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脱プラを実現するために何ができるか?企業の取り組みを紹介
2024/12/16
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プラスチック製品の使用削減が急務となる中、多くの企業が脱プラスチックに向けた取り組みを模索しています。
本記事では、包装・容器の代替素材への切り替え、リサイクルシステムの構築、量り売りモデルの導入など、さまざまな企業の取り組みを紹介します。
また、代替素材の性能向上や回収システムの効率化など、今後の課題についても解説します。
目次
なぜ脱プラスチックが必要なのか
プラスチックを使うことによる環境への影響
プラスチックの過剰使用は、深刻な環境問題を引き起こしています。世界では年間約800万トンの廃プラスチックが発生し、その多くが適切に処理されずに海洋に流出しています。
海洋プラスチック汚染は、海洋生態系に甚大な影響を及ぼしています。プラスチックごみを誤飲してしまうことにより、窒息や栄養不足を引き起こし、多くの海洋生物が死に追いやられているのです。また、プラスチックが分解される過程で発生するマイクロプラスチックは、海洋生物だけでなく食物連鎖を通じて人体にも蓄積される可能性が指摘されています。
さらに、プラスチック製造時に発生する温室効果ガスも無視できません。石油からプラスチックを生産する過程自体が地球温暖化の一因となっており、気候変動対策の観点からも脱プラスチックの必要性が高まっています。
日本における廃プラスチック処理の課題
日本の廃プラスチック処理には、いくつかの課題があります。第一に、リサイクル率の低さが挙げられます。日本のプラスチックリサイクル率は約85%(2017年)と高いように見えますが、そのうち約60%が「サーマルリサイクル」であり、原材料として再利用される「マテリアルリサイクル」の割合は低いのが現状です。
第二に、廃プラスチックの輸出依存の問題があります。日本は長年、廃プラスチックの多くを中国に輸出していましたが、2018年に中国が輸入を禁止したことで、国内処理の必要性が急速に高まりました。これにより、国内のリサイクル施設の不足や処理コストの上昇といった新たな課題が浮上しています。
第三に、分別回収システムの課題があります。日本では自治体ごとに分別ルールが異なり、消費者の混乱を招いています。また、複合素材の製品や汚れたプラスチックの処理が難しいという技術的な課題も存在します。これらの問題を解決するためには、製品設計段階からリサイクルを考慮した取り組みや、効率的な回収・分別システムの構築が必要です。
脱プラスチックの取り組みは、このような廃プラスチック処理の課題解決策としても、重要性が高まっています。
企業の脱プラスチック取り組み事例
企業の脱プラスチックへの取り組みは、環境保護や持続可能な事業運営の観点から注目されており、さまざまな業界で進展しています。
包装・容器の代替材料への転換
多くの企業が、従来のプラスチック製包装・容器を環境負荷の低い代替材料に転換する取り組みを進めています。例えば、ある玩具メーカーは、製品の包装に使用していたビニール製の内袋を、FSC認証を取得した紙袋に置き換える計画を発表しました。
また、大手飲料メーカーでは、ペットボトルの一部を植物由来素材に切り替えたり、紙パック容器を採用したりする動きが広がっています。食品業界でも、プラスチック製トレーを紙製やバイオマス素材に変更する取り組みが進んでいます。
これらの取り組みにより、石油由来プラスチックの使用量削減と、持続可能な素材への移行が進んでいます。ただし、代替材料の耐久性や機能性の確保、コスト面での課題も残されており、継続的な技術開発と実証実験が行われています。
量り売りモデルの導入
プラスチック容器の使用を抑制する新たな販売方式として、量り売りモデルの導入が進んでいます。ある大手コンビニエンスストアチェーンでは、一部店舗でハンドソープやシャンプーなどの量り売りを開始しました。消費者はリサイクル原料から作られた容器を選び、必要な量だけ購入することができます。
また、食品スーパーでも、穀物や乾物、調味料などの量り売りコーナーを設置する動きが広がっています。これらの取り組みは、不要な包装材の削減だけでなく、食品ロスの削減にも寄与しています。
量り売りモデルは、包装の脱プラスチック、ごみ発生量の削減、消費者の環境意識向上のすべてを叶える取り組みと言えます。ただし、衛生管理や商品補充の手間など、運営面での課題もあり、これらを解決しながら普及を図ることが求められています。
バイオマスプラスチックの開発と利用
石油由来プラスチックの代替として、バイオマスプラスチックの開発と利用が進んでいます。ある大手電機メーカーと食品企業、IT企業の3社が連携し、微細藻類を原料としたバイオマスプラスチックの開発・推進を目的としたコンソーシアムを設立しました。
このバイオマスプラスチックは、再生可能な生物資源を原料とするため、焼却してもカーボンニュートラルとなる利点があります。また、食品包装分野では、トウモロコシやサトウキビを原料とするバイオマスプラスチックフィルムの使用が増えています。
