ、この人がいなくなったらどうするんだろう?って思う反面、個人それぞれのパフォーマンスがすごく高い。うまく噛み合ったらすごいパワーが出るっていうのはNISSHAらしさかなと思っています。足し算じゃなくて、いかに掛け算にできるか、みたいな。そういうことが起こりうるのがNISSHAかなと思います。

西垣:風通しが良いところかなと思います。会議以外でも席に行ったら技術的な見解が聞けますし、ちょっと話をさせてもらえますか?と言っても嫌っていう人が全然いないですよね。
品質を守ることや、効率を上げることがみんなのマインドに深く落とし込まれているので、話が伝わるのが早いと思いますね。

松本:それに、国内に限らず海外メンバーともフランクに意見交換ができる関係性なので、グローバルチーム力があるというか。距離があったとしても海外のローカルメーカーに負けない製品が作れて、スピード感を持ってPDCA*を回せるような仕組みがNISSHAらしさだなと思います。
   
   

*PDCA:Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Action(改善)のサイクルを回しながら、継続的に改善していく考え方。

吉永: NISSHAには、NOと言わないというか、できないと言わないっていう考え方が浸透しているのかなって。
新しいものを開発する時って、確実に何回もつまずくところがあるんですけど、それをどうやったら解決できるんだろうって考えるマインドがあるからこそ乗り越えられていると強く思います。そういうところがNISSHAらしさに確実に繋がっているんじゃないかなと思いますね。

原:やっぱり仕事ってなんでもチームで遂行するものだと思います。
ここに集まっているメンバー以外にも、例えば生産現場の人とか、品質を管理している人とか、サプライヤーさんとか、いろんな協力があって製品化しているんですよね。
そのチームの中で、必ずみんな助けてくれる、協力してくれるっていうところがNISSHAらしさだと思っています。僕は28年NISSHAにいるんですけど、受注したけど量産できずにギブアップした案件って見たことないんですよね。
トラブルがあって辛い思いをすることはあっても、みんなが協力してくれて、やりきる。今回、このプロジェクトに取り組む中で改めてそれを強く感じることができました。
   
   

求められる価値を見極めて、複数の視点から検証と判断を重ねることで、お客さまに提案できるクオリティーまで引き上げていく。
部門を越えた連携の積み重ねが、Nissha SurfaceWorksの表現技術を形づくっています。
高触感加飾フィルムやAlphaMatteをはじめとしたNissha SurfaceWorksの表現技術にご興味がございましたら、お気軽にお問合せください。

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