紙マークとは?概要から紙のリサイクル全般一挙解説

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紙マークとは?概要から紙のリサイクル全般一挙解説

紙マークとは、紙でつくられた容器包装であることを見分けられるよう、表示が義務付けられているマークのことです。

紙マークは、紙のリサイクルを推進し、資源を有効利用できるようにする目的でつくられました。ただし、紙マークの表示があってもリサイクル不可であるケースもあるので、注意が必要です。リサイクルに適切に取り組むには、紙マークや紙のリサイクルについて、正しい知識を身に付けておくことが欠かせません。

そこで、今回は、紙マークの概要・紙をリサイクルする流れ・古紙パルプの用途など、紙のリサイクルに関連して押さえるべき基礎知識をまとめて解説します。

紙マークとは

紙マークとは、紙でできた製品であることを表すマークです。「資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)」に基づき、2001年4月から、条件を満たした紙製容器包装に表示が義務付けられています。

紙マーク表示義務の
対象製品

段ボールやアルミ不使用の飲料用紙容器を除く、紙製容器包装

【具体例】
包装紙・紙袋・紙箱・紙カップ・アルミ付き液体紙容器 など
紙マークの表示義務者
  • 容器を製造する事業者
  • 容器包装の製造を発注する事業者(利用事業者)
  • 輸入事業者
例外的に表示義務の
対象となる主なケース
  • 見本品やサンプル品などの容器包装
  • 事業活動で使うものの容器包装
  • 缶やボトル類に貼り付けられている紙製ラベルで、簡単にはがせないもの
  • 条件を満たす無地の容器包装
  • 販売時に中身が入っていない紙コップや紙皿

紙マークの表示方法は、印刷のほか、刻印やスタンプ・箔押し、ラベルを貼るといった方法も認められています。なお、表示義務を守らなかった場合、罰則の定めがあります。

紙マークがつくられた目的は、紙の容器包装のリサイクルを促進し、資源を有効利用するためです。リサイクルの促進については、容器包装リサイクル法で、紙製容器包装などに対し再商品化義務も定められています。

紙マークが表示されていれば、製品を購入した消費者は、簡単にリサイクルすべき紙製品を見分けて分別することが可能です。これにより、リサイクル可能な資源がごみとして廃棄されてしまうのを防ぎ、スムーズに再商品化を進めることができるようになります。

リサイクルに適さない禁忌品に注意が必要

リサイクルに適さない禁忌品に注意が必要

紙マークが表示されていても、リサイクルに適さないケースがあることに注意が必要です。このようなリサイクルできない紙類を「禁忌品」と呼びます。禁忌品に該当するものは、自治体や古紙回収業者によって多少の違いがありますが、代表例は下記の通りです。

臭いの付いた紙
  • 洗濯洗剤やせっけんの空き箱
  • 線香の紙箱や包装紙類 など
汚れた紙
  • 油が付着している紙
  • 使用後のティッシュ類
  • デリバリー容器のような食品が直接触れた紙箱 など
感熱紙
  • FAX用紙
  • レシート など
カーボン紙・ノンカーボン紙

複写式の伝票、請求書、申請書 など

ビニールなどで
コーティングされている紙
  • 雑誌の表紙
  • お菓子の箱
  • お酒の紙パック など
防水加工された紙容器
  • カップラーメンの容器
  • ヨーグルトの紙容器
  • 紙コップ、紙皿 など

上記以外に、圧着ハガキや箔押し・印刷面が凹凸になっている紙なども、一般的にリサイクルできないケースが多いでしょう。

紙マークと紙パックマークの違い

紙マークと似ている表示に「紙パックマーク」があります。紙パックマークとは、乳飲料から酒類にまで幅広く使われる紙製容器の中で、アルミ箔を使用しない製品に表示されるマークのことです。飲料用紙容器リサイクル協議会が紙パックのリサイクルを推進することを目的につくったマークです。法的な表示義務はありませんが、関連業界団体が自主的にマークの採用、表示をすることとしています。

  紙マーク 紙パックマーク
目的 紙製容器包装などの
リサイクル促進
紙パックのリサイクル促進
表示対象 紙製容器包装などの紙製品 紙パック
表示の法的義務 あり なし

このように、紙マークと紙パックマークは、表示する対象や表示義務の有無が主な違いがあります。

紙のリサイクル方法

紙マークがついている製品など使用後に回収された古紙類は、紙の原料であるパルプに戻した上で、再度紙に加工しリサイクルします。大まかな古紙のリサイクルの流れを見てみましょう。

  1. 家庭や事業所などから古紙として排出。
  2. 古紙問屋に運ばれ、選別・分別作業を行った後、圧縮梱包し製紙工場へ出荷。
  3. 製紙工場に搬入された古紙はパルパーで解繊(溶解) させ、繊維を取り出し。
  4. 抄紙機を用いて脱水し、古紙パルプとして取り扱いやすいようシート状に形成。
  5. 紙加工工場で新たな板紙や紙製品に加工。

