PF[monaka] プロトタイプ開発メンバーによる座談会

地球温暖化と海洋プラスチックゴミによる環境汚染の問題に取り組むNISSHAでは、コア技術を生かし環境に配慮した「サステナブル資材」(ecosense molding)を展開しています。⾼い緩衝性と造形性が特⻑の「PaperFoam®(ペーパーフォーム)」を使った国内初のデザインコンセプトPF[monaka]のプロトタイプ開発に携わった4名が、完成までのビハインドストーリーを語ります。

o-lab inc. 代表取締役/クリエイティブディレクター 綾 利洋
産業資材事業部 マーケティング部 CMFデザインG GL 野村 真
産業資材事業部 開発部 開発二G GL 西川 哲
産業資材事業部 営業二部 サステナブルパッケージ推進G GL補佐 今井 宏樹
※写真左から 野村GL、今井GL補佐、綾氏、西川GL
※座談会中はマスクの着用を徹底し、十分な感染対策を行った上で実施しました。

パルプ成形品「PaperFoam®(ペーパーフォーム)」とは

野村:今回、PaperFoam®成形技術のデザインプロトタイプPF[monaka]を製作したわけですが、まず始めにPaperFoam®についての紹介をお願いします。

西川:PaperFoam®は水とデンプンとパルプを混ぜて発泡させる成形工法で、天然由来のパルプを3次元に造形する技術を活用した「パルプ成形品」の1つです。

参考リンク PaperFoam®について

今井:材料にプラスチック発泡材を使わない天然素材の発泡成形品なので環境に優しく、生分解することが大きな特徴です。緩衝性が高く、柔らかくて、かつ軽量なので梱包資材やパッケージに適していて、海外ではコンシューマーエレクトロニクス・デジタル機器や化粧品、食品、医薬品、医療機器の梱包資材として広く使われていますが、日本ではあまり浸透していない現状です。

PaperFoam®の魅力と可能性を知ってもらいたい

野村:伝統工芸から医療機器まで分野を横断してプロダクトデザインを多数手がけられている綾さんから見て、PaperFoam®プロトタイプの製作はいかがでしたか?

:サステナブル資材には以前から興味があったんですが、お話を伺った時は「面白そうやけど難しそうやなぁ…」と思いました(笑)でも最後に良いモノが出来上がる時って、こういう感覚で始まることが多いんですよね。

PaperFoam®のサンプル品を何種類か見せていただいて、肉厚で、指で押すと柔らかく、とても面白い素材だと思いました。ただ、現状の使われ方では樹脂や既存のパルプ製品の代替品でしかなく、素材のポテンシャルを生かしきれてなくて勿体ないとも思って。それで、まだ知られていないPaperFoam®の魅力と可能性を知ってもらうことが自分のミッションになりました。

デザイン面では、PaperFoam®の柔らかさと成形が自由にできる性質を活かして、通常は隠してしまうリブ(=構造要素)を積極的に見せてデザイン要素の1つにしつつ、緩衝構造としても利用しました。

あと、通常は中に入れるモノの形状に合わせた中敷と外側の2層構造なので、身と蓋で計4パーツ必要なのですが、箱とリブを一体化させることで計2パーツに削減できました。

デザインコンセプトとエンジニアリングの着地点を探る

野村:造形デザインと中身をガラスコップにすることは、割とすぐ決まりました。あとは3Dデータを作って、金型データに落とし込んだら完成かと思ったら、そう簡単には行きませんでしたね。最初の金型はチャレンジングな造形を求めたために、リブの部分にまで十分に材料が充填されず期待していた形状に仕上がらなかったり、成形後の収縮が想定しきれず隙間ができてガラスコップがガタついてしまうこともあったので、金型を一部作り直すこともしました。

:手にした人に驚きを与えつつコンセプトが伝わるデザイン、審美性など企画側の守りたいラインと技術面からの意見とで相当せめぎ合いながら着地点を探りましたね。エンジニアの皆さんにはかなりご無理を言ったと思います。

西川:いえいえ。綾さんのやりたいことは分かるんですが、成形安定性など難しい部分もあって。でも無事にできてよかったです。

今井:私達もここまで細密なPaperFoam®成形は初めてだったので未知数でしたね。PaperFoam®は従来のプラスチック成形に比べて公差が比較的大きいので、それを踏まえた調整が必要だというプラスチック成形との違いも分かって、結果、新規性のあるものができたので良かったです。

初めて見たのに、なぜか記憶に残る

野村:完成品はテクスチャーやロゴの質感が予想以上に綺麗で、細かく再現されていたので、ここまで出来るんだと驚きました。あと一方で赤白黄黒のカラーバリエーションでは、柔らかい色味に仕上がったものと強めに出たものがあって、色はなかなかシミュレーションどおりに出るわけじゃないんだなと。

:私は PaperFoam®ならではの風合いや表面のミクロの凹凸に、天然素材や工芸品に通ずるものを感じました。例えば黒色はそのテクスチャーも相まって天然の石を連想させますよね。初めて見たのになぜか記憶に残る、不思議な魅力を持つモノが出来上がったと思います。

西川さんに伺ったら、色ムラが出にくい方法もある程度エンジニア側で把握されているそうで、実際の案件ごとの目的や優先事項に合わせて最適化できる可能性を感じました。

野村:確かに、ムラの捉え方は商品の立ち位置によって変わるので、その考えは興味深いですね。

西川:PF[monaka]の第一印象は、梱包資材や工業製品というよりアート・芸術品のようだと思いました。あと、今回はデザイン的な意味合いでテクスチャーをつけましたが、これを滑り止めなど機能的にも活かせないかと考えているところです。まだ具体的なアイデアは無いんですけど。

今井:良いアイデアですね!ぜひ設計してください。私は営業なので、ようやくお客さまにお渡しできるサンプル品ができたというのが1番です。軽さや緩衝性に加えて、テクスチャーやロゴ、リブもこのサンプルを紹介することで伝えやすくなると思います。

野村:実際にPF[monaka]を手に取られた方は、「軽くて柔らかい」「これ本当にパルプなの」と言いながら、ずっと触っていらっしゃいますよね。

PF[monaka]を通じてPaperFoam®の魅力を届け、サステナブルに貢献する

今井:良いサンプルができたので、お客さまとなる購買、開発、デザインなど、色々な部門の方々にご提案をしていきたいです。PaperFoam®は大量生産品に適したアイテムなので、このプロトタイプを通じてPaperFoam®という素材の魅力を感じていただき、PaperFoam®成形品を採用していただけるようにしていきたいですね。

西川:これまでは主にお客さまからいただいたデザインや意向に合わせて製品を作ってきましたが、今回は初めてものづくりの企画段階から関われて、学びが多かったです。今後、新しいパルプ成形品を市場に出していく際にも、今回の経験を生かして行きたいと思います。

:PF[monaka]は今、世の中にあるPaperFoam®プロダクトの中で最もチャレンジしたものだと思うので、多くの人に見て触ってもらいたいです。あと、これをきっかけに多くのクリエイターにPaperFoam®を使っていただき、新しいアイデアを出してほしいですね。

ややこしいデザインを提案したので大変だったかと思いますが、今後もまた一緒にものづくりができれば嬉しいです!

野村:はい!PF[monaka]のような新しいプロダクトを通じてお客さまに驚きを提供し、より様々な方々にNISSHAを知っていただきたいですね。皆さん、ありがとうございました。

※座談会中はマスクの着用を徹底し、感染対策を行った上で実施しました。

まとめ

PaperFoam®(ペーパーフォーム)は、パッケージ資材として脱プラスチックを検討しているお客さまに最適なソリューションの一つです。環境に良いだけでなく、軽量(比重0.2)で製品をがっちりとおさえ保護することが可能です。海外(欧米)では化粧品、医療・医薬品、コンシューマーエレクトロニクス、産業機器、文具、日用品などの製品向けのパッケージ資材として多数の採用実績がありますので、是非ご検討ください。

NISSHA WEBサイトにて、PaperFoam®をはじめとしたパルプ成形品の用途例をご紹介しております。

参考リンク 用途例

PF[monaka]がAXIS Web Magazine に紹介されました。

参考リンク AXIS Web Magazine

PF[monaka]サンプル品をご覧になりたい場合は、下記お問い合わせからご連絡ください。