化粧品でエコパッケージが選ばれる理由は?環境配慮の必要性と具体例

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化粧品でエコパッケージが選ばれる理由は?環境配慮の必要性と具体例

化粧品パッケージにおける環境配慮は、国際的な取り組みや消費者の意識の高まりを背景に、今や日常的に議論されるようになってきています。国際サミットでの海洋プラスチックごみによる新たな汚染のゼロ化への合意や、日本の国内法ではプラスチック資源循環促進法が施行されるなど、さまざまな取り組みが急速に進んでいる点にも注目が集まっています。

当記事では、化粧品業界がプラスチック使用量削減や使用する材料の見直しを進める背景に加え、具体的なエコパッケージの事例について解説します。化粧品のエコパッケージは、環境負荷低減だけでなく、商品やブランドの価値向上にも大きく貢献します。今後は現状より法規制が整備され、よりエコなパッケージを採用する必要性が高まると予想されるため、パッケージの素材にお悩みの方はぜひ参考にしてください。

化粧品パッケージに環境配慮が求められる背景

化粧品パッケージ

昨今、環境配慮の観点からパッケージを見直す動きが活発化しており、化粧品パッケージについても例外ではありません。まずは、化粧品パッケージに環境配慮が求められる理由や背景について解説します。

環境問題の解決が国際的な課題に

環境問題は世界が抱える問題であり、世界各国がともに改善に向けた取り組みを推進することが大きな課題です。

深刻な環境問題のひとつが、プラスチックなどのごみによる海洋汚染です。
2019年に開催されたG20大阪サミットでは、2050年までに海洋プラスチックごみによる新たな汚染ゼロを目指すことで合意されました。その後、2023年のG7広島サミットでは達成目標時期が10年前倒しされるなど、先延ばしにすることができない問題になっています。

出典:外務省「G20大阪サミット(結果概要)」

出典:外務省「G7広島サミット ― 開発分野における議論と成果」

また、プラスチックはごみによる汚染だけでなく、製造や焼却に大量のCO2排出が伴います。国連気候変動枠組条約(UNFCCC)では、温室効果ガスの大気中濃度を低減させ、地球温暖化抑止を目指すことが掲げられています。2023年に行われた国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、「2030年までの行動が決定的に重要であることを強調の上、2050年ネット・ゼロの達成、全温室効果ガスを対象とする経済全体の総量削減目標の設定及び2025年までの世界全体の排出量ピークアウトの必要性」が訴えられました。

引用:外務省「国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)結果概要」 / 引用日2025/01/14

プラスチック資源循環法の施行

日本では、2022年4月にプラスチック資源循環促進法(プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律)が施行されました。

プラスチック資源循環促進法は、プラスチックが使用されている製品の設計から廃棄にいたるまでのライフサイクル全体について、資源の循環を促進するための法律です。3R(リデュース・リユース・リサイクル)およびリニューアブル(再生素材や再生可能資源への切り替え)の原則に則って、資源の持続可能性の向上を目指しています。

出典:環境省「令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書 状況第2部第3章第4節 ライフサイクル全体での徹底的な資源循環」

プラスチック資源循環促進法に基づき制定された「プラスチック使用製品設計指針」では、「プラスチックの使用量の削減、部品の再使用、再生利用を容易にするためのプラスチック使用製品の設計又はその部品若しくは原材料の種類の工夫、プラスチック以外の素材への代替、再生プラスチックやバイオプラスチックの利用等の取組を促進することが重要」としています。

引用:プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律の普及啓発ページ「プラスチック使用製品設計指針と認定制度」 / 引用日2025/01/14

資源循環促進法の施行を受け、各業界のメーカーがプラスチック使用量削減に向けて舵を切っています

消費者ニーズの変化

エシカル消費という言葉に代表されるように、一般消費者の環境問題に対する関心も高まっています。その結果、環境にやさしい製品を選択する消費者も増えています。ナチュラルなイメージを訴求する化粧品ブランドにとっては、ブランドイメージをさらに高める機会と取れるかもしれません。

ボストン コンサルティング グループの2021年から2023年までの日本国内調査によると、環境負荷が低い製品を買いたいと考える人は67%という結果となりました。中でも10代の意識が最も高く、次いで60代、50代が高いという結果になり、世代を問わず消費者の中で環境負荷の低い買い物への関心が高いことがうかがえます。

出典:ボストン コンサルティング グループ「第7回サステナブルな社会の実現に関する消費者意識調査結果」

このことから、環境に配慮されているか否かは、消費者が製品・サービスを購入する際の判断基準の1つと言えます。また、環境保全の取り組みに積極的な企業はイメージを向上させやすい傾向にあります。消費者だけではなく投資家からの評価も向上しやすいほか、環境に配慮した商品に関する市場規模の拡大に伴ってビジネスチャンスの拡大も期待できます。

