欧州の環境規制の概要とは? 知っておきたい基礎知識

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欧州の環境規制の概要とは? 知っておきたい基礎知識

世界的に環境の取り組みが進んでいる欧州、特にEU(欧州連合)では、さまざまな環境規制が整備されています。廃棄物関連・有害物質関連・CO2関連と多岐にわたる厳格な規制は、日本企業にとっても無関係ではありません。うっかり規制対象にならないためにも、基本的な情報を把握しておく必要があります。

この記事では、EU地域への輸出事業者に関係の深い環境規制の概要や、注意すべきポイントなどを解説します。

欧州の環境への取り組み

欧州は、世界に先駆けて、環境を保護する取り組みを進めています。そして、欧州の中でも、特に環境負荷の抑制に対する意識が高く厳格な規制を導入しているのが、EU(欧州連合)です。

EUが環境保護や環境規制に力を入れる背景には、市民レベルでの環境意識の高さと環境汚染への対応策を徹底させる文化の浸透が挙げられます。また、EUでは環境政党が支持を集めており、規制の整備が進みやすい環境が整っていることも一因でしょう。

さらに、EU域内における技術革新や生産能力の拡大がネットゼロ産業の集積地を形成し、世界的に競争が激しくなるネットゼロ産業の競争力強化に繋がると考えられています。

環境規制はEU域内の企業はもちろんのこと、日本からEUに輸出される製品も対象です。そのため、日本企業であっても規制の概要について理解しておく必要があります。次の章では、代表的なEUの環境規制をみていきましょう。

欧州の環境への取り組み

EUの環境規制の概要

ここからは廃棄物、使用材料・物質、事業活動などを対象としたEUにおける環境規制について紹介します。規制の一覧は以下の通りです。

廃棄物関連
  • ELV指令
  • PPWD(包装廃棄物指令)
  • WEEE指令
  • EuP指令(ErP指令)
有害物質関連
  • RoHS指令
  • REACH規制
CO2関連

EU ETS

まず、廃棄物関連の規制で把握しておきたいのが、次の4つです。

ELV指令

使用済み自動車から発生する廃棄物の抑制を目的とした規制です。パーツへの有害物質使用禁止や、各車種の循環性戦略の作成義務付けなど、設計段階から解体や再利用をしやすくするためのルールが整備されています。
また、解体時に取り除く部品の指定や、目標リサイクル率・再使用率・リカバリーなども、定められています。

PPWD(包装廃棄物指令)

包装廃棄物の削減やリサイクルなどを目的とする規制です。使用済み包装の再利用や、リカバリー、リサイクルなどが定められています。
さらに実効性を高めるため、この指令を格上げした包装・包装廃棄物規則案が、2022年に欧州委員会によって提案され、2024年4月には暫定合意に至りました。暫定合意に至った内容のポイントを、次章で解説します。

WEEE指令

使用済みの電気・電子機器が廃棄される量の削減を目的とする指令です。使用済み電気・電子機器の回収・リサイクル・再利用や、その費用負担などについて、定めがあります。

また、電気・電子機器の生産者には、管轄する当局への登録や、再利用・解体などに配慮した製品設計なども必要です。

EuP指令(ErP指令)

WEEE指令やこのあと紹介するRoHS指令を補完する指令です。エネルギー使用製品の環境配慮設計に関する枠組みについて定めています。

EUの環境規制の概要

次に、有害物質関連の規制2つを確認しておきましょう。

RoHS指令

電気・電子機器を対象とする、特定有害物質の使用を制限する指令です。電気・電子機器の廃棄物処分に伴う健康被害や環境汚染の抑制を目的にしています。

特定有害物質には、鉛・水銀・カドミウム・六価クロム・ポリ臭化ビフェニル・ポリ臭化ジフェニルエーテルやフタル酸エステル4物質など、計10種類が指定されています。

REACH規則

化学物質の使用や管理をする企業を対象とする規則です。1年間に1トン以上の化学物質を製造・輸入する場合は、登録が必要です。そのほかに、評価や認可、認可が下りないときの制限などが、定められています。

