ものづくりの未来を変える脱プラ素材とは? 医薬品・医療機器業界のプラスチック成形品をサステナブルに

  • デザイン/設計
  • パルプ
  • プラスチックごみ問題
  • 射出成形
  • 環境対応
  • 脱プラ
  • 規制
プランジャーロッド
画像はイメージです

パルプとでんぷんを主原料とした紙成形技術「Pulp-Injection(パルプインジェクション)」を用いて、NISSHAでは医薬品・医療機器業界向けに「プランジャーロッド(注射器の中身を押し出す軸部分)」を試作しました。医薬品・医療機器業界はディスポーザブル(使い捨て)製品による産業廃棄物の課題を抱えています。本記事では、脱プラ素材が注目されている背景と、医薬品・医療機器業界でのパルプシリーズの可能性について紹介します。

なぜ今脱プラ素材が求められるのか?

脱プラスチック素材―いわゆる「脱プラ素材」―は近年非常に高い関心を集めており、その背景には、プラスチックが石油を主原料としている点があります。

石油の可採年数については諸説ありますが、将来的な供給不安や価格変動のリスクが指摘されています。また、プラスチックをはじめ石油由来の素材は、地下の炭素資源を地上へ掘り出して用いることから、地上のCO2を増やしてしまう環境面での問題も抱えており、近年はさまざまな産業で脱プラへの関心が高まってきました。

そんな中、近年日本の石油の主な供給元である中東エリアの情勢が不安定になり、石油価格が急騰。今や脱プラは「いずれ取り組まなければならない将来的な課題」から、原材料の価格高騰や安定調達に対するリスクヘッジ対策として「すぐにでも取り組むべき喫緊の課題」となりつつあります。

脱プラとは「プラスチック以外であれば何でもよい」というわけではありません。喫緊の課題だからとコスト面だけを見て判断するのではなく、環境負荷や調達条件なども含めて総合的に検討しないと、期待した効果が得られない可能性があります。

次世代の脱プラ素材「パルプモールド」とは

パルプモールド

こうした背景から注目されているのが、次世代の脱プラ素材「パルプモールド」です。NISSHAでは「パルプモールディング」という製品名で取り扱っています。
パルプモールドとは、水に溶かした紙の原料(パルプ)を型で成形する技術で作られた、用途や設計条件によってはプラスチックの代替として検討できる素材です。その仕組みを理解するために、まずはバイオマス素材の特徴から見ていきましょう。

プラスチックなど石油由来の素材が地上のCO2を増やしてしまうのに対し、紙など植物由来の原料(バイオマス)による素材は、光合成によって地上のCO2を取り込む植物を原料としているため、ライフサイクル全体でのCO2排出の抑制につながる可能性があります。これが「カーボンニュートラル」であり、バイオマス素材の大きな特徴です。

バイオマス原料によるプラスチック製の素材は、微生物などによって分解されますが、自然に還る「生分解性」の有無によって、「生分解性プラスチック」と「バイオマスプラスチック」に大きく分けられます。紙を原料とする素材の多くは生分解性を持ち、自然に還ることができる、より環境にやさしい素材となっています。

製造業などではこうした素材を用いたり、従来のプラスチックと組み合わせたりして、プラスチック使用量を抑えるさまざまなパッケージが開発され、用途によって使い分けられるようになってきています。

例えば柔らかい「軟包装」と呼ばれるもののひとつ、チョコレート菓子の袋などは、従来外袋も個包装もプラスチック製がほとんどを占めていましたが、最近は紙製の外袋も登場しています。

軟包装に対し、硬さで中身を守るのが「硬質包装」です。繊細なお菓子を入れるトレーなど、入れるものの形に沿うよう成形して作られています。こちらも、従来はプラスチック製がほとんどを占めていましたが、紙や生分解性プラスチックによる製品が登場してきています。この「強度を持った立体的な紙製包装材」が、NISSHAのecosense moldingの「パルプシリーズ」です。

