血管系カテーテルとは?
用途や血管系カテーテルの種類を解説

血管系カテーテルは、検査や治療を支える現代医療に欠かせない存在です。しかし、「カテーテル」と一口に言っても、検査に用いるものと治療に用いるものがあり、さらに用途に応じて多種多様な種類があります。 この記事では、血管系カテーテルの基本的な定義、主な用途ごとの役割、血管系カテーテルの種類について解説します。

血管系カテーテルとは

血管系カテーテルとは、ナイロンやシリコン、フッ素樹脂などの高分子化合物で作られた柔らかい中空管を血管内に挿入し、圧や流量の測定、血液や体液の採取など、検査や治療に用いる医療機器です。太さはおよそ1mmから10mm、長さは数cmから2m近くまでとサイズの幅が広く、目的に合わせて形状が異なります。
代表例の心臓カテーテルでは、太ももや腕の動脈から直径2mm程度の管を冠動脈まで進め、薬剤を注入したりバルーンで拡張したりして、開胸手術を行わずに治療を実施できます。こうした低侵襲なカテーテル治療は、外科的手術における患者さまの身体的・経済的負担を軽減し、現在も世界的に技術開発が続いています。

血管系カテーテルの主な用途

血管系カテーテルは、血管造影法(アンギオグラフィー)、PTCA(経皮的冠動脈形成術)、TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)、カテーテルアブレーションなど、幅広い検査や治療に用いられ、迅速な診断と低侵襲治療を可能にします。さらに、薬剤やデバイスを正確に病変部へ届けることで患者さまの回復を支えます。
ここからは、血管系カテーテルの主な用途について具体的に説明します。

血管造影法(アンギオグラフィー)

「アンギオグラフィー」と呼ばれる血管造影法は、太ももや腕の血管から直径約2ミリ・長さ1m前後のカテーテルを目的の血管まで送り、造影剤を注入しながらX線透視で連続撮影を行う血管内検査です。血管の狭窄・閉塞・動脈瘤だけでなく、血管が関係する臓器や腫瘍の状態も描出できます。
また、薬剤注入やバルーン拡張、コイル塞栓などの治療へ応用され、外科手術より苦痛や負担が少ないカテーテル療法として広く普及しています。血栓溶解や抗がん剤の局所投与も可能であり、日本人に多い血管疾患の低侵襲治療法として技術開発が進んでいます。

PTCA(経皮的冠動脈形成術)

PTCA(経皮的冠動脈形成術)は、狭窄した冠動脈を内側から拡げる低侵襲治療です。大腿動脈や橈骨動脈などから細いカテーテルを挿入し、大動脈を経由して狭窄部に到達させます。ガイディングカテーテル内にバルーンカテーテルを通し、病変部でバルーンを膨らませて拡張します。
胸部を切開する必要がなく、外科治療の身体的な負担や入院期間を抑えられる可能性があります。急性心筋梗塞の対応はもちろん、狭心症の治療としても広く行われています。

TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)

TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)は、カテーテルを用いて機能が低下した大動脈弁を人工弁に置き換える治療方法です。胸を開かずに済むため、高齢で開心術に耐えにくい大動脈弁狭窄症の患者さまも治療適応となります。
標準的な方法は太ももの付け根の血管から挿入する経大腿アプローチで、身体への負担が小さくて済みます。血管状態が不適切な場合は、心尖部や上行大動脈、鎖骨下動脈からカテーテルを導入する方法も選択されます。TAVIは TAVR(Transcatheter Aortic Valve Replacement)とも呼ばれます。

カテーテルアブレーション

カテーテルアブレーションは、正式には経皮的カテーテル心筋焼灼術と呼ばれ、不整脈を起こす異常な心臓内の局所を焼灼や冷凍凝固で除去し、心拍を正常化する治療です。不整脈は、心筋内に異常な電気回路があるものと、心臓の一部から異常な電気興奮が出ているものに大別され、いずれも対象となります。
直径2mm前後のカテーテルを首、鎖骨の下、足の付け根の血管から心臓へ進め、電気現象を計測し、原因部位を特定した上で高周波電流を流します。局所麻酔下で実施でき、治療後は圧迫止血と数時間の安静で済みます。心房細動や発作性上室性頻拍などの多様な不整脈に適応します。

血管系カテーテルの種類

血管系カテーテルには、薬剤を放出するタイプや微細血管向けタイプなど、多様な種類があり、治療対象などに応じて使い分けられます。ここからは、代表的な3種類の特徴とメリットを紹介します。

薬剤溶出バルーン

薬剤溶出バルーン(DCB/DEB)は、表面に再狭窄予防効果のある薬剤をコーティングしたバルーンを病変部で拡張し、薬剤を病変部に移行させて狭窄を防ぎます。従来は再狭窄が起きると通常のバルーンで押し広げるか追加ステントを留置