最後に、CO2排出量関連の規制を1つ、確認しておきましょう。

EU ETS

CO2排出量を削減し、京都議定書の目標を達成する目的で定められた温室効果ガスの排出量取引制度です。各企業の排出枠を決め、不足や余剰を取引できます。

EU向けに包装材の輸出販売や現地生産を行う日本企業が押さえるべきポイント

PPWR(包装・包装廃棄物規則)とは?

包装資材関連でいま最も注目されている規制がPPWR(包装・包装廃棄物規則)です。ここでは前章で紹介したPPWD(包装廃棄物指令)が格上げされたPPWR(包装・包装廃棄物規則)について詳しく解説します。

PPWR(包装・包装廃棄物法規則)とは

PPWRとは、包装廃棄物削減をより強力に推し進めるために、欧州委員会が提案し、2024年4月に暫定合意に至った規制です。それまでは各国で独自に実施していた包装廃棄物対策の規制を統合する目的とともに包装廃棄物の削減が思うように進まない状況や海洋プラスチック問題の深刻化などがPPWRの提案の背景にあります。
PPWRが義務付ける主な内容は包装廃棄物の削減、包装材のリサイクル、再利用の促進の3つです。具体的には下記のような数値目標を掲げています。

包装廃棄物の削減

EU加盟国は2018年を基準に1人あたり下記の包装廃棄量削減を義務付け

【2030年まで】
5%削減
【2035年まで】
10%削減
【2040年まで】
15%削減
包装材のリサイクル

包装資材の原材料に占めるリサイクル可能な素材の重量比に応じてランク付けを実施

【リサイクル可能性95%以上】
ランクA
【リサイクル可能性80%以上】
ランクB
【リサイクル可能性70%以上】
ランクC
【リサイクル可能性70%未満】
2030年以降販売不可
再利用の促進
  • EUで流通させる包装をできるだけリユース可能にすることを義務付け
  • リユース化の数値目標例
【2030年までに】
アルコール飲料の容器などの10%以上
【2040年までに】
アルコール飲料の容器などの25%以上
食品持ち帰り用容器の40%以上

EU向けに包装材の輸出販売や現地生産を行う日本企業が押さえるべきポイント

PPWRは包装材を「EU向けに輸出販売している」「現地生産している」といった日本企業も、規制対象です。特に、拡大生産者責任・資源廃棄物の回収・資源廃棄物の選別と精製・包装廃棄物の再生の4点に、注意する必要があります。

各項目の概要は、下記の通りです。

拡大生産者責任
  • 包装関係の製品をEU市場へ輸出販売する企業は、すべて廃棄物管理システムへの登録などを義務付け
  • 使用済み包装材の回収や再生などの費用負担が必要
資源廃棄物の回収
  • 使用済み包装廃棄物の回収を義務付け
  • 回収は、EUが指定する業者と契約して実施
資源廃棄物の選別と精製
  • 使用済み包装材の素材ごとの選別を義務付け
  • 選別は、EUが指定する業者と契約して実施
包装廃棄物の再生
  • 包装廃棄物のリサイクルを義務付け
  • 再生は、EUが指定する業者と契約して実施

費用負担に加えて、回収・選別・再生まで義務付けられるなど広い責任範囲と大きな負担がかかるため、早期に対策の検討を始める必要があります。

EU向けに包装材の輸出販売や現地生産を行う日本企業が押さえるべきポイント

まとめ

EUの環境規制は、廃棄物関連・有害物質関連・CO2関連と多岐にわたります。同規制は、EU向けに輸出などを行う日本企業も対象です。特にPPWRは負担の大きい規制であるため、正しい理解と早い段階からの準備が求められます。

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