環境に配慮した軽量スプールを実現する新提案──釣糸からケーブルまで幅広い製品に対応するPaperFoam

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軽量スプール

紙とでんぷんを主原料とした紙成形技術「PaperFoam」を用いて、国内大手釣糸メーカー(株式会社ワイ・ジー・ケー様)向けにPEライン用スプールを試作しました。釣り具業界では環境配慮製品への期待が高まっています。本記事では、プラスチックスプールからPaperFoamスプールへと置き換えの検討が進む背景と、その機能性を確保するための設計ポイントについて紹介します。

背景:紙では実現できなかった環境配慮型スプール形状

釣り糸用スプールは、糸をリールに巻き取ってしまえばあとは廃棄される製品です。また、釣糸をリールに円滑に巻き取るためには、スプールの形状が安定していることが重要です。そのため、スプールには廃棄時の環境配慮と、形状を安定的に再現できる成形性の両立が求められます。
紙素材によるスプールは、強度や形状再現性、量産時の成形安定性といった点で課題があり、実用化は容易ではありませんでした。
こうした中で注目したのが、PaperFoamの特長である高い成形自由度です。PaperFoamは、従来の紙素材では難しかった立体形状や勘合を可能にし、スプールに必要なフランジ形状や軸部構造を安定して再現できる点が特長です。また、軽量であることから取り扱いや輸送面での利点も期待できます。
これらの特性により、紙素材では実現が難しかったスプール用途への適用可能性が見えてきたことから、PaperFoamを用いたPEライン用スプールの試作に取り組みました。

PaperFoamとは:軽量・高バイオマス・成形自由度が特長

PaperFoam

PaperFoamは紙とでんぷんを主原料とした成形材料で、バイオマスマーク85を取得しています。射出成形する際に金型に充填した材料を発泡処理するため、成形品の密度は約0.2 g/cm³と非常に軽量で、PPの約1/5の比重になります。堆肥化の認証も取得しており、欧州では紙としてリサイクルすることが可能です。
紙でありながら金型を使った成形が可能で、薄肉・細かな形状の再現と軽量化を同時に実現できる点が、スプール用途においても大きな特徴となります。

プラスチック比1/5の軽量化と輸送効率

釣糸スプール

今回PaperFoamで試作した釣糸スプールは外径87.6mm、厚み22.8mm、内径16mmで設計しました。試作したスプールの重量は7.4gで、従来のPPスプールの約40.4gと比較して1/5以下です。
軽量化は材料使用量の削減につながり、輸送時の積載効率向上やCO₂排出量の低減にも寄与します。この特長はPaperFoamならではの大きな利点と言えます。

展示会での反響

PaperFoamで試作した釣糸スプールは以下の展示会で紹介され、多くの来場者から
「とても軽い」「環境によさそう」「釣りとの相性が良い」
といった好評を得ました。

  • 釣りフェス2026 in Yokohama(2026年1月16〜18日)
  • フィッシングショーOSAKA 2026(2026年2月7〜8日)

軽さと紙の質感は、従来のスプールにはない印象を与えたようです。

長尺製品への広がり

軽量で環境配慮性が高いPaperFoamは、釣り具以外にも長尺コードなどの工業用スプールの素材としても適しています。また環境対応に課題を感じているさまざまな市場のニーズに応えるソリューションとして、スプール以外のパッケージ部材にも応用が可能です。

Paperfoam

PaperFoam(ペーパーフォーム)

軽さと柔らかさを兼ね備えたパルプ発泡成形品

  • 天然素材を主成分とした発泡成形品
  • 衝撃から製品を保護する高いクッション性
  • 複雑な形状の製品や複数の部品をしっかり固定
Paperfoamについて詳しくはこちら 資料ダウンロードはこちら

釣糸スプール試作での創意工夫
二分割構造で実現するフランジ構造

スプールは中筒の上下をツバ状の円盤(フランジ)で挟んだ形をしており、成形品の中央部が窪んでいます。このような形状の場合、プラスチック成形ではスライド構造の金型を使用します。中央が窪んだ成形品を金型から抜き取ることは困難ですが、スライド構造の金型を使えば、窪み箇所の金型が横方向に開くことにより成形品を抜き取ることができるのです。

フランジ構造

プラスチック成形では一般的なスライド構造ですが、PaperFoamの金型ではこの構造を採用することができず、抜き取りが困難な深いアンダーカット形状の成形ができませんでした。そのため、片方のフランジと中筒の中間部までで構成された、いわばスプールの半切物を2枚成形し、それらを反転させて組み合わせる構造を採用しました。

二分割構造

二つの製品を接着してフランジを形成する方式は金型や部材点数が増えやすい方式ですが、今回は2つの同じ形状の成形品を組み立てる二分割構造とすることで、コストと効率を両立しました。

4つのキー溝でシャフト連結と強度を確保

巻き取り時にはスプール中央のシャフトとの回転連結が必要なため、4か所のキー溝(Keyway)を配置しました。キー溝を増やすことで強度を上げることができますが、二部品を反転して組む構造上、溝の位置関係に制限があるため四か所が最適となりました。

4か所のキー溝(Keyway)

境界部の糸の噛み込み防止

二つのパーツを組み合わせるスプール構造では、接合部にわずかな隙間が生じることがあります。巻き取り時にここへ糸が入り込むと、糸の傷・巻きの乱れが発生します。そこで、上下の成形品が互いに噛み合う嵌合形状を設計し、糸が入り込まない構造としました。

糸が入り込まない構造に改善

金型側でエッジを立て、巻上がりの凹凸を抑制

スプール表面にR形状が残ると、PEラインの巻上がり面にわずかな凹凸が転写されてしまいます。そこで、金型でエッジを立てたシャープな境界線とする設計を採用しました。これにより、巻き取り後の糸表面が平滑になり、巻き品質を損なう要因を軽減しています。

シャープな境界線

釣糸スプールとしての想定用途と適用範囲

PEライン(5号150m)を想定
本試作品はPEライン0.2号の細いラインから5号まで巻けるサイズで設計しています(5号の場合150m)。幅やフランジ径を調整することで、太い糸や長尺仕様にも対応可能です。
巻替え→廃棄の単回使用を想定
PEラインがリールに巻き替えられた後、スプールはすぐに廃棄されるケースが大半です。
本スプールはこの運用に適した設計で、家庭では可燃ごみとして廃棄が可能です(自治体により異なる場合があります)。

まとめ

PaperFoamによるスプールは、環境配慮だけでなく、軽さや形状設計の工夫によって巻き取り品質を維持しつつ機能性を確保できる点が特長です。プラスチック製スプールの課題であった重量・環境負荷・素材感とは異なる新しい価値を提供します。
また、PaperFoam製のスプールは釣糸用のほかにもケーブルや金属ワイヤー、裁縫糸用などのさまざまな分野のスプールにも応用可能です。環境負荷を削減する紙製スプールについてのご相談はNISSHAまでご連絡ください。

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