上記のステップに加えて、古紙のインクを取り除く工程や、汚れを落とすために洗浄する工程などもあります。

紙のリサイクルにおいて特に重要となるのは、古紙の分別の精度です。下記の通り、古紙の種類によってリサイクル後に使うことができる用途が異なるからです。

古紙の種類 リサイクル先の製品例
新聞 新聞紙、コピー用紙、パルプモールド
雑誌 紙製容器の板紙、書籍
段ボール箱、パルプモールド
雑がみ 段ボール箱、パルプモールド
段ボール
飲料用紙パック トイレットペーパー

紙のリサイクルの意義

紙のリサイクルの意義

紙リサイクルが促進される背景には、循環型社会の実現を目指すにおいて欠かせない理由があります。

  • 資源浪費の抑制
  • 廃棄物の削減
  • 持続可能な森林資源の活用

新たに作る紙製品に古紙パルプを使うことができれば、パルプの原料となる木材の伐採量を減らすことができ、木材からパルプを製造する際にかかるエネルギーの消費抑制にもつながります。そして使用後の紙製品を再度、古紙としてリサイクルすることができれば廃棄物の発生を抑えることにもなります。
このような循環を実現できれば、バージン材を製造するための森林伐採量が減り、森林資源の持続可能性を高める助けにもなります。

古紙パルプ配合率が一目でわかるRマークとは

では、世の中に出回る製品のなかでどのくらいの製品に古紙から採取されたパルプが使用されているのでしょうか。その識別方法のひとつに古紙パルプを原料とする製品に表示されるRマーク(再生紙使用マーク)があります。
RマークはアルファベットのRと古紙パルプ配合率を示す数字を組み合わせて表示されます。例えば、古紙配合率100%なら「R100」です。届け出などは不要で、無料で表示することができるマークできます。

Rマークの表示により、古紙パルプがどのくらい配合されているのかが一目で判るため消費者が購買行動においてより環境にやさしい選択ができるようになるほか、企業が環境への配慮を戦略的にアピールしたい場合にも有効です。

古紙パルプの用途

一方、古紙パルプはその性質上、何にでも再利用できるというわけではありません。
古紙からパルプ繊維を取り出す過程には、印刷されたインクを除去する工程や汚れを洗い流す工程などがあり、バージン材に比べて繊維が短くなるなど、繰り返しの加工により品質が劣化する傾向にあります。

このような原料を有効活用し、さまざまな用途に使用される成形工法がパルプモールドです。古くは卵パックなどに多く使われてきた紙製容器で、昨今は環境対応の観点から電化製品の緩衝材や多くの部品を一度に運ぶための輸送用トレーなどプラスチック製資材の代替品として幅広くつかわれています。
パルプモールドについては、「パルプモールドの種類と特長、さらにその派生技術も紹介 」で詳しく解説しています。

NISSHAのパルプモールドをご紹介

NISSHAのパルプモールドをご紹介

NISSHAでは、パルプモールドの設計、成形加工の受託サービスを提供しています。ここでは、それぞれのパルプモールドについてご紹介します。

乾式パルプモールド「Pulp-Molding(パルプモールディング)」

Pulp-Molding(パルプモールド)は、厚みを増すことにより、高い緩衝性を発揮することが特長のパルプモールドです。重量物の緩衝梱包材として使用できることに加え、材料の着色や表面にロゴなどの刻印を加えることもできるので、多彩な表現が求められる化粧箱としての使用も増えています。

Pulp-Molding (パルプモールディング)

湿式パルプモールド「Pulp-Thermoforming (パルプサーモフォーミング)」

Pulp-Thermoforming (パルプサーモフォーミング) 」は、古紙パルプではなく竹繊維とサトウキビ残渣(バガス)を使用するデザイン性に優れたパルプモールドです。加工方法の違いによって生み出すことができるなめらかな表面の質感とやさしい触り心地により、美しさや高級感が求められる製品に適しています。Pulp-Moldingに比べ厚みが薄いことから包装の軽量化にも貢献します。

Pulp-Thermoforming (パルプサーモフォーミング)

まとめ

紙マークとは、紙でできた製品であることを表すマークです。紙のリサイクル促進を目的として、紙製容器包装に表示が義務付けられています。紙のリサイクルは、資源の浪費や廃棄物の発生を抑制するなど、さまざまな意義がある取り組みです。

紙製梱包材には古紙パルプだけでなく紙パルプ(バージン材)を利用する製品もありますが、どちらも循環型社会の実現に貢献する製品という点では同じであるため、積極的に利用する価値が高いと言えます。

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