欧州のプラスチック規制はどうなっている? 最新状況を解説!

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欧州のプラスチック規制はどうなっている? 最新状況を解説!

近年、海洋プラスチック問題や地球温暖化などの深刻化を受け、その一因であるプラスチックごみを減らすべく、国際的に脱プラスチックの取り組みが進められています。とりわけ、環境先進国である欧州では、多岐にわたるプラスチック規制が実施されており、欧州と取引のある事業者も規制の対象となる場合があるため、注意が必要です。

そこで今回の記事では、欧州の中でもEU(欧州連合)を中心に、プラスチック規制の全体像や最新の動向といった、欧州へ輸出などを行う際に把握しておくべきポイントを解説します。記事の後半では、欧州のプラスチック規制に対応できる梱包材と、その特徴についてご紹介します。

欧州のプラスチック規制の概要

欧州のプラスチック規制は、「ライフサイクル全体において持続可能な利用を推進する」という政策の実現を主な目的として、整備されています。ここでは、その全体像と主な指令や取り組みについて、確認しておきましょう。

欧州におけるプラスチック規制の全体像

まずは、欧州のプラスチック規制について、主にEUの取り組みの全体像を解説します。なお、現在のEU加盟国は、下記の通りです。

※EU加盟国 (2024年6月23日現在)
アイルランド・イタリア・エストニア・オーストリア・オランダ・キプロス・ギリシャ・クロアチア・スウェーデン・スペイン・スロバキア・スロベニア・チェコ・デンマーク・ドイツ(加盟時西ドイツ)・ハンガリー・フィンランド・フランス・ブルガリア・ベルギー・ポーランド・ポルトガル・マルタ・ラトビア・リトアニア・ルーマニア・ルクセンブルク

EUでは、循環型経済(サーキュラーエコノミー)を実現させるため、世界に先駆けて環境規制を推進しています。EUの取り組みの特徴として、製品のライフサイクル全体を通じた持続可能な利用を促進するため、使い捨てプラスチックの禁止や再利用可能な製品の開発が挙げられます。

2018年1月 に欧州委員会で策定された欧州プラスチック戦略では、すべてのプラスチック容器をリユース・リサイクル可能にすることや、欧州で発生するプラスチックごみの50%以上をリサイクルすることを目標としています。

この戦略を実現すべく、2018年10月24日にEU議会において、EU市場全体で、使い捨てプラスチック製品の使用を2021年から禁止する規制案を可決しました。

海洋プラスチックごみ

EUにおける主な指令や取り組み

EUにおけるプラスチック規制に関連する指令や取り組みの代表例が、次の2つです。

  • 特定のプラスチック製品の環境への影響の低減に関するEU指令
  • エコデザイン規則(ESPR)法案

どのような規制なのか、それぞれの規制の概要を詳しく説明します。

特定のプラスチック製品の環境への影響の低減に関するEU指令

海洋プラスチック問題の原因となる、環境負荷の大きなプラスチック製品について規制する指令です。本指令は、2019年5月に採択され、同年7月に施行されました。

カトラリーなどの使い捨てプラスチック製品や、発泡スチロール製の食品容器・酸化型分解性プラ製品・漁具が、規制対象に該当します。なお、酸化型分解性プラ製品は、紫外線などを浴びると短期間で分解されるプラスチックです。分解が十分にされず、マイクロプラスチックとなり環境中に残存してしまうという懸念があります。

規制内容の一例として、「飲料カップや食品容器といった使い捨てプラスチック製品は、無料で提供しない」などの対策を取る必要があります。また、キャップ付き飲料容器の再生プラスチック含有率指定や、キャップが本体から離れない構造にすることなども、定められています。拡大生産者責任への対応も必要です。

また、下記の使い捨てプラスチック製品10種類の販売が、2021年7月3日から禁止されました。

  • カトラリー(ナイフ・フォーク・スプーン・箸)
  • ストロー
  • マドラー
  • プラスチック製の綿棒軸
  • 風船棒
  • 発泡スチロール製の食品容器
  • 発泡スチロール製の飲料容器
  • 発泡スチロール製の飲料用コップ
  • 酸化型分解性プラ製品

使い捨てカトラリー

エコデザイン規則(ESPR)法案

エコデザイン規則(ESPR)法案は、2023年 5月にEU 理事会で合意に至りました。この法案の特徴として、消費者向けの製品だけでなく、EU 内で市場に投入または使用される事実上すべての製品をエコデザインにすることが求められている点が挙げられます。

エコデザインとは、一般的に、製品のライフサイクル全体において、資源・エネルギーの消費や環境負荷を最低限に抑えるような設計のことを指し、具体的には、以下のような要件が求められます。