化粧品エコパッケージに使用される素材の種類

化粧品エコパッケージ例

エコパッケージに使用される素材には「バイオマスプラスチック」「再生PET樹脂」「パルプ」などがあります。以下では、それぞれの素材の概要や特徴、魅力などを紹介します。

バイオマスプラスチック

バイオマスプラスチックとは、サトウキビやトウモロコシなどの植物性原料から作られたプラスチックのことです。バイオマスプラスチックの中には、微生物の働きによって自然分解される種類もあり、海洋プラスチックごみ問題の解決に向けた手段の1つとして期待されています。

バイオマスプラスチックを焼却する際に排出されるCO2は、原料の植物(バイオマス)が生育する過程で吸収したCO2とバランスが取れることからカーボンニュートラルであると表現されます。そのため、従来のプラスチック製品に比べてCO2排出量を大幅に削減できる素材としても注目されています。

NISSHAでは、石油由来のプラスチックの削減を目指し、樹脂とバイオマスを混錬・成形した成形品「バイオコンポジットシリーズ」を開発しました。最大100%のバイオマス由来の原料に置き換えられる製品群で、耐久性の高さと天然素材ならではの美しい外観を両立させています。

Biocomposite-series

Biocomposite Series
バイオコンポジットシリーズ

バイオマス素材を有効活用した

植物由来の樹脂とバイオマス素材の複合材料を用いた射出成形品です。

植物由来プラスチック詳しくはこちら

再生PET樹脂

再生PET樹脂とは、使用済みの飲料用ペットボトルから作られた樹脂のことです。再生PET樹脂は石油由来のプラスチックと比べて見た目も強度も劣りません。透明色で作れば再びリサイクルが可能になるため、プラスチックごみ削減に直結するサステナブルな素材と言えます。

空になった飲料用ペットボトルをリサイクルするためには、内側をしっかりと洗浄し、キャップやラベルを剥がすなど適切な分別廃棄を行うことが大切です。リサイクルされたペットボトルは再生PET樹脂に生まれ変わり、繊維やシート、成形品などに使われます。

パルプ

パルプとは、紙の原料となる木質繊維のことです。パルプを水で溶かした懸濁液を金型に流し込み、抄き上げた紙製立体成形品をパルプモールドと呼びます。

金型を用い、さまざまな形状を再現できるパルプモールドはプラスチックトレーの代替品として注目されており、プラスチックにはない生分解性や通気・保水性、温かみのある質感を持つのが大きな特徴です。パルプモールドの主原料は紙の原料であるパルプなので、紙製品としてリサイクルすることが可能です

ほかにも、軽量・頑丈である点や、デザイン面での自由度の高さといったさまざまな強みがあります。NISSHAでは、パルプ材料を用いた製品群として「パルプシリーズ」を開発しました。化粧品をはじめ、医薬品・医療機器、産業機器、日用品など、幅広い分野のパッケージに活用されています。

Pulp-series

Pulp Series パルプシリーズ

パルプを主原料に紙の風合いを感じられる

パルプと多様な成形技術を
組み合わせた緩衝性・軽量・硬さなどの
特徴をもつ製品群です。

パルプ成形品について詳しくはこちら

【化粧品】エコパッケージの具体例

化粧品のエコパッケージに採用される手法・素材はブランドによって異なります。環境保全のために、バイオマスプラスチックをはじめとする植物由来のプラスチック容器を導入しているブランドも少なくありません。取り扱うすべての商品に環境配慮素材を使用したパッケージを展開するブランドもあり、環境負荷軽減に向けた取り組みが進んでいます。

また、できるだけ長期間にわたり同じ容器を使い続けることも、新たなプラスチック使用量を削減する上で有効な手段です。そこで、リフィル仕様にした容器を採用しているメーカーも多くあります。NISSHAではリフィル用のパッケージからもプラスチックを減らせる紙のリフィルパッケージをご提案しています。

紙のリフィルパッケージ

また、エコパッケージは環境への配慮だけではなく、製品・ブランドイメージを消費者に伝える重要な手段にもなります。NISSHAが保有する成形技術を用いることで、紙が持つオーガニックな印象や滑らかで美しい質感を、マスカラパッケージやアイシャドウケースなど、さまざまな形に再現することができます

化粧品 アイシャドウケース

化粧品のエコパッケージならNISSHAにお任せください

化粧品パッケージにも環境配慮が求められる中、NISSHAではただ素材をプラスチックから紙に変えるだけでなく、消費者にとっての使い心地やデザイン性を追求したパッケージを製作することが可能です。工法の特性を踏まえ、用途に合わせたパッケージの形状を提案することもできますので、これからデザインを検討される方はもちろん、具体的なことはまだ決まっていない方も、お気軽にご相談ください。

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