ヒアルロン酸とは?
牛の「目」から発見された、
肌だけではなく、私達の体に必要な成分
ヒアルロン酸は、1934年に米国コロンビア大学のカール・マイヤー博士らによって、牛の目から発見されました。
ギリシャ語で硝子体を意味するHyaloidからHyaluronic acid(ヒアルロン酸)と名付けられました。その後、研究により、皮膚や関節、脳、心臓など体のいたる所に存在していることがわかり、重要な働きをしていることが明らかになりました。
1987年には日本で、医薬品としての使用が認められ、今日まで眼病治療薬、関節炎治療のための注射として用いられています。また、サプリメントや化粧品として多用な用途があり、今では広く知られる成分となっています。
ヒアルロン酸は体内で働いている
ヒアルロン酸はヒトの目、皮膚、関節など体のいたる所に存在し、中でも特に目・肌・関節に多く存在しています。各部位でさまざまな役割を担っており、私たちの体にとって、なくてはならない成分なのです。
●肌での働き
うるおいを保つ事で乾燥を防ぎ、みずみずしいハリのある肌を維持します。
●目での働き
目の形を保ち、ドライアイの予防し、健やかに保つ役割があります。
●関節での働き
関節には軟骨と言われるものがあり、この軟骨は骨と骨の間のクッションの役割を果たしています。「ヒアルロン酸」は軟骨を構成する基質のひとつです。補う事で、曲げ伸ばしなどスムーズな動きをサポートする働きがあります。
ヒアルロン酸の性質
ヒアルロン酸は糖の仲間です。「N-アセチルグルコサミン」と「グルクロン酸」と呼ばれるふたつの糖が、一列に、規則正しく交互に結合してできています。私たちの体の中では、数万もの「N-アセチルグルコサミン」と「グルクロン酸」が結合して、ヒアルロン酸の長い列を作り出しています。そのため、ヒアルロン酸は分子が大きい高分子に属し、そのままでは体に吸収されにくいという性質も持っています。 吸収されやすいように、分子量を小さく加工されたヒアルロン酸があり、それを配合している化粧品やサプリメントなどが多く販売されています。また高分子のヒアルロン酸をそのまま取り入れる方法もあります。用途や目的に合わせて、上手に取り入れることができる方法を選ぶ事が大切です。
ヒアルロン酸の機能
●美肌
ヒアルロン酸は水を抱え込む事ができるため、肌の潤いを保つ効果が期待できます。この優れた保水力は、肌をうるおいに満ちた弾力のある状態にキープする上で大切です。水を抱えて、肌の隙間を水分で充たすことで、乾燥から肌を守り、潤いを生み出しています。
しかし、体内のヒアルロン酸の量は、20代後半から減り始め、40代後半を過ぎると減少量が増していきます。70代の大人の皮膚に含まれるヒアルロン酸量は、赤ちゃんのわずか5分の1とも言われています。必要なヒアルロン酸が不足している肌は、うるおいが失われ、弾力が低下し、肌のハリが衰えてしまう他、カサつき・肌荒れの原因にもなってしまいます。
高分子の保湿成分であるヒアルロン酸をチャージすることによって、うるおって弾力のあるハリ肌を維持することができます。
そのため、ヒアルロン酸はアンチエイジングのための保湿成分として定番の成分になっています。
美肌を目的としたヒアルロン酸の摂取方法としては、化粧品やサプリメント(経口投与)、美容機器などがあります。
また、ヒアルロン酸は安全性が高い成分と評価されており、美容外科・整形外科などので、ヒアルロン酸注射という形でも提供されています。
●目の乾きを防ぐ
目を形づくっている「硝子体」と呼ばれる部分のほとんどは、ヒアルロン酸でできています。また涙の成分にもヒアルロン酸は含まれています。ヒアルロン酸は粘り気のある保湿成分であるため、ヒアルロン酸を補うことによって、涙を角膜の表面に留まらせる働きがあります。これにより、目の表面の乾燥を防ぐことができます。このような特徴から、ヒアルロン酸は涙の量が減ったり、涙の質が低下することによって、目の表面が乾く事から予防や改善効果がある成分として、実際に点眼薬に用いられています。パソコンやスマートフォンは現代人の生活に欠かせないツールとなり、目を酷使すること増えています。長時間、パソコンやスマートフォンを使用する方は特に、まばたきの回数が減少するので目の表面が乾燥しやすくなります。ほか、湿度が低い環境での長時間の作業も気をつけるとよいでしょう。
目の表面が慢性的に乾燥していると、目の表面が傷つきやすくなり、視力への影響が少なからずあります。目の表面の乾燥を軽視していると、重大な症状を引き起こす可能性もあるため、日々予防することを心がけましょう。
●関節の動きをなめらかに
ヒアルロン酸は、関節と関節の間のクッションの役割を果たしている軟骨に含まれ、関節の動きをなめらかにする働きがあります。
クッションの役割をしている軟骨がすり減ってしまうと、骨と骨がぶつかり、日常生活のちょっとした行動であっても、膝などの関節に痛みを感じることがあります。このような関節痛にもヒアルロン酸は力を発揮します。
