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パッケージをユニバーサルデザインにするには?UDの必要性と事例も
2025/06/19
- サステナブルパッケージ
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製品の価値を最大限に伝える上で欠かせないのが「パッケージ」です。しかし、開けにくさや情報の読みにくさなど、消費者が不便を感じる瞬間は少なくありません。特に高齢者や視覚・手先に不自由のある人、外国人など、ユーザーの多様化が進む今、誰もが使いやすいユニバーサルデザインの導入は避けて通れない課題のひとつです。
この記事では、化粧品・医療用品・医薬品・電化製品などのメーカーで、パッケージの企画・開発などに関わる方々に向けて、ユニバーサルデザインの基礎から導入のポイント、メリット、成功事例までを分かりやすく説明します。今後のパッケージ製作やパッケージリニューアルに生かせる視点を得たい方は、ぜひ最後までご覧ください。
ユニバーサルデザインとは?
ユニバーサルデザインとは、年齢や性別、国籍、障がいの有無にかかわらず、すべての人にとって使いやすいように考えられたデザインのことです。製品の形状や表示だけでなく、構造や仕組み、機能、サービスも含まれます。ユニバーサルデザインの考え方は、アメリカの建築家ロナルド・メイス教授により1980年代に広められたと言われています。
バリアフリーが特定の人への対応であるのに対し、ユニバーサルデザインは最初から誰にとっても使いやすいことを目指す点が特徴です。現在では日本でも建築物や公共空間、サービス設計など、あらゆる分野に取り入れられています。
ユニバーサルデザインの7原則
ユニバーサルデザインには、利用者に配慮した設計を行うための「7原則」があります。提唱者であるロナルド・メイス教授らが、建築家や技術者と協力してまとめました。
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- 【公平性】誰でも同じように使える
- 例:段差のないスロープ、自動ドア
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- 【自由性】使い方を選べる
- 例:多目的トイレ、高さ違いのボタンがあるエレベーター
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- 【単純性】使い方が直感的で分かりやすい
- 例:形状で見分けられるシャンプーとリンスのボトル
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- 【明確性】情報が誰にでも伝わる
- 例:ピクトグラム、多言語表示の案内板
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- 【安全性】誤操作や事故を防ぐ
- 例:開けると止まる電子レンジ
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- 【持続性】無理なく快適に使える
- 例:センサー式の蛇口、軽く押せるスイッチ
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- 【空間性】誰もが使える広さを確保する
- 例:幅の広い改札、優先駐車スペース
ユニバーサルデザインを実現する上ですべてを満たす必要はありませんが、多様な人が快適に利用できるよう配慮するための基本的な考え方として重視されています。
パッケージにユニバーサルデザインが求められる理由
日本では少子高齢化や国際化が進み、年齢や性別、身体的特性、文化背景の異なる多様な人々がともに暮らしています。「目が見えづらい」「手が動かしづらい」「日本語が読めない」など、人々の抱える事情はさまざまです。こうした社会の変化に対応するため、内閣府はユニバーサル社会実現推進法を制定し、誰もが暮らしやすい社会づくりを目指しており、パッケージそのもののユニバーサルデザイン化もその一環です。
パッケージは日常的に使うものであるため、視力や聴力、身体能力などに差がある人でも不便を感じずに扱える容器包装が求められています。快適に使用できるパッケージの需要は年々高まっており、特定の人のためではなく、誰にとっても使いやすいデザインにすることが、これからのパッケージづくりに必要です。
ユニバーサルデザインのパッケージとSDGsの関係
ユニバーサルデザインのパッケージは、SDGsの目指す「誰一人取り残さない社会」の実現に貢献する取り組みのひとつです。SDGsでは、性別や障がい、年齢、国籍などにかかわらず、誰もが暮らしやすい社会を実現することが求められており、ユニバーサルデザインはその理念と強く重なる部分があります。ユニバーサルデザインと関係性のある目標は「3.すべての人に健康と福祉を」「10.人や国の不平等をなくそう」などが挙げられます。
視覚や手の動きに不自由さを感じる人、外国人など、あらゆる使用者に配慮したパッケージは、すべての人が安心して商品を利用できる環境づくりにつながります。製品の設計段階から多様な視点を取り入れることは、社会的な課題解決と企業の持続的な成長の両立にもつながるため、SDGsの具体的な一歩として注目されています。