NISSHAの「Pulp-Molding(パルプモールディング)」は、一般的に「パルプモールド」と呼ばれる製品のひとつ。水に溶かしたパルプを網状の型で吸い上げてまとわりつかせることで成形し、乾燥させて作られています。

そして、このパルプをさらに高い強度で成形できるのが「Pulp-Injection(パルプインジェクション)」。原料の50%以上がパルプでありながら、でんぷんを活用して固めることで従来のプラスチックに近い形状や硬さを実現できます。

Pulp-Injection

Pulp-Injection(パルプインジェクション)

薄さと硬さを両立する射出成形品

  • プラスチックと同等の形状再現性
  • 薄肉かつ高強度
  • 寸法と厚みの安定性
Pulp-Injectionについて詳しくはこちら 資料ダウンロードはこちら

パルプ素材を使用した脱プラ工法で再現する医療向けコンポーネント

プラスチック製品を多用してきた医薬品・医療機器業界においても、年々サステナビリティへの関心が高まり、脱プラスチックへの動きが見られます。そして前述の通り、「すぐにでも取り組むべき喫緊の課題」となりつつあることも、他業界と変わりません。

NISSHAも自己注射に用いられる注射器用のトレーなど、従来プラスチックでまかなってきた製品のパルプ成形製品への移行を多く承っています。スタッキングできる形状再現性、自動生産ラインでロボットが扱いやすい強度、ユーザーが使いやすい設計など、「プラスチック以外では難しい」とされてきた条件を、パルプシリーズとNISSHAの細やかな提案、試行錯誤の蓄積が克服してきたのです。

医薬品 自己注射器用トレー

例えば「Pulp-Injection(パルプインジェクション)」を用いた自己注射器のキャップ。Pulp-Injectionは主に「射出成形(型へ流し込み、取り出す)」工法で成形されますが、細長い筒状の蓋は内側の凹凸形状も相まって成形の難易度の高い取り組みとなりました。

医薬品 注射器のキャップ

こうした経験を踏まえながら、2025年にはPulp-Injectionを用いた「プランジャーロッド(注射器の中身を押し出す軸部分)」の試作を実施。試作品はまさに「プラスチック以外では難しい」と思われていた押し込む動作に耐える強度を見せ、医薬品・医療機器業界のお客さまにも「紙でここまで実現できるのですね」との声もいただき、驚きと高い評価を得られました。

プランジャーロッド
画像はイメージです

脱プラ素材でサステナブルをリードするNISSHAの展望

NISSHAにとって、プランジャーロッドの試作はひとつの契機となるもの。今後はパルプシリーズのさらなる可能性を探っていきたいと考えています。

医薬品・医療機器業界は注射器をはじめディスポーザブル(使い捨て)製品が多い業界のひとつです。使用後は廃棄物として処理されるケースが多いことを踏まえ、捨てても自然環境の負担となりにくい、サステナブルな製品を選択していくことは今後、重要な要素となるでしょう。そしてNISSHAのパルプシリーズは、医薬品・医療機器業界においてサステナブル製品の選択肢を広げ、環境への貢献を目指します。

そして今も社内外を問わず、医薬品にとどまらないさまざまなアイデアを集める試みが行われています。「油汚れが激しいキッチン用品をパルプシリーズでディスポーザブル化できないか」、「釣り糸の保管や販売に用いられるスプール(糸巻き)をパルプシリーズに置き換えて、海洋汚染を防げないか」など、分野を問わず、多様な発想が生まれています。「パルプシリーズでこんなことはできないか」というアイデアがあれば、ぜひNISSHAにお声をお聞かせください。

Pulp-series

Pulp Series パルプシリーズ

パルプを主原料に紙の風合いを感じられる

パルプと多様な成形技術を
組み合わせた緩衝性・軽量・硬さなどの
特徴をもつ製品群です。

パルプ成形品について詳しくはこちら

関連記事