天然高分子は、セルロースやコラーゲンのような生体を構成している巨大分子で、生分解性や生体親和性が高いためドラッグデリバリーや組織再生材料として利用されます。
一方、石油資源やバイオマスを原料とする合成高分子は、分子設計の自由度が大きく、強度や耐薬品性を最適化しやすいことが特長です。また、主鎖から炭素を排した無機高分子は、シリコーンや生体活性ガラスのように耐熱・耐薬品性に優れ、医療機器の部材や骨修復材などに活用されます。
この記事では、天然高分子の特性や、医療における利用の例について紹介します。
天然高分子とは
天然高分子とは、生物が体内で合成する比較的小さな分子(モノマー)が繰り返し数多く結合し、分子量が1万以上に達するポリマーに成長した高分子化合物のことです。代表例には、タンパク質、デンプン、核酸、天然ゴム、セルロースなどがあります。例えばタンパク質であればアミノ酸分子が鎖状構造になり、セルロースであればグルコースが直鎖状に結合して高分子を構成しています。
天然高分子は、多くは酵素で分解される生分解性を持ち、生体親和性に優れます。天然高分子のこうした特性は、創薬や医療機器開発といった分野で活用されています。例えば、医療機器分野では生体適合性が評価され、ドラッグデリバリーシステムや組織工学用マトリックスとして利用されます。
天然高分子の化合物の例
- コラーゲン
- 動物の結合組織を構成する線維性タンパク質です。3本の鎖が絡み合ったような「三重らせん構造」を持ち、細胞接着を助けるため、スポンジや膜状に加工され、創傷被覆材や血管補綴材として用いられます。
- ヒアルロン酸
- ムコ多糖の一種で、卓越した保水性と粘弾性を持つ天然高分子です。関節内注射剤や眼科手術用粘弾剤に用いられ、組織親和性が高く、抗炎症効果も報告されています。
- アルギン酸
- ワカメやコンブなどの褐藻に含まれる多糖類です。2価のカルシウムイオン(Ca2+)によってゲル状になる性質を持つため、止血ドレッシングやドラッグデリバリー担体、歯科印象材などに利用されます。
- セルロース
- 高強度かつ透湿性に富む繊維状の多糖類です。植物繊維の主成分であり、地上に最も多く存在する多糖類と言われます。セルロースを使ったフィルムやハイドロゲルは、創傷治療材や3Dバイオプリンティング用の足場として実用化が進められています。
天然高分子と合成高分子・無機高分子の違い
生物が体内で合成する天然高分子に対して、人為的に設計された高分子は合成高分子、炭素を含まない高分子は無機高分子と呼ばれます。
それぞれの特徴について解説します。
合成高分子とは
合成高分子とは、石油やバイオマス由来モノマーを化学重合して得る人工高分子のことです。代表例には、ポリエチレン、ナイロン、ポリウレタンなどの合成樹脂があります。人為的に作成されるため、物性を制御しやすく、強度、柔軟性、分解速度を設計できる自由度の高さが特徴です。
医療機器分野でよく使われる合成高分子には、人工血管などに用いられるePTFE、吸収性縫合糸のポリグリコール酸などが知られます。
無機高分子とは
無機高分子とは、主鎖に炭素を含まず、ケイ素(Si)やリン(P)、ホウ素(B)などの無機元素で構成された高分子のことです。代表例には、ガラス、シリカゲル、ダイアモンドなどがあります。
高融点・難燃性・電気絶縁性に優れる一方、可塑性や生分解性は乏しいのが一般的です。医療分野では生体活性ガラスが骨結合性を示し、シリコーンエラストマーが人工乳房やカテーテル被覆材に用いられるなど、耐熱・耐薬品性を生かした利用が進んでいます。
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天然・合成・無機という3つの高分子は、起源も構造も異なりますが、医療現場では相補的に活用されています。近年は、生分解性ポリマーとシリコーンを多層構造で融合したカテーテルのように、ハイブリッド材料で性能を高める事例もあります。素材の特徴を総合的に評価し、目的に応じて組み合わせることで、より高性能な医療機器が実現できます。 NISSHAでは生体適合材を使った吸収性・非吸収性の医療機器、カテーテル・チューブ、内視鏡用処置具、手術機器など、幅広い医療機器の製造受託に対応します。ISO13485とQMS省令を基準とし、清浄度はクラス10,000に対応したクリーンルームで製造から出荷までの工程をサポートするので、ぜひご相談ください。詳細につきましてはNISSHAの医療機器製造受託ページ