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廃プラスチックの輸出規制とは?プラスチック削減の取り組みも解説
2024/09/24
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廃プラスチックの輸出規制は、国際的な環境問題への対応として重要な課題です。日本はかつて廃プラスチックの主要な輸出国であり、多くの廃プラスチックが東南アジア諸国に輸出されていました。しかし、輸出先の国々が廃プラスチックの受け入れを制限し始めたことで、日本国内での処理が求められるようになりました。
当記事では、廃プラスチックをめぐる各国の輸出入規制の現状と、廃プラスチックを減らすために実施したい取り組みについて詳しく解説します。
廃プラスチックの輸出規制とは?
廃プラスチックの輸出規制とは、廃プラスチックの輸出入が国際的に規制されていることに伴う、日本国内での輸出規制のことです。
日本は廃プラスチックの輸出大国であり、2018年には約101万トンの廃プラスチック輸出が行われました。輸出先の国は東南アジアや台湾などです。
(出典:ジェトロ(日本貿易振興機構)「東南アジア諸国が廃プラスチック輸入規制を強化、日本の輸出量は減少 」)
しかし、従来の輸出先国では廃プラスチックの輸入制限が始まっていて、廃プラスチックの輸出入を取り巻く環境は変化し続けています。日本においても廃プラスチックの行き場がなくなる事態が懸念されており、廃プラスチックの輸出規制やプラスチック資源循環法の整備などが進められている状況です。
廃プラスチックの地球への影響は?
廃プラスチックは生産国内でリサイクルされているケースも存在するものの、全世界で年間約1,500万トンが国際的に取引されています。廃プラスチックの貿易の多くは途上国への輸出です。
しかし、途上国の廃棄物管理能力が低い場合、廃プラスチックが適正に処理されない可能性があります。リサイクル施設で未処理の排水が放流されることによる水質汚濁や、リサイクルができないプラスチックの投棄などが不適正な処理の例です。結果として、海洋へのプラスチックの放出や環境汚染が発生します。
(出典:環境省「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準について」)
日本を含む廃プラスチックの貿易にかかわる国は、廃プラスチックの輸出が地球環境の汚染につながらないよう対策することが求められています。
廃プラスチックの輸出について取り決めたバーゼル条約
廃プラスチックの輸出について取り決めた国際条約として「バーゼル条約」があります。正式名称は「有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約」です。
バーゼル条約はもともと、有害廃棄物が国境を超えることによる環境への影響を抑えることを目的として、1992年に発効した国際条約です。日本は1993年にバーゼル条約に批准し、締結国・地域数は2023年11月時点で189か国となっています。
バーゼル条約は2021年に改正附属書が発効し、すべての廃プラスチックに対して下記の規定が追加されました。
Y48(特別の考慮が必要なプラスチックの廃棄物) | 規制対象 |
---|---|
A3210(有害なプラスチックの廃棄物) | 規制対象 |
B3011(非有害なプラスチックの廃棄物) | 規制対象外 |
本において廃プラスチックを輸出する際には、環境大臣による確認手続きと経済産業大臣による承認が必要です。
なお、規制対象の廃プラスチックの輸出には、相手国との間に事前の通告と同意が求められます。相手国への通告と同意があれば輸出は可能であり、廃プラスチックの輸出を禁止する条約ではありません。
(出典:環境省「プラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準について」)
(出典:外務省「バーゼル条約」)
廃プラスチックの輸入制限をしている国は?