バイオマスプラスチックの開発は、石油依存からの脱却と温室効果ガス排出削減に貢献する重要な取り組みです。しかし、生産コストの低減や物性の向上、食料との競合回避など、克服すべき課題も多く、継続的な研究開発が求められています。
プラスチック使用削減のための独自ガイドライン設定
多くの企業が、プラスチック使用量削減のための独自ガイドラインを設定し、全社的な取り組みを推進しています。ある大手化粧品メーカーでは、2025年までに包装の75~100%をリサイクル可能・リサイクル済み・再回収可能なものにするという目標を掲げています。
また、大手小売チェーンでは、店舗で使用する使い捨てプラスチック製品の全廃や、プライベートブランド商品のパッケージにおけるプラスチック使用量の段階的削減などを定めたガイドラインを策定しています。
これらのガイドラインは、企業全体で一貫した脱プラスチック化を進める上で重要な役割を果たしています。同時に、サプライヤーや取引先への働きかけにも活用され、業界全体のプラスチック削減を促進する効果も期待されています。
脱プラスチックに向けた課題と展望
脱プラスチックは環境保護と持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みです。しかし、その実現には様々な課題があり、多角的なアプローチが必要とされています。
代替材料の性能と経済性の向上
プラスチックの代替材料開発は、脱プラスチックの重要な施策の一つです。現在、紙やバイオマスプラスチックなどの代替材料が注目されていますが、これらの材料にはまだ課題が残されています。例えば、耐久性や強度、コストなどが挙げられます。
紙製包装は環境負荷が低い反面、湿気に弱く、長期間の保護に懸念があります。一方、バイオマスプラスチックは比較的、従来のプラスチックに近い性能を持ちますが、生産コストが高く、大規模な普及には至っていません。これらの課題を克服するため、素材メーカーや研究機関では新たな代替材料の開発が進められています。
例えば、セルロースナノファイバーを用いた高強度・高機能な特殊紙包装や、海藻由来のバイオプラスチックの研究が進んでいます。これらの新しい材料は、従来のプラスチックに近い性能を持ちつつ、環境負荷を大幅に低減できる可能性があります。また、生産技術の向上によるコスト削減も期待されています。
消費者の意識改革と行動変容の促進
脱プラスチックを推進する上で、消費者の意識改革と行動変容は不可欠です。環境問題に対する理解を深め、日常生活での具体的な行動につなげることが重要です。そのために、様々な啓発活動や教育プログラムが実施されています。
例えば、学校教育の場では、プラスチックごみの環境への影響や適切な分別方法について学ぶ機会が増えています。また、企業や自治体による環境イベントの開催、SNSを活用した情報発信なども活発に行われています。これらの活動を通じて、消費者のエコ意識が徐々に高まりつつあります。
さらに、具体的な行動変容を促すための仕組みづくりも進んでいます。例えば、スーパーや小売店におけるマイバッグ持参者へのポイント付与、リユース容器の利用促進、量り売りシステムの導入などが挙げられます。これらの取り組みにより、環境に配慮した消費行動が日常的に行われるようになることが期待されています。
法規制と企業の自主的取り組みのバランス
脱プラスチックを効果的に進めるためには、法規制と企業の自主的取り組みのバランスが重要です。過度な規制は企業活動を萎縮させる可能性がある一方、自主的取り組みのみでは十分な効果が得られない可能性があります。そのため、適切な政策誘導と企業の創意工夫を促す環境づくりが求められています。
日本では2022年4月に「プラスチック資源循環促進法」が施行され、使い捨てプラスチック製品の使用削減やリサイクルの促進が義務付けられました。この法律は、企業に対して具体的な削減目標を設定し、その達成に向けた取り組みを求めています。一方で、削減方法や代替素材の選択については、各企業の判断に委ねられている部分も多く、イノベーションの余地が残されています。
さらに、業界団体による自主的なガイドラインの策定や、企業間連携によるリサイクルシステムの構築なども進んでいます。これらの取り組みは、法規制を補完し、より効果的な脱プラスチック化を実現する上で重要な役割を果たしています。今後は、法規制と自主的取り組みの相乗効果を最大化するための仕組みづくりが求められています。
まとめ
脱プラスチックは、環境保護と持続可能な社会の実現に向けた重要な取り組みです。本記事では、包装・容器の代替材料への転換、リサイクルシステムの構築、量り売りモデルの導入など、様々な企業の取り組みを紹介しました。
一方で、代替素材の性能向上や回収システムの効率化など、克服すべき課題も多く残されています。企業は、法規制と自主的取り組みのバランスを取りながら、継続的なイノベーションと消費者の意識改革を促進することが求められています。脱プラスチックは、環境負荷の低減と企業価値の向上を両立させる重要な経営課題として、今後さらに注目されるでしょう。
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