  • リユースやリサイクルがしやすい
  • 使用する原材料が最小限である
  • 耐久性が高い
  • 修理しやすい
  • リサイクル原料を多く含んでいる

エコデザイン規則(ESPR)法案は、2023年12月時点の暫定案では、未使用繊維製品の廃棄禁止を明示しており、石油産業に次ぐ世界第2位の汚染産業となっている繊維・アパレル産業の環境汚染対策の一環となります。また、今後は食品や医薬品を除く製品が対象となる予定で、プラスチック製品についてもエコデザインにする必要があるでしょう。

エコデザイン規則

EUのプラスチック規制の最新動向

EUのプラスチック規制の最新動向として注目されているのが、包装廃棄物の削減を目的として制定されたPPWR(包装・包装廃棄物法令)です。

PPWRとは、包装廃棄物削減をより強力に推し進めるために、欧州委員会が提案し、2024年3月に暫定合意に至った規制です。それまでは各国で独自に実施していた包装廃棄物対策の規制を統合する目的もあります。今後、欧州理事会での採択が予定されています。

この規則案は、官報に掲載されてから20日後に発効し、個別に適用時期が定められた規定を除き、その 18 ヶ月後から適用される見込みです。

PPWRが義務付ける主な内容は、包装廃棄物の削減、包装材のリサイクル、再利用の促進の3つです。例えば、包装廃棄物の削減については、EU加盟国に対して2018年を基準に以下の削減目標が義務付けられており、包装材のリサイクル、再利用の促進についてもそれぞれ目標が定めています。

  • 2030年まで:5%削減
  • 2035年まで:10%削減
  • 2040年まで:15%削減

PPWRは、包装材を「EU向けに輸出販売している」または「現地生産している」日本の事業者も規制対象となります。包装関係の製品をEU市場へ輸出販売する事業者は、使用済み包装材の回収や再生などの費用負担を負う必要があり、拡大生産者責任が課されます。また、資源廃棄物の回収・選別や精製・再生も義務付けられるため、大きな負担となる可能性があります。

プラスチック規制に対応できる梱包材

ここまで、EU(欧州連合)のプラスチック規制の全体像や最新の動向、欧州へ輸出などを行う際に把握しておくべきポイントを解説してきました。日本の輸出事業者は、これからもEUの動向を注視するとともに、プラスチック規制対応を迫られることになると予想されます。ここでは、日本の輸出事業者向けに、欧州のプラスチック規制にも対応できる梱包材、NISSHAの「パルプシリーズ」について紹介しますので、ぜひご活用ください。

NISSHAのパルプシリーズはプラスチック規制に対応できる梱包材

NISSHAのパルプシリーズは、紙(パルプ)を含むバイオベース成形品で、欧州のプラスチック規制にも対応できる梱包材です。国内市場向け製品はもちろんのこと、欧州を含め、海外向けにも最適なサステナブルな環境配慮型パッケージをバリエーション豊富にラインナップしています。

PaperFoam®

Pulp-Injection

海外ではPaperFoam®やPulp-Injectionが人気

パルプシリーズのなかでも、海外から多くの問合せを受けるのがPaperFoam®(ペーパーフォーム) Pulp-Injection(パルプインジェクション)です。
どちらも欧州地域において紙(パルプ)としてリサイクルができるので、パッケージのエコデザインという観点でも最適です。

発泡成形を用いるPaperFoam®はプラスチックに比べ、軽量でありながら発泡体を活かしたクッション性や保持力に優れています。また、耐荷重も5㎏まであるため、軽量の製品から重量のあるものまで幅広く使用できるのが魅力です。着色やシボ加工にも対応しており、デザイン性が求められる梱包材にも適しています。「軽くて柔らかい、PaperFoam®だからできる設計〜「モバイルバッテリー用梱包材」編 」では、PaperFoam®の工法や、設計の特長について詳しくご紹介しています

1mm前後の薄さでプラスチックに似た硬さをもつPulp-Injectionは、薄さと硬さを両立できる成形品です。射出成形により、プラスチックに近い寸法精度や自由な形状設計が可能で、繊細な取扱いが必要な製品の梱包材などに使われています。

PaperFoam®とPulp-Injectionについての詳しい情報は製品ページで紹介しています。是非ご覧ください。
製品ページはこちら

まとめ

欧州のプラスチック規制は、欧州プラスチック戦略の枠組みの中で、複数の取り組みや指令が整備されています。また、最近の動向として、PPWR(包装・包装廃棄物法令)も見逃せません。このようなプラスチック規制は、欧州と取引のある輸出事業者が対象となるケースが多いため、整備状況を把握し適切に対応する必要があります。

NISSHAでは、プラスチック規制に対応できるさまざまな包材を取り揃えています。中でも、プラスチックに比べ軽量でありながら緩衝性や保持力に優れたクッション性の高いPaperFoam®や、1mm前後の薄さでプラスチック同様の硬度があるPulp-Injectionは、海外展開におすすめです。NISSHAではお客さまの要望に合わせた設計を行います。環境にやさしい梱包資材・パッケージのご相談はこちらからお問い合わせください。

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