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生分解性と堆肥化 ―生分解性材料を有効活用して、サステナブル社会の実現へ
2021/07/28
- パルプ
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以前の記事では生分解性プラスチックの歴史をご紹介しましたが、今回は「生分解性」に注目していきます。
生分解性プラスチックの歴史をわかりやすくまとめる-項目別年表付き – NISSHA
もくじ
❶ 今、なぜ「生分解性」が必要なのか?
❷ 「堆肥化」をはじめとする「生分解性」の類型
❸ 生分解性・堆肥化の課題
❹ NISSHAでも堆肥化の検証をしてみました
今、なぜ「生分解性」が必要なのか?
生分解性が注目される背景の一つに、国際的な社会課題となっている自然環境保護、海洋プラスチックごみ問題やマイクロプラスチック問題があります。
クジラの死骸の胃の内容物から大量のプラスチックごみが出てきたというニュースや鼻にプラスチック製のストローが刺さったウミガメの姿は、世界中に衝撃を与えました。
海に流出したプラスチックごみが波や紫外線等の影響を受けて小さく砕かれ、5mm以下の大きさになったものをマイクロプラスチックと呼びます。マイクロプラスチックは生分解されず、一度自然界に流出したら回収できないため、数百年間以上、自然界に残り続けるとされています。
WWFの調査では、海洋生物のプラスチックごみの摂取率はウミガメで52%、海鳥では90%と推定されています。世界中の海に存在するマイクロプラスチックは塩や水産加工品等を介して私たちの体内に取り込まれており、一人あたり年間でクレジットカード1枚分のプラスチックを摂取しているとも言われています。摂取されたマイクロプラスチックが今後、私たちの身体にどのような影響を及ぼすのかは、まだ明らかになっていないことも多いですが、楽観視はできない問題と言えるでしょう。
そのためプラスチック代替素材の使用が望まれていますが、全ての製品において使うことは現実的に難しいため、プラスチックを使わざるを得ない製品に関しては、3R(リデュース、リユース、リサイクル)や生分解性のあるプラスチックなどを賢く使う必要があると言えるのではないでしょうか。
次の章から「生分解性」について紹介します。
「堆肥化」をはじめとする「生分解性」の類型
一般的に「生分解性」と言われる工程は、「自然環境下での生分解」と「堆肥化」に分けられます。
「自然環境下での生分解」には「土壌生分解」、「淡水生分解」、「海洋生分解」があります。生分解の速度は温度、微生物等の種類、量によって異なりますが、「海洋生分解」が最も分解しにくいと言われています。
「堆肥化」には微生物による分解工程に人が手を加えることで、家庭で生ゴミを腐葉土にするような「家庭堆肥化」と、工場で温度・湿度を調整して微生物が活動しやすい環境を整え、分解を促進させる「工業堆肥化」があります。
このように「生分解」といっても、どのような環境下で生分解するかによって様々な呼び方があります。
生分解性には現在、各国の機関が独自の基準を設けており、いくつかの規格が存在します。そのため国、地域、企業によって求める規格も異なり、どの規格に準拠したら良いか判断が難しい側面があります。
生分解性の規格には、日本のJIS、欧州のEN規格、北米のASTM、国際標準化機構のISOなどの堆肥化の規格がありますが、自然環境下での生分解の国際規格は整備中という状況です。
生分解性・堆肥化の課題
自然環境保全、マイクロプラスチック問題の解決のため、生分解性のある材料は様々な場面で活用が期待されています。特に使い捨てされる製品・梱包資材、農業・漁業用途などの自然環境下で使われる製品・資材において、生分解性材料の活用が進んでいます。また近年では化粧品、日用品、産業・工業用途等の製品にまで活用分野は広がってきています。
しかしながら生分解性材料にも課題があります。通常、生分解性材料は機能性や耐久性が比較的劣ることが多いとされています。これは生分解性材料が光や水による分解反応をきっかけにして生分解するため、ある程度は仕方がないことだと言えるでしょう。もちろん生分解性材料を開発・生産する企業は日々、機能性や耐久性の向上に取り組んでいます。また現状、活用分野は拡大してきているとはいえ、利用シーンが限られているため生産コストも高いとされており、価格面から使用をためらう声も聞かれます。
生分解性のメリット・デメリットを正しく把握し、活用できる製品・梱包資材に対して、積極的な採用と生産コスト低減や技術開発が促進されるような後押しも重要だと言えます。
生分解するからポイ捨てをしても良いと誤解される方がいるかもしれませんが、それは改める必要があります。生分解性材料によっては自然環境下では完全に生分解しないものもあります。また地域・季節によって温度、微生物の種類、量が異なるため思ったように生分解しないケースもあります。あくまでも生分解性材料は、意図せず自然界に流出してしまった場合、出来るだけ自然環境を汚さないことが目的となることを忘れてはいけないでしょう。
次の章からNISSHAのサステナブル資材の生分解性について紹介します。
NISSHAでも堆肥化の検証をしてみました
NISSHAは天然材料を用いたパルプ成形品やバイオコンポジット成形品を展開しています。
今回、パルプ成形品であるPaperFoam®(ペーパーフォーム、主原料:でんぷん+パルプ)、Pulp-Thermoforming(パルプサーモフォーミング、主原料:パルプ)の2製品を生分解させる検証を社内で実施しました。検証では「土壌生分解」を確認するため市販の腐葉土を購入し、成形品を埋めて屋外に放置し、生分解される程度を観測しました。
PaperFoam® ペーパーフォーム | Pulp-Thermoforming パルプサーモフォーミング |
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PaperFoam®とPulp-Thermoformingは、開始から1週間、2週間、1か月のサンプル状態をそれぞれ確認しました。どちらのサンプルも2週間までは原型を留めていましたが、1か月後にはバラバラになり、1つ1つの破片も小さくなっていました。検証の結果、PaperFoam®とPulp-Thermoformingは1か月でほぼ完全に生分解することが分かりました。
PaperFoam® ペーパーフォーム |
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Pulp-Thermoforming パルプサーモフォーミング |
持続可能な社会の実現に向けては、生分解や堆肥化、生分解性材料の特性をよく理解したうえでの利用普及が大切ではないでしょうか。
天然素材を用いたサステナブル資材にご興味のある方は、NISSHAまでお問い合わせください。
Paperfoam®(ペーパーフォーム)
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