幹細胞培養液を化粧品に使用するための正しい知識

化粧品業界は日々進化し、新たなトレンドと技術が連続的に登場しています。化粧品に配合される成分も流行や発見がされるなど、目まぐるしく変化するものです。そんな中、数年前から注目されている成分の1つに「幹細胞培養液」があります。この名前を耳にしたことがある方は多いでしょう。しかし、具体的に何であるかを理解している方は少ないかもしれません。今回はこの幹細胞培養液について簡単に説明したいと思います。

幹細胞培養液とは

文字通り幹細胞を培養する際の液体(培養液)のことを指します。幹細胞は、細胞分裂を通じて自己複製する能力と、必要に応じて様々な種類の細胞に分化する能力があります。これらの特性により、体の損傷や老化に対抗する再生能力を発揮することが期待されているのです。
幹細胞培養液は、化粧品の原料としても用いられることがありますが、これには幹細胞の培養液の他、幹細胞を培養する際に分泌される成分、例えば、細胞の成長と分裂を促進する成長因子、細胞間通信を助けるサイトカイン、たんぱく質や抗酸化物質などが含まれています。幹細胞培養液を配合した化粧品は「幹細胞コスメ」と呼ばれており、肌のハリや弾力を保つ効果があると言われています。

幹細胞コスメに関する誤認とは

幹細胞を増殖させる培養液を化粧品原料として使用しているもの。幹細胞コスメを「幹細胞そのものを使用している化粧品」と勘違いしている人も少なくないでしょう。しかし実際は、幹細胞を増殖させる培養液を化粧品原料として使用しているものであって、幹細胞そのものは使用していません。広告表現によっては「幹細胞を使用したコスメ」と誤認される表現は控えることが大切です。

幹細胞と幹細胞培養液の違い

「幹細胞」と「幹細胞培養液」は似た名称であるため、混同しやすいかもしれません。その性質と役割は大きく異なります。「幹細胞」と「幹細胞培養液」の主な違い、これらの特性を理解し、化粧品開発を進めましょう。

【幹細胞】
体内に存在する特殊な細胞で、自己複製能力と多様な細胞への分化能力を持っています。つまり、幹細胞は自身と同じ細胞を作り出すことができるだけでなく、必要に応じて肌細胞や神経細胞など、さまざまな種類の細胞に変わることができるのです。この特性により、体の修復や再生に重要な役割を果たしています。
【幹細胞培養液】
幹細胞を培養(育成)するための液体のこと。この培養液には、幹細胞が健康に成長し、機能を発揮するために必要な成分が含まれており、幹細胞をサポートする役割を持っています。

化粧品業界では、特に幹細胞培養液が注目されています。それは、培養液が持つ栄養素が肌の健康や美容に対して有益であると考えられているからです。

幹細胞培養液の由来と、その特徴・効果・注意点

化粧品に使用される幹細胞培養液には「ヒト由来」「動物由来」「植物由来」の3種類があります。

【ヒト由来の幹細胞培養液】
ヒトの皮膚細胞や臍帯血などから作られる培養液。ヒト幹細胞培養液は人間の細胞との親和性が高いため、アレルギーなどの副作用が少なく、安心感があることが大きなメリットです。一方、ヒト由来の化粧品原料に対する倫理的な問題はあるでしょう。商品開発や使用にあたっては注意が必要です。
【動物由来の幹細胞培養液】
主に動物の皮膚細胞から作られる培養液。その特長は、ヒトの皮膚細胞と類似の成分を含んでいる点にあります。ヒト由来に同じく、動物由来の化粧品原料に対する倫理的な問題、またアレルギー反応を引き起こす可能性があります。使用は控えることをお勧めします。
【植物由来の幹細胞培養液】
植物の幹細胞から抽出される培養液。これらの培養液は自然由来で、抗酸化効果や保湿効果が高いとされています。また、植物由来なので動物由来のものよりもアレルギー反応を引き起こす可能性が低いとされています。しかし、幹細胞培養液に限らず、いかなる化粧品原料においても、全ての方にとって皮膚トラブルが起きないとは言い切れません。確定処方を用いた安全性試験やメーカー独自の確認試験を実施しましょう。

最も高い効果が期待できるイメージがあるのは「ヒト由来」、倫理的な印象を重視するなら「植物由来」と言ったように自社の方針に合う幹細胞培養液を選択してください。

幹細胞培養液を化粧品に使用するための選び方

幹細胞培養液は、その再生能力から、化粧品業界で注目されています。しかし、幹細胞培養液は多種多様であるため、製品開発における適切な原料選択が大切です。ここでは、幹細胞培養液の選び方のポイントをご紹介します。

【幹細胞の由来】
幹細胞培養液は、脂肪、皮膚、歯髄など、様々な組織から得られます。それぞれの由来が持つ特性と、製品の目指す効果とをマッチさせることが重要です。
【品質と安全性】
品質管理と安全性確保に関する明確な情報を取得できる原料を選ぶことをおすすめします。製品に含まれる具体的な成分やその濃度も確認しておくとよいでしょう。
【効果の証明】
幹細胞培養液の効果は科学的な根拠に基づいているかが重要です。実験データや臨床試験の結果など、その効果を裏付ける証拠を確認してください。
【安定供給】
幹細胞培養液には多種多様な成分が含まれています。そのため、均一に成分を含む幹細胞培養液を作ることが可能か確認しましょう。
【倫理性】
幹細胞の取得方法は倫理的に適切であるべきです。特に、ヒト由来の幹細胞を使用する場合は、その取得が合法かつ倫理的なガイドラインに従って行われていることを確認しましょう。

NISSHA選定基準:幹細胞培養液

項目 基準
品質 化粧品原料採用に求められる一般的な試験項目をクリアしている
安全性 有害性情報等、取り扱いに必要な情報提供がある
効果 分化能力と分裂能力が高い幹細胞を選択する
エビデンス 科学的な根拠となる実験データがある
供給 同じ成分と量を再現でき、安定供給できる生産方法である

NISSHAでは「Cysay因子®」の幹細胞培養上清を配合できます。
マイクロニードルへの配合検討を済ませており、スピーディに製品化が可能です。

幹細胞培養上清とは

幹細胞培養液の上部に存在する澄んだ液体を指します。この上清は、特定の成分の純度が高いという特徴があります。そのため、特定の成分を効率的に採取することが可能となります。

マイクロニードルと幹細胞培養液の相性

幹細胞培養液に熱に弱い成分を含むため、低温低圧製法のマイクロニードルは配合するのに適した剤型と言えます。幹細胞培養液に含まれる成分は、一般的に熱に敏感で、適切な温度範囲外での暴露は避ける必要があります。特に、高温にさらされると、幹細胞培養液に含まれるたんぱく質や成長因子は変性し、その形状が変化。結果、形状が変わることで、その機能を失うことがあるのです。

=まとめ=

幹細胞培養液は美容業界で注目される成分の一つです。しかし、どの原料を選択するかは自社で十分に検討する必要があるでしょう。自社の方針やコンセプトに合う幹細胞培養液を選び、適切な処方や製造方法で製品開発を成功につなげていただけると幸いです。

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