Pulp-Injectionの採用事例〜自己注射器用トレー(ヤンセン・ファーマシューティカル・カンパニーズ)

各国の規制やESGへの意識の高まりを背景に、医薬品の包装容器にも環境対応の動きがみられ始めています。その先駆けとして、ヤンセン・ファーマシューティカル・カンパニーズ(以下、ヤンセン)が製造・販売する自己注射器のトレーにNISSHAのPulp-Injectionが採用されました。

この事例を基に、採用に至った背景とPulp-Injectionを必要とした理由についてご紹介します。

サステナブルパッケージへの切り替えは喫緊の課題

ヤンセンは、トータルヘルスケア企業ジョンソン・エンド・ジョンソングループ(以下、ジョンソン・エンド・ジョンソン)の医薬品部門であり、世界約150か国でがんや免疫疾患、感染症・ワクチンなどの医薬品を提供しています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、20年以上にわたり炭素排出ゼロを目指した気候変動対策に取り組んでおり、2030年には事業活動における炭素排出量を2016年比で60%削減するなどの野心的な目標*を掲げ、グループ各社が推進しています。

*Our Approach to Climate Action | Johnson & Johnson (jnj.com)
参照:Global Environmental Sustainability | Johnson & Johnson (jnj.com)

ヤンセンも、ジョンソン・エンド・ジョンソンの方針に合わせ、長い年月をかけて自己注射器用トレーのサステナブル対応を検討してきました。

自己注射器用トレーに求められる性能

自己注射器は患者さまが自ら使う注射器なので、それを包装するトレーには、患者さまが医療機関で受け取ってから使用するまでの間、注射器をしっかり守ることができる保護性能と、開封時の取り出しやすさを配慮した形状という、安全性と利便性の両方が必要不可欠です。加えて、医薬品の包装容器として、衛生的で清潔感のある外観や品質も求められます。

ヤンセンは、トレーの切り替えにおいて、「炭素排出量削減」と、「自己注射器用トレーとして相応しいパッケージ性能」そして「既存パッケージ製造ラインへの適用」という部分に重点を置いて、世界中のさまざまな製品・工法から比較検討を進めました。その結果、高い水準で要求事項を満たせる工法として評価されたのが、NISSHAのパルプ射出成形品Pulp-Injectionでした。

ヤンセンが評価したPulp-Injectionならではの特長

Pulp-Injectionは自由な形状再現性に薄さ・硬さを兼ね備えた工法です。

プラスチックと同等の形状再現性と強度があるため、紙ではできない立体形状に対応が可能です。細かいリブやフランジを設けることで、機能性があり、自由かつユーザーセンタード・デザイン(UCD=患者さまの利便性を考慮した設計)が再現できます。

また1mm前後の薄い肉厚ながらプラスチックのように硬く、輸送中の衝撃から製品を保護できるので、頑丈で軽いパッケージを作ることが可能です。

そして既存のパッケージラインへの適合性の高さも利点の1つです。外周側面のリブにより、スタッキングできるので従来のプラスチックトレーと同様に取り扱うことができます。

パルプ・デンプン・水などの天然素材を主原料としたPulp-Injectionは、紙でありながら紙粉が少なく、清潔感のある外観に仕上がります。欧州では使用後に紙としてCardboardへリサイクルできることが確認できています。

NISSHAのグローバルネットワークと豊富な知見を活かした製品開発

トレーの開発段階においては、ヤンセンの従来のプラスチックトレーを前提とした設計案に対し、NISSHAが持つパルプ成形品に関する知見を組み合わせていくことで、最適な製品設計に落とし込み、より良い製品づくりに両社で協力して取り組みました。

またトレーの脱プラスチックによる炭素排出量削減とともに、納品地に近いドイツの自社工場にも製造ラインを設置することで、輸送工程の炭素排出量削減に貢献する生産体制も整えました。

こうして数年間の開発期間を経て、現在、ヤンセンの自己注射器はPulp-Injectionでできた新しいトレーに包まれて、世界各国の患者さまの手元に届いています。

広がるPulp-Injectionの可能性

ヤンセンでは今回の成果を踏まえ、同社Webサイト*において「2025年までに、全ての自己注射器用プラットフォームのPulp-Injectionトレー化を目指している」とコメントしています。

*参照:ヤンセンのWebサイト

今後、グローバル市場において、自由で精密な形状設計ができ、薄くて硬い特長を持つPulp-Injectionへのニーズはさらに高まっていくと考えられます。

自己注射器用トレー以外にも器具と薬品が同梱されるコンビネーション製品など安全性や利便性が必要とされる幅広い製品にお使いいただけます。

詳しくはNISSHAサステナブル資材担当までお問い合わせください。