パッケージをユニバーサルデザインにするメリット
パッケージにユニバーサルデザインを取り入れることは、企業にとって多くのメリットがあります。まず、使いやすさが向上して幅広い年齢層やさまざまな背景を持つ人々に製品の魅力が伝わりやすくなり、新たな顧客層の獲得や売上アップが期待できます。また、誤った使い方による事故やクレームを減らすことで、企業のリスク軽減にもつながります。
さらに、すべての人に配慮したものづくりは、企業の社会的責任を果たす姿勢として好印象を与え、ブランドイメージの向上にも寄与します。パッケージという日常的に接する部分にこそユニバーサルデザインを導入することで、企業価値や顧客満足度を高め、長期的な信頼と競争力を得られる可能性があります。
ユニバーサルデザインのパッケージにするポイント

ユニバーサルデザインの考え方をパッケージに取り入れるには、使う人の多様な立場に配慮することが大切です。ここでは「ユニバーサルデザインの7原則」に沿って、パッケージの加工に取り入れるべきポイントを紹介します。
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- 公平に使えること(公平性)
- 誰でも同じように扱えることが基本です。たとえば、ラベルに点字を入れる、音や感触で開封を知らせるなど、視覚や聴覚に配慮した工夫が求められます。
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- 使い方に自由度があること(自由性)
- 左利き・右利きのどちらでも使いやすい開け口や、携帯しやすい小分け包装など、使い方に選択肢を持たせることで、より多くの人にとって便利になります。
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- 簡単で分かりやすいこと(単純性)
- UDフォントなどの見やすい文字を使用したり、ピクトグラムやイラストで中身を直感的に理解できるようにしたりすることが重要です。多言語表記も有効です。
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- 必要な情報がすぐ伝わること(明確性)
- 色の見え方が人によって違っても区別しやすい配色、重要な情報を目立たせる配置にすることで、商品情報を正確に伝えられます。背景色と文字色のコントラストにも注意しましょう。
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- ミスやケガを防げること(安全性)
- 開け口に鋭利な部分を作らないようにする、熱が伝わりにくい素材を使うなど、安全に配慮した設計が求められます。誤使用を防ぐ工夫もポイントです。
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- 無理のない動作で使えること(持続性)
- 軽い力で開けられる留め具や、道具を使わずに開封できる構造など、子どもや高齢者にも負担の少ない設計が求められます。箱の畳みやすさも重要な要素です。
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- 使いやすいスペースがあること(空間性)
- 持ちやすい取っ手の形状や、手のサイズを問わず扱いやすい構造など、体格や動作に関係なく使える工夫が必要です。
上記の工夫を取り入れることで、多くの人にとって「使いやすい」と感じられるパッケージになります。自社で難しい場合は、実績のある専門会社と連携するのもひとつの手段です。
ユニバーサルデザインのパッケージの例
ユニバーサルデザインを取り入れた商品パッケージには、さまざまな工夫が施されています。たとえば、左右どちらからでも開けやすいチャック付きパウチは、利き手を問わず誰でも開封できます。医薬品パッケージでは、開封部が触って分かる設計や、内側に大きな文字で用法を表示する構造、スマートフォンで読み取れる多言語対応の音声コードを取り入れる例もあります。
そのほかにも、色と番号の組み合わせで製品を識別しやすくした漢方薬の包材や、音で開閉が分かる容器、ストラップで持ち運びしやすい消毒液容器など、使いやすさと安全性を両立した方法が多く見られます。これらの配慮が、年齢や障がい、言語の違いを超えて、誰にとっても扱いやすいパッケージデザインを実現しています。
ユニバーサルデザインのパッケージならNISSHAにお任せください
ユニバーサルデザイン仕様のパッケージは、誰にとっても使いやすく、安全で分かりやすい製品づくりに欠かせない要素です。NISSHAでは、パッケージの形を自由にデザインできるため、手になじみやすく扱いやすい形状の実現が可能です。さらに、紙との分別が不要でそのまま一緒に廃棄できることも、環境配慮と利便性の両立につながります。多様性を踏まえたパッケージの改善やユニバーサルデザインの導入をご検討中の方は、ぜひ一度NISSHAまでお問い合わせください。

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