廃プラスチックの輸入を行っている諸外国では、近年に入って輸入規制が実施されています。
廃プラスチックの輸入規制を実施しているいくつかの国と、各国の規制内容を紹介します
- 中国
- 中国は2017年末、廃プラスチックを含む廃棄物原料の輸入禁止を発表しました。規制前の中国は世界最大の廃プラスチックの輸入国であったものの、2024年現在では廃プラスチックの輸入は大きく減少しています。現在の中国では、廃プラスチックを加工した再生ペレットの輸入が行われていると考えられています。
- マレーシア
- マレーシアでは、2018年7月に担当省庁が発行したすべての輸入許可証(AP)を3か月間停止し、新たな認可基準を設けた輸入許可証を同年10月に開始しました。しかし、JETROの調査によると2019年4月時点で輸入許可証を申請後に承認された企業はなく、実質的な輸入禁止状態にあると考えられます。
- タイ
- タイでは2018年に違法工場が摘発されたことを契機に、廃プラスチックの輸入規制が始まりました。2024年現在では廃プラスチックの輸入は原則禁止されており、2025年には廃プラスチックの輸入が全面禁止になる見込みです。
- ベトナム
- ベトナムでは、2018年から2019年にかけて廃プラスチックを含む輸入廃棄物の管理強化が実施されました。2018年10月以降は天然資源環境省(MONRE)の輸入許可基準が厳格化されています。また、2025年までに廃プラスチックの輸入を完全禁止にする方針です。
- インドネシア
- インドネシアは2019年に廃プラスチックの輸入規制を開始しました。「製造工程由来である」「有害・有毒・危険物質ではない」など複数の条件を満たした場合にのみ、廃プラスチックの輸入が可能となっています。/dd>
(出典:ジェトロ(日本貿易振興機構)「2025年以降の廃プラ輸入の全面禁止に向け通達案を公表(タイ)」)
(出典:ジェトロ(日本貿易振興機構)「東南アジア諸国が廃プラスチック輸入規制を強化、日本の輸出量は減少」)
(出典:環境省「廃プラスチックのリサイクル等に関する国内及び国外の状況について」)
廃プラスチックを減らすためには?
廃プラスチックの輸入・輸出規制が進む中では、処理を輸出に頼るのではなく国内で処理したり、廃プラスチックを減らしたりする取り組みを行う必要があります。
廃プラスチックを減らすための取り組みを2つ紹介します。
リサイクルを行う
プラスチックのリサイクルは、大きく分けて3種類の手法があります。
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルは、廃プラスチックをプラスチックのまま原料にして、再びプラスチック製品として利用できるようにするリサイクル方法です。
大まかな手順としては、リサイクル事業者が回収した廃棄物を分別し、洗浄・粉砕・分離などを行って、プラスチック原料のペレットにします。ペレットは、プラスチック製品の成形材料として使われる素材です。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルは、廃プラスチックを化学反応により組成変換を起こし、別の物質として再利用するリサイクル方法です。
廃プラスチックのケミカルリサイクルでは、大きく分けて5つの手法があります。
- 原料、モノマー化
- 油化
- ガス化
- コークス炉化学原料化
- 高炉原料化
日本で主に用いられている手法は、「油化」「ガス化」「コークス炉化学原料化」「高炉原料化」です。
サーマルリサイクル
サーマルリサイクルは、廃プラスチックを焼却する際に得られる熱エネルギーを利用するリサイクル方法です。
廃プラスチックの中には一部に汚れや異素材の複合があったり、異物が混入していたりなど、そのままではリサイクルが困難なものがあります。サーマルリサイクルは分離や選別ができない廃プラスチックを焼却し、熱エネルギーを発電などに利用することで、リサイクルと見なします。
プラスチックごみを削減する
プラスチックごみを削減することで、廃プラスチックの排出量削減につながります。
プラスチックごみを削減するためには、下記のような取り組みを実施するとよいでしょう。
- リユース容器の使用
- 使い捨てのプラスチック容器ではなく、洗って何度も利用できるリユース容器を使用すると、プラスチックごみが排出されにくくなります。
- 包装の簡易化
- 多くの商品には包装としてプラスチック使用されています。商品の過剰な包装をやめることで、プラスチックごみの削減が可能です。
- 紙製製品の使用
- 紙製製品を用いればプラスチックごみを生み出すことがありません。また、焼却廃棄時に排出されるCO2についても木材の成長過程で吸収されたCO2と相殺されることでカーボンニュートラルという見方ができ、プラスチックに比べ環境への影響が小さいと言えます。
- 再生プラスチックの使用
- 再生プラスチックの原料は廃プラスチックであり、一般的なプラスチックを使用する場合よりもプラスチック資源の有効活用ができます。
廃プラスチックの削減に貢献するecosense molding
廃プラスチックの処分に関しては、各国で輸出入の制限が行われているため、輸出に頼らない処理方法を検討する必要があります。廃プラスチックのリサイクルを進めたり、そもそもプラスチックを使わない工夫を行ったりすることが大切です。
NISSHAでは、廃プラスチックの削減に貢献するため、紙材やバイオマス(植物由来)原料を使った成形品ブランド ecosense molding を展開しています。
「Pulp series (パルプシリーズ)」は主原料にパルプを用いた成形品で高いクッション性や細かな形状再現性など、紙でありながらプラスチック製包材の代わりとなるような特長をもっています。
Pulp-Injection(パルプインジェクション)
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Paperfoam®(ペーパーフォーム)
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