【EV充電器の基本】その仕組みと種類、今後のニーズについて解説
EV(電気自動車)の普及に伴い、EV充電インフラの整備が急務となっています。そのため、EV充電器の種類や仕組みについても、十分に理解していなくてはいけません。
本コラムでは、EV充電器の基本概念から種類、導入・運用まで、幅広く解説します。普通充電と急速充電の違い、充電モードの分類、さらには設置コストや電力負荷についても詳しく説明します。
また、NISSHAが考えるこれからのEV充電器に求められることについても解説しますので、ぜひビジネスの課題解決にお役立てください。
EV充電器の基本概念
EV充電器は電気自動車の普及に欠かせない重要な機器です。まずは、その基本的な仕組みや種類を理解する必要があります。
EV充電器の定義と役割
EV充電器とは、電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド車(PHV)のバッテリーに電力を供給する装置です。この機器は、家庭用電源や専用の充電設備から電力を取り込み、車両のバッテリーに適切な形で供給する重要な役割を果たします。
充電器の主な機能は、電力の変換と制御です。交流電源を車両が必要とする直流に変換したり、充電速度や電圧を適切に調整したりします。また、充電中の安全性を確保するための保護機能も備えています。
EV充電器は、大きく分けて「普通充電器」と「急速充電器」の2種類があります。普通充電器は主に家庭や職場での長時間駐車時に使用され、急速充電器は外出先での短時間充電に適しています。これらの充電器を適切に選択し、利用することで、EVの利便性が大幅に向上します。
EV充電口の種類と特徴
EV充電口は、車両側の接続部分であり、充電器との適合性が重要です。一般的に、EVやPHVには2種類の大きさの異なる充電口が存在します。小さい方が「普通充電」用、大きい方が「急速充電」用です。ただし、車種によって搭載される充電口は異なり、一方のみを搭載する車両もあります。
普通充電用の充電口は、主にType1(SAE J1772)とType2(メネケス)の2種類があります。日本や北米ではType1が、欧州ではType2が主流です。急速充電用の充電口は、日本発のCHAdeMO規格と欧米で広く採用されているCCS(Combined Charging System)規格があります。
自動車メーカーによっては独自の充電ポートを採用しており、専用のアダプターを介して普通充電と急速充電の両方に対応しています。このように、充電口の種類は車両メーカーや販売地域によって異なるため、充電器の選択や設置の際には注意が必要です。
充電モードの分類
EV充電器の充電モードは、国際電気標準会議(IEC)によってMODE1からMODE4までの4種類に分類されています。これらのモードは、充電設備の種類と制御方式によって区別され、それぞれ異なる特徴や用途を持っています。
MODE1は一般的な家庭用コンセントを使用する最も基本的な充電方式です。MODE2は専用の制御機能付きケーブルを使用し、家庭用コンセントから充電を行います。MODE3は専用の充電設備を使用し、充電器と車両間で通信を行いながら充電を制御する方式で、現在の主流となっています。
MODE4は急速充電に対応した方式で、充電器側で交流を直流に変換し、高出力で充電を行います。各モードには安全性や充電速度、設備コストなどに違いがあり、使用状況や目的に応じて適切なモードを選択することが重要です。充電インフラの整備においては、これらのモードの特性を理解し、効率的なシステム構築を行うことが求められます。
EV充電器の種類と特性
EV充電器には主に普通充電器と急速充電器の2種類があり、それぞれ特徴が異なります。充電方式や用途によって適切な充電器を選択することが重要です。
普通充電器の仕組みと用途
普通充電器は、交流電源を利用してEVのバッテリーを充電する装置です。一般的な家庭用コンセントや専用の普通充電スタンドを使用し、MODE1からMODE3の充電モードに対応しています。
主に長時間駐車する場所での日常的な充電に適しており、自宅や職場での使用が一般的です。充電速度は比較的遅いものの、設備費用が低く、長時間充電に向いているという特徴があります。
普通充電器の出力は通常3.2kWから6.0kWの範囲で、充電時間は車種やバッテリー容量によって異なりますが、満充電まで約6〜12時間程度かかります。EV所有者にとって、夜間充電や勤務中の充電など、日常的な電力補給に最適な選択肢となっています。
急速充電器の特徴と利点
急速充電器は、直流電源を直接EVのバッテリーに送り込む方式を採用しています。CHAdeMO規格やCCS規格に基づいた充電方式で、MODE4の充電モードに対応しています。主に高速道路のサービスエリアや商業施設などに設置されています。
急速充電器の最大の特徴は、短時間で大容量の充電が可能な点です。一般的に50kW以上の高出力を持ち、バッテリー容量の80%まで30分程度で充電できます。長距離ドライブ時の中継地点での充電や、急な充電が必要な場合に非常に便利です。
ただし、急速充電器の設置には高額なコストと大きな電力負荷が伴います。また、頻繁な急速充電はバッテリーの劣化を早める可能性があるため、日常的な使用には適していません。外出先での緊急充電や長距離移動時の補充電に最適な選択肢といえます。
充電速度の比較
EV充電器の充電速度は、充電設備の出力によって大きく異なります。普通充電器と急速充電器の充電速度を比較すると、その差は歴然です。以下に、一般的な充電速度の比較表を示します。
kW数 | フル充電までの目安 (40kWhバッテリーを搭載した場合) | |
普通充電器(家庭用) | 3.2kW | 約12.5時間 |
普通充電器(高出力型) | 6.0kW | 約6.6時間 |
急速充電器 | 50kW以上 | 約48分 |
この比較から、急速充電器が圧倒的に速い充電を実現していることがわかります。しかし、充電速度だけでなく、設置コスト、利用シーン、バッテリーへの影響なども考慮して、適切な充電方法を選択することが重要です。
EV充電インフラの整備が進む中、普通充電器と急速充電器を適切に組み合わせて利用することで、EVの利便性が大きく向上します。充電速度と用途のバランスを考慮し、効率的な充電計画を立てることが、EV利用者にとって重要なポイントです。
EV充電器の導入と運用
ここでは、充電シーンに応じた適切な充電器の選択や、設置コスト、電力負荷、そしてEVの電費と経済性について解説します。
充電シーンに応じた充電器の選び方
EV充電器を選ぶ際は、使用シーンに合わせた適切な選択が重要です。普通充電器と急速充電器の2種類があり、それぞれ異なる特性を持っています。
普通充電器は、長時間駐車する場所での日常的な充電に適しています。例えば、自宅や職場での一晩中の充電に最適です。一方、急速充電器は外出先での緊急充電に向いており、短時間で大量の電力を供給できます。
充電シーンに応じて、以下のように充電器を選択することが推奨されています:
- 自宅や職場:普通充電器(3.2kW〜6.0kW)
- 商業施設や公共施設:普通充電器または急速充電器
- 高速道路のサービスエリア:急速充電器
充電器の設置コストと電力負荷
EV充電器の導入には、設置コストと電力負荷を考慮する必要があります。普通充電器と急速充電器では、これらの要素に大きな差があります。
普通充電器は比較的低コストで設置可能ですが、充電に時間がかかります。一方、急速充電器は高額な設置費用と大きな電力負荷が必要ですが、短時間での充電が可能です。
以下に、充電器の種類別の特性を示します:
充電器の種類 | 設置コスト | 電力負荷 | 充電時間 |
コンセント | 低 | 小 | 長い |
普通充電器 | 中 | 中 | 中程度 |
急速充電器 | 高 | 大 | 短い |
EVの電費と経済性
EV充電器の運用の際に考慮すべきEVの「電費」は、ガソリン車の燃費に相当する指標です。1kWhの電力で走行できる距離(km/kWh)で表され、一般的に、EVの電気代はガソリン車の燃料費と比べて約半分程度となります。
EVの経済性を考える上で、以下の要素を考慮することが重要です:
- 電費(km/kWh):高いほど経済的
- 電気料金:地域や時間帯によって変動
- 充電器の種類:普通充電と急速充電で料金が異なる
- メンテナンスコスト:ガソリン車より低い傾向にある
これらの要素を総合的に検討することで、EVの導入による長期的な経済効果を評価できます。また、環境負荷の低減や企業イメージの向上など、金銭的価値以外の利点も大きいでしょう。
NISSHAが考えるEV充電器のこれからのかたち
ここまでお伝えしたように、EVの普及にともない、EV充電器の需要は広まりつつあります。
戸建住宅やマンションでの設置も増えてきたことで、より住宅外観に合わせてコーディネートができる製品デザインの重要性が高まると考えられています。当社ではお客さまのご希望に合わせて、生活に溶け込む自然なUI/UXを実現したEVチャージャーボックスをご提案します。詳しくは以下コラムをご覧ください。
環境に溶け込むデザイン:光透過技術で進化するEV充電器の加飾部品
【まとめ】EV充電器の基本情報
EV充電器には、普通充電器と急速充電器の2種類があり、それぞれ特性が異なります。普通充電器は長時間駐車時の日常的な充電に適し、急速充電器は短時間での充電が可能です。充電モードはMODE1からMODE4まであり、現在はMODE3が主流になっています。充電器の選択は、使用シーン、設置コスト、電力負荷を考慮して行う必要があるでしょう。EVの電費はガソリン車の約半分で経済的ではありますが、充電インフラの整備状況も重要です。適切な充電器の選択と運用により、EVの利便性向上と環境負荷低減の両立が可能となります。
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