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IME技術コンセプト「Trinity Switch」

2021/10/10

UI / UX

拡張するデザインの領域

私たちはCMFに関することだけでなく、プロダクトデザインやUI/UXについても提案を行っています。
それを可能にしているのはNISSHAが持つ幅広いコア技術です。私たちの部門が立ち上がるよりも以前から社内には加飾成形を得意とする事業部とセンサーを扱う事業部があり、2000年前後よりPDA(※)やスマートフォンなどに表示パネルやタッチセンサーを供給していました。それが家電製品にも広く使われるようになった頃から、コントロールパネルと製品全体との調和を目指したシームレスなデザインと操作機能をテーマとした案件が増え、デザイン部門としてもUI/UXへの理解を深めながら、プロトタイピングしたものを提案するようになりました。その蓄積が、現在私たちがもつ能力の基盤となっています。

※PDAとはPersonal Digital Assistantの略で、個人向け情報端末のこと。手のひらに収まる大きさ、スケジュールや連絡先、タスク管理等、手帳代わりになる機能が特徴。米パーム社のPalmやシャープ株式会社のZaurusが有名。

今回の場合は社内の開発部門からの「自分たちが保有している技術の価値をもっと伝えたい」という相談が始まりでした。NISSHAはフィルム上にセンサーの他、LEDやアンテナなどの電気的機能を実装したものを、複雑な3D形状や小さなパーツにインサート成形することで一体化させる「IME」技術を保有しています。その技術をお客さまに分かりやすく伝えるためのプレゼンテーション資料を必要としていました。

デザインチームではこの相談を受けた時に、IME技術によって既存ディバイスの操作をよりシンプルにできる可能性を感じるとともに、様々なシーンでどういった「使いやすさ」を提供できるのか、またその実現に込めた開発者の想いを伝えるべきだと考えました。
その実現には動画というアプローチが最適だと判断し、開発部門の理解と協力を得て制作を開始しました。

動画は”Trinity Switch”という架空の製品コンセプトについて、2人のキーパーソンが開発当初の背景から様々な市場での利用シーンと未来の展望を語る、という設定で進行しています。
NISSHAはスイッチメーカーではなく、”Trinity Switch”はあくまでも架空の製品で実際に量産されることはありません。重要なのは今回のデザインプロセスを通して作られたコンセプトムービーに対して、お客さまからどのようなフィードバックが得られるのかということでした。

動画制作のプロセスとして、最初にNISSHA TREND VISIONから抽出した「テクノロジーと人との関係」にフォーカスされている事例と追加の調査結果を基に仮説を言語化しました。プロトタイピング手法としてスケッチイメージを用いることで、分かりやすいストーリーに仕上げました。デモ機はこの動画の技術的価値のベースとなり、またお客さまに向けた体験ツールとして活用されることを想定しています。これら一連のアクションがお客さまの問題解決へ向き合うNISSHAの姿勢としてどのように受け止められるのかも興味深いところです。

本動画の制作は、クリエイティブディレクション:コンセプチュアルで透明感のある映像作品を数多く手掛ける株式会社Qe to Hare代表の田中英行氏、撮影:NISSHAグループ会社の撮影会社NF8の協力のもとで行いました。

田中 英行 / Eikoh TANAKA
京都市立芸術大学大学院 MFA 修了。2002年からアーティストコレクティヴAntennaとして活動を開始し、国内外の多くの展覧会、映像祭に出展、受賞など。京都市立芸術大学、京都精華大学、嵯峨美術大学等での非常勤講師を経た後、NPO法人Antenna Media設立、理事を務める。美術家、映像作家、コンテクストデザイナー、クリエイティブディレクターなど、ボーダレスにアーティストの視点から様々なスタイルでクリエーションを実践。
近年の仕事には「ヴェネチアビエンナーレ建築展、伊東豊雄」 インスタレーション制作/ヴェネチア、「森美術館15周年記念展 建築の日本展」 展示映像制作、「LIXIL ギャラリー クリエイションの未来展 展示アドバイザリー」等。
主な展覧会には「International Videoart Festival Magmart VII」Casoria Contemporary Art Museum/イタリア)「Power, Where Does the Beauty Lie」SOMA美術館/韓国、「文化庁メディア芸術祭香港展2012 “PARADE”」/香港、「六本木アートナイト2012」/東京、等がある。

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