自動車用プラスチック部品のリサイクルの可能性(リサイクラビリティ)向上

地球温暖化が深刻な問題となる中、CO2排出削減は全世界的な課題です。自動車業界においても様々な対応が行われており、自動車部品のリサイクル推進も主要な取り組みのひとつです。しかしながら、プラスチックについては、環境保全に関する取り組みにおいては先進地域である欧州でも低迷しており、問題視されています。
この記事では、自動車に使われるプラスチックに絞り、リサイクラビリティの向上に向けた法規制や自動車および周辺業界の動向について解説します。
EUのELV規則

欧州においては、自動車の廃棄やリサイクルによる資源の有効活用と環境負荷の低減を目的としたELV(End-of-Life Vehicles)指令が2000年に制定されました。しかし、プラスチックについては、廃車からのリサイクル率は19%と低く、問題視されてきました。
そこで欧州連合(EU)は、ELV(End-of-Life Vehicles)指令を格上げし、プラスチックのリサイクル促進を目的に強制力を持ったELV規則の導入を進めています。
ELV規則においては、自動車メーカーに対して車両の設計段階からリサイクルしやすい構造を採用する義務付けを踏襲した上で、新車におけるリサイクルプラスチックの使用率20%以上、その内15%は廃車由来であることが2031年から義務化されることになります。
モノマテリアル化の重要性
自動車用プラスチック部品のリサイクルを困難にする要因は、いくつかあります。自動車のプラスチック部品の多くは、求められる高い性能の実現や組み立て作業を効率的に行うため、複数の異なる素材、異なる種類のプラスチックが一体化しており、リサイクルに必要な分別や分解を困難にしています。
また一体化した不特定の複合したプラスチックの混入は、メカニカルリサイクルでは選別しきれず、再利用した際のプラスチック部品の品質の劣化、ばらつきの原因となるのです。
プラスチック部品のリサイクラビリティを向上させるには、設計段階から解体を前提とした構造にすることと、単一の種類のプラスチックで部品を構成することが重要になり、後者がモノマテリアル化と呼ばれています。
ポリプロピレン仕様のモノマテリアル化に注目が集まる理由
ポリプロピレン(以下PP)は、その優れた物性、加工性とコストパフォーマンスから、家電や雑貨、食品の包装材料まで、多くの用途で利用されています。高温環境でも性能を維持し、衝撃にも強く、重量も比較的軽いなど、自動車部品としても適していることから、自動車に使われるプラスチックの40%近くを占め、最も多く採用されています。さらに、PPは製造時のCO2排出量も少なくリサイクル後も劣化が少ないため、自動車用のプラスチック部品のリサイクラビリティ向上のみならず、CO2の排出を削減するという最終的な目的にも適した材料であると言えます。
NISSHAのモノマテリアル化への取り組み

NISSHAでは、この流れを受け、PP樹脂に対応するフィルム加飾製品を新たに開発しています。PP樹脂加飾成形品は、PPを基材に使用し、その上に、あらかじめグラビア印刷で加飾したPP製のフィルムを挟む形で成形します。この工法は、3D 形状の成形品の表面に触感を含めた多彩な意匠を表現することができます。フィルム加飾は、塗装に比べ、CO2排出量が少ないだけでなく、塗装では表現できない色彩や濃淡の幅広い表現力を持っているほか、光透過*1設計により、照明や表示部にも活用いただくことができます。
*1 光透過とは、加飾成形品の背面に取り付けた光源やデジタルディスプレーからの光を、点灯時のみ透過させるような設計です。
NISSHAのフィルム加飾はバージンのPPは勿論のこと、再生PPやバイオコンポジット材に使うことも可能です。フィルム加飾であれば、低グレードの再生材料やバイオコンポジット材に含まれる異物を隠すことで外観品質を一定にすることも、逆に独特の風合いとして活かすこともできます。
NISSHAのPP樹脂加飾製品ラインナップ
深絞り形状対応タイプ(Type-P):
このタイプは、全てPPで構成されており、深絞りにも対応可能です。シンプルな構造でコスト効率も良好なため、多くの用途で利用されています。
インクのみがPP樹脂上に転写されるタイプ(Type-TR):
このタイプは、プレフォーム工程が不要で、製造工程を簡略化し、コスト削減を実現しています。フィルムに印刷されたインクのみが、成形加工の際にPP樹脂上に転写されるため、リサイクル性も高いです。
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