EOG滅菌とは?原理や対象物、
AC滅菌との違いを分かりやすく解説

EOG滅菌(エチレンオキサイドガス滅菌)は、酸化エチレンガスを使った滅菌方法です。40~60℃の低温で滅菌が可能なため、特に熱に弱い素材や複雑な構造を持つ医療器材の滅菌に利用されます。ただし、酸化エチレンガスは毒性が高いため、滅菌後のエアレーション(残留ガス除去)に時間がかかるといった点に注意が必要です。 この記事では、EOG滅菌の原理や対象物、オートクレーブ(AC)滅菌および放射線滅菌との違い、メリット・デメリットについて解説します。

EOG滅菌とは?

EOG滅菌(エチレンオキサイドガス滅菌)とは、酸化エチレンガスを使用して、医療機器や器具に付着した微生物を化学的に殺滅させる滅菌処理方法です。EOG滅菌の特徴は、低温でも高い滅菌効果が得られる点です。40~60℃の環境で滅菌処理ができるため、熱に弱い素材にも対応できます。
また、浸透力が高く複雑な構造を持つ医療器材にも確実に作用するのが、酸化エチレンガスのメリットです。ただし、酸化エチレンガスは高い毒性と引火性を持つといったデメリットもあります。そのため、滅菌後のエアレーションには十分な時間をかけなければなりません。

EOG滅菌の原理

EOG滅菌は、酸化エチレンガスと微生物の遺伝物質やタンパク質を化学反応させる滅菌方法です。酸化エチレンはアルキル化剤として作用し、微生物の核酸やタンパク質と結合して、微生物が増殖できない状態にします。この化学反応は不可逆的であり、一度アルキル化された微生物は元に戻りません。
滅菌効果はガス濃度や温度・湿度・滅菌時間などの条件に依存します。酸化エチレンは、相対湿度が50%前後の環境で特に高い効果を発揮するガスです。湿度が適切でないと、ガスが微生物内部に浸透しにくくなるため、滅菌効果が減少します。湿度を適切に管理すればガスが微生物内部にしっかりと浸透し、効率的な滅菌が可能です。

EOG滅菌の対象物

EOG滅菌は、主に熱や高圧に弱い素材の滅菌に使用されます。代表的な対象物は、プラスチック製品・ゴム製品・紙製品や、カテーテル・内視鏡・腹腔鏡などの医療器材です。これらの製品はオートクレーブ(AC)滅菌や放射線滅菌では対応できないことが多いため、EOG滅菌が選ばれます。
EOG滅菌の最大の利点は、低温滅菌が可能で熱に弱い製品にも使え、材質が変性・変形しにくい点です。また、複雑な構造を持つ器具にも浸透力の高い酸化エチレンガスが隅々まで行き渡るため、効率的に滅菌できます。

EOG滅菌とオートクレーブ(AC)滅菌の違い

EOG滅菌とオートクレーブ滅菌は、いずれも微生物を殺滅させる方法です。EOG滅菌は熱に弱い材料でも損傷せずに滅菌が可能なため、プラスチックやゴムなどの素材に適しています。
一方、オートクレーブ滅菌は121℃から134℃の高温・高圧の飽和水蒸気を利用して、短時間で確実に微生物を殺滅させる方法です。高温に耐えられない素材には使用できないため、耐熱性のある金属やガラス製の医療器具など、用途が限定されます。
また、EOG滅菌は滅菌後に残留ガスを除去するエアレーションが必須で、処理に時間がかかります。一方、オートクレーブ滅菌は残留毒性がないため安全性が高く、処理時間も短く済みます。

EOG滅菌と放射線滅菌の違い

EOG滅菌と放射線滅菌では、微生物を殺滅させるメカニズムが異なります。EOG滅菌は、酸化エチレンガスを用いて微生物のDNAやタンパク質を化学的に変化させ、細胞の増殖を阻害して殺滅させる方法です。
一方で放射線滅菌は、ガンマ線や電子線などの高エネルギー放射線を照射し、微生物のDNAを直接破壊することで殺滅させます。放射線滅菌のメリットは、ガスや薬品等を使用しないので残留物の心配がなく、処理後すぐに使用可能な点です。EOG滅菌同様、熱に弱い素材にも適用できますが、材質によっては色や臭いなどが変質するため注意が必要になります。

EOG滅菌の効果に影響する要素

EOG滅菌の効果は、さまざまな要素によって左右されます。特に代表的なのが、以下の5点です。

ガス濃度 ガスの濃度が高いほど、滅菌効果も高まります。ある濃度範囲内では濃度が2倍になると、微生物の不活性化速度も2倍になるため、滅菌の効率が向上します。
湿度 適切な湿度管理が重要です。乾燥状態ではガスの浸透性が低下し、十分な滅菌効果が発揮されません。最大の効果を発揮させるには、相対湿度50%前後の環境が理想的です。
温度 温度が10℃上昇すると、滅菌速度が約2倍になります。ただし、60℃を超えると滅菌性能が低下するため、通常の処理に使用する際の滅菌温度は40~60℃程度です。
時間 滅菌時間が長ければ滅菌力は高まりますが、作業効率や素材への影響も考慮しなければなりません。最適な滅菌時間の設定が大切です。
分散の均一性 滅菌器内でガスや温度、湿度が均一に分散する必要があります。十分な滅菌効果を得るには、プレコンディショニング処理や攪拌装置が必須です。

各要素を適切に管理すれば、EOG滅菌は非耐熱性の医療器材にも効果的に適用できます。

EOG滅菌のメリット・優位性

EOG滅菌には、多くのメリットと優位性があります。代表的なのが、以下の3点です。

低温殺菌ができるため、温度・湿度に弱い物質を処理できる
EOG滅菌は、相対湿度が50%前後の環境であれば40~60℃の低温で処理が可能です。高温・多湿になる滅菌法で変形や損傷を受けるプラスチックや、ゴムなどの素材も処理できます。
プラスチックフィルムや紙、布類への浸透性が良好で、包装状態でも滅菌できる
酸化エチレンガスは、プラスチックや布、紙などの素材に対して高い浸透力を持ちます。複雑な形状の器具でもガスが素材の隅々まで行き渡り、包装された状態でも滅菌が可能です。医療器材の分解や包装材の開封なしで滅菌できるため、作業効率が向上します。
金属に対する腐食性がない
EOG滅菌は、金属への腐食性がありません。そのため、精密機器や金属部品を含む医療器材の耐久性を損なわないまま滅菌できます。

EOG滅菌は幅広い素材に安定した効果を発揮するため、多くの医療現場や産業で選ばれている滅菌方法です。

EOG滅菌のデメリット・注意点

EOG滅菌には多くのメリットがある一方、以下のようなデメリットや注意点も存在します。

酸化エチレンガスの毒性が強い
酸化エチレンガスには発がん性や毒性があるため、滅菌工程での取り扱いには厳重な注意が必要です。また、有毒ガス成分が滅菌済み器材に残る可能性があり、エアレーションによって残留物質を完全に除去しなければ使用できません。
滅菌およびエアレーションに長時間を要する
EOG滅菌には数時間から最大で10時間以上かかります。また、滅菌終了後のエアレーションにはさらに数時間から数週間必要なため、迅速に使用したい機器の滅菌には向きません。

EOG滅菌の運用には、滅菌作業者全員と作業環境の適切な管理や安全性の確保が必須です。

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