ヒアルロン酸は軟骨を形成を促し、スムーズな動きを手助けることで、痛みを和らげる効果があると言われています。
ヒアルロン酸をはじめとする軟骨に含まれる成分は、年齢とともに減少してしまうため、年配の方の悩みという印象があるかもしれませんが、体重の増加により関節への負担が大きくなることも、関節痛を引き起こす事があります。
年齢を問わず、日頃から、ヒアルロン酸を補うことが大切なのです。
化粧品に配合されているヒアルロン酸の種類
●ヒアルロン酸Na
ヒアルロン酸Naは、肌表面のうるおいをキープする効果があります。その理由はヒアルロン酸Naは分子が大きく、角質層に浸透しにくく、肌表面に留まるため、肌表面に留まり、覆うことで皮膚から水分が蒸散するのを防いでくれるためと言われています。このため、乳液やクリームなど化粧水の水分を閉じ込めたいアイテムに配合されています。
●加水分解ヒアルロン酸
加水分解ヒアルロン酸は、角質層内部に浸透しやすく改良されたヒアルロン酸です。分子を小さくしており、ヒアルロン酸Naと比べて角質層に浸透しやすくなっています。水を多く配合するアイテム(美容液や化粧水)に広く使われています。
●アセチルヒアルロン酸Na
アセチルヒアルロン酸Naは優れた保湿力があり、ヒアルロン酸Naと比べると、2倍の水分保持力があると言われています。ヒアルロン酸 Naは水にも、油にも溶けやすい性質を持っているため、肌に吸着しやすいため、高い保湿性があり、角質層を柔軟にする効果も期待できます。さらに、べたつきのないもっちりとした使用感の化粧品をつくるのにも用いられます。
化粧品に配合されるヒアルロン酸はサイズに注目
化粧品に配合されるヒアルロン酸は浸透性を高めた低分子の配合が好まれています。一方、分子量が大きいヒアルロン酸は肌の表面にうるおい膜を形成し、ペタペタとした感触があるため、塗布後のモチモチとした肌感触の演出に用いられます。自然界に存在する高分子ヒアルロン酸の分子量は通常100万以上ですが、低分子ヒアルロン酸は1万~10万程度にまで縮小し、分子量の小さなヒアルロン酸に加工されてます。また、原子の一部を肌に吸収しやすい物質に置き換えて作られた、アセチルヒアルロン酸(通称スーパーヒアルロン酸)や、酵素などを用いることでヒアルロン酸を加水分解して分子量を1万以下にした加水分解ヒアルロン酸など、低分子化されたヒアルロン酸があります。
低分子ヒアルロン酸と高分子ヒアルロン酸のそれぞれの特徴を理解し、目的に合わせてスキンケア用品を選ぶことをおすすめします。
高分子ヒアルロン酸とは?
高分子ヒアルロン酸は、フカヒレやオクラ、納豆などのプルプル、ネバネバ系の食品に多く含まれます。これらの食品に含まれるヒアルロン酸は、自然界にもともと存在する「高分子ヒアルロン酸」と呼ばれる分子量の大きなヒアルロン酸です。
高分子ヒアルロン酸は、粒子の大きさが低分子ヒアルロン酸に比べて大きいため、その分抱え込める水分量が多く、高い保水力が特徴です。体内へは食事から摂取することが可能ですが、熱に弱いため、調理時に破壊されてしまうという特徴があります。化粧品で角質層内に吸収させるには高分子である事に加え、粘度が高いため、角質層に浸透させるのが難しいデメリットがありますが、肌の表面に留まり、うるおいを閉じ込める保護膜のような働きは得られます。
低分子ヒアルロン酸とは?
低分子ヒアルロン酸は、高分子ヒアルロン酸を人工的に小さくしたものです。高分子ヒアルロン酸に比べ粒子が小さく、体内や皮膚から吸収しやすくなっているため、化粧品やドリンク、サプリメントなどに用いられています。「吸収」という面では優れている低分子ヒアルロン酸ですが、粒子が小さいため、高分子ヒアルロン酸に比べると、体内で早く分解されてしまうため、長持ちしません。また、角質層に吸収した低分子ヒアルロン酸も高分子ヒアルロン酸に比べると保水効果の持続時間は比較的短いと言えます。
目的に合わせて高分子と低分子
どちらが配合されている化粧品か選ぶ
ヒアルロン酸は、分子量が大きいと抱えこむことができる水分量が多くなるため、保持力が高くなります。角質層内に浸透させる事ができれば、角質層内部にとどまりやすく、うるおいをキープする効果が得られます。そのため保湿効果とその持続性が高い点が優れています。高分子ヒアルロン酸はそのまま化粧品に配合すると角質層に浸透できず、肌表面に留まります。その結果、高分子ヒアルロン酸が膜のように肌表面を覆い、ペタペタとした肌感触を感じるため、しっとりとした使い心地になります。
一方、低分子ヒアルロン酸は、角質層に浸透しやすくなります。ただし、保水効果やその持続性は高分子ヒアルロン酸より劣るため、保湿作用を目的に化粧品に配合する場合は、少量では効果を発揮にくいので、高配合されている化粧品を選ぶ必要があります。またさっぱりとした使い心地でべたつきにくいです。目的や自分好みの使い心地に合わせて、選んでください。