私たちNISSHAは、洗練された意匠表現と機能性が両立する心地よいインターフェースをお客さまにご提案できるよう、物理的・心理的にシームレスな体験を届けるためのUI/UXデザインを探求してきました。

基盤となるインハウスのデザインチームは、毎年独自の視点からリサーチや分析を行っており、それらを通じて得られた知見やデータをもとに「NISSHA TREND VISION(以下、トレンドビジョン)」というレポートをまとめ、年に一度社内外へ向けて発信しています。

トレンドビジョンは、世界各地の最新のデザインに着目し、建築・芸術・テクノロジーなどさまざまな分野を横断しながら、新しい傾向やムーブメントを調査することで得られた気づきや兆しをもとに仮説を立て、それらを深く洞察し、2~3年先の未来として言語化・ビジュアル化したものになります。
一般的なトレンド分析では客観性が求められ、社外の市場環境を対象に実施することが多いですが、私たちは自社のコア技術をもとにリサーチや分析を行うため、常に製品化していくためのプロセスを念頭におきながら、一歩先にある“望ましい未来”ヘ向けたCMFデザインのアイデアを考えることが可能です。(トレンドビジョンについて、詳しくはこちらをご覧ください。)
世の中を取り巻くトレンドは日々変化しており、人がものを所有する概念やライフスタイルそのものに大きな変化が生まれている現代において、私たちはこれからの社会で必要とされる製品づくりを考えなければなりません。
NISSHA TREND VISIONを活用したワークショップ
世の中のニーズが複雑化し多岐にわたるなかで、これからのモビリティ空間において求められる心地よさとは何か、株式会社SUBARU(以下、SUBARU)の経営企画本部 価値づくり推進室 デザイン部のみなさまと2023年10月に行った「CMFデザインワークショップ」の様子をお届けします。
モビリティ業界では、2016年にパリで提唱された「CASE(*1)」の通り、動力源の電動化や、車を所有せずに利用する時代が到来しています。また、2030年には6Gの高速通信が世間に普及すると期待されており、進化する社会に求められる新しいモビリティやサービスを探索していくことになるでしょう。
(*1)CASEとは、「Connected(コネクテッド)」「Automated/Autonomous(自動運転)」「Shared & Service(シェアリング)」「Electrification(電動化)」というモビリティの変革を表す4つの領域の頭文字をつなげた造語です。2016年のパリのモーターショーで提唱されて以来、CASEは自動車業界全体の未来像を語る概念として話題を集めています。

完全自動運転化されたモビリティそのものが自宅・職場に次ぐサードプレイスと呼ばれるとき、人はモビリティに対して、居住空間としてのより豊かな体験や演出を望むようになると私たちは予測しており、「mutech(*2 ミューテック)」においても空間づくりの重要性について言及しています。
(*2)mutechとは、mute × technology の造語で “Less noise, More comfort.” をコンセプトとし、NISSHAの加飾表現とテクノロジーを掛け合わせることでインターフェース上の情報過多(ノイズ)をコントロールし、心地よい空間を作り出す製品コンセプトです。

こうした社会の変化は「車とはこういうものである」という固定された概念を広げ、人々の暮らしや移動のあり方もさらに多様化していくと予測できます。
私たちの製品が求められる未来の暮らしを想像する
ワークショップでは、トレンドビジョンの解説を通じて、NISSHAが毎年どのように世界のトレンドリサーチ・分析を行っているのか、また、分析結果から4つのテーマを定めてCMFデザインに落とし込むまでのプロセスを紹介し、2〜3年先のプロダクトやサービスにおいて必要とされる方向性についてディスカッションしました。

<CMFデザインワークショップ 開催概要>
・参加人数:17名(NISSHAからは10名参加)
・所要時間:約90分
<ワークショップの目的>
NISSHAのトレンド分析を通してクライアントとの相互的な理解(コンセプトや技術)を深め、若手デザイン人材の研修を目的としています。
<ワークショップのプロセス>
1. NISSHAが実践している「CMFデザイン」のつくり方を紹介
インハウスのデザインチームがどのようにトレンドリサーチを行い、分析結果から意匠を考えていくのか、そのプロセスをご紹介します。
2. NISSHA TREND VISION 2023の解説
トレンドビジョンで定めた4つのテーマを解説しながら、参加者それぞれに気になることや共感したポイント、“こうなったらいいな” など、思いつくアイデアについて付箋紙に書き出します。
3. モビリティ空間のデザインに必要なインサイトを見つけ出す
2.の付箋紙をもとに、モビリティ空間におけるトレンドを構成する要素を見つけ、各テーマへの理解を深めるキーワードから、近い将来においてどのような暮らしが想起されるかディスカッションします。
4. まとめ
ディスカッションの内容をもとに付箋をマッピングし、共感したアイデアに投票を行います。

こうした考え方は「大地と空と自然」を環境理念に掲げ、さまざまな観点から自然との調和を目指すSUBARUさまの企業理念とも親和性が高く、ディスカッションの中でたくさんの共感をいただきました。
今回のワークショップについて、SUBARUのデザイナーさまからは次のようなご感想をいただきました。
「異業種のメーカーとデザインコンセプトを共有、共感できることがわかったことは大きな成果でした。2023年当時、SUBARUの環境理念である『大地と空と自然』とNISSHA TREND VISIONのテーマ『自然との共生(Simple Harmony)』が特に親和性の高い内容であったため、議論がスムーズに進んだのだと思います。また、自動車メーカーとしての視点と、印刷・成形メーカーとしての視点が交差することで、新しい気づきや発見が得られた点が印象的でした」と、異業種間でのコラボレーションの価値を高く評価いただきました。
さらに、「NISSHAが提案するCMFデザインやNISSHAらしさから生まれるアイデアは、新たな可能性を感じさせるものでした。特に、デザインだけでなく営業や技術部門の方々も参加されていたことで、意外性のある視点や新鮮なコメントが得られ、大変刺激を受けました」と述べられています。
また、文化や専門性が異なるメーカーと共に未来を考える取り組みは新たな視点や知見をもたらす貴重な機会であり、継続的に実施していきたい内容であったとあたたかいお言葉をいただきました。

世界のトレンドと両社のリソースをかけ合わせながら“望ましい未来”をディスカッションすることで、より質の高い問いが生まれ、質の高い問いから新たなイノベーションが生まれると私たちは考えます。
私たちNISSHAは、これからも時代を超えた心地よさを追求し、SurfaceWorksを通して世界中の人々の目を楽しませ、手に触れ、安らぎのある日常を提供していきます。
NISSHAによるCMFデザインワークショップ、ビジネスパートナーにご興味がございましたら、お気軽にお問合せください。