コラム
紙でありながら自由で複雑な造形を実現する設計〜化粧品用梱包資材・パッケージ編
2022/11/25

本ブログではPulp-Moldingを使った梱包資材・パッケージの設計例(特許出願中)を紹介します。Pulp-Moldingは金型を使って紙漉きを行うことで立体形状の製品を製作する、紙の質感を最大限に活かした工法です。
紙を主原料として使い、プレス成形をすることで凹凸形状のある梱包資材・パッケージを作ることができます。中に収める商品にフィットした形状を設定でき、厚みを調整することで緩衝性を発揮することができます。そのためトレー、ブリスターパック、発泡スチロールなどのプラスチック製品の代替工法として注目されています。
また、紙は主に再生紙や段ボール・コピー用紙などの古紙を使用しているので環境にやさしく、使用後は紙としてリサイクルが可能です。プラスチックの代替としてCO2排出量の削減に貢献します。
Pulp-Moldingの工法の詳細については、こちらからご覧ください。
次の章からは、Pulp-Moldingの特長を活かすためNISSHAがデザイン・設計した「化粧品用*の梱包資材・パッケージSoft Lock Box」を例に、外観や機能を詳しくご紹介していきます。また、Soft Lock BoxはPulp-Thermoformingでも同じ形状を再現することができます。
*Soft Lock Boxは化粧品以外にも日用品、アウトドア、玩具、医薬品・医療機器、産業機器、コンシューマーエレクトロニクスなど幅広い用途でお使いいただけます。
外観・機能の特長
収納部分の封函
蓋側の凸形状により、蓋を閉じた際にピッタリはめ合わせることができるため内部にゴミや異物の混入を低減します。またこの凸形状には、内部で商品がずれることを防ぐという効果もあります。
トレー外周の打ち抜きとミシン目の設定
成形後の端面は繊維が毛羽立っているため、外周を打ち抜くことで、トレーの端面を均一にしています。また、折り返しの部分にミシン目を入れることで、正確に折り曲げることが可能となります。
独自のスナップ構造(※特許出願中)
凸形状を正確に折り曲げることでアンダーカットのような効果を生み出し、クリック感のある封函構造を実現しました。
指を掛ける部分を設定したことで、強い力を入れなくてもパッケージを簡単に開けることができます。
この封函構造を応用することで、球形や六角形などのさまざまなバリエーションのパッケージにも適応が可能です。
打ち抜き工程での形状を工夫することで、別のパターンの封函構造も作成することもできます。パッケージの形状に合わせた設計が可能です。
スタッキング時の嚙みこみ防止形状
完成したパッケージは出荷される際に積み重ねられた状態(スタッキング)で梱包されます。その際、パッケージ同士が自重や振動によって強く噛みこんでしまい、お客さまで使用する際に外れにくい場合があります。嚙みこみを防止するため、パッケージ側面に噛みこみ防止のための凸形状を設定しています。
吊り下げタブ
店頭での陳列の際に陳列棚に吊り下げるためのタブ形状は、打ち抜き工程で作成することができます。
折り曲げ用の筋
打ち抜き工程でのミシン目以外に、プレス工程で折り曲げ用の筋を入れることも可能です。Soft Lock Boxでは、吊り下げタブの上の部分に凹みのある筋を薄く入れることで、ミシン目で作った折り線に比べて折り線が目立ちにくい外観となっています。
パッケージコンセプト
商品の収納部分
商品収納部分は収納したい商品の大きさや形に合わせて金型の形状を変更することで形状を自由に作成することが可能です。
Soft Lock Boxでは収納部分を四角形にし、幅25mm×長さ70mm×高さ25mmの大きさの商品に対応できるサイズで設計しました。
シール貼付面
化粧品などの商品が店頭販売される際、商品名や成分表示などのラベルシールが貼付されます。そのためパッケージの表面と裏面にシールを貼り付けるためのスペースを設けました。今回の化粧品用パッケージでは、表面・裏面ともラベル貼付が可能なスペースがあります。
パッケージの着色
染料での着色やクラフト紙の使用によってパッケージに着色することができます。紙の質感を活かし着色することでデザイン性の高いパッケージに仕上げています。
刻印
プレス工程でパッケージの表面に文字やロゴを刻印することで、企業名やブランド名を目立たせています。
Pulp-Moldingは紙が主原料でありながら、設計の工夫で梱包資材・パッケージにさまざまな形状や機能を持たせることができるため、トレー、ブリスターパック、発泡スチロールの代替工法に適しています。
NISSHAではお客さまの要望に合わせた梱包資材・パッケージの設計にも対応しています。環境にやさしい梱包資材・パッケージのご相談はサステナブル資材チームまでお問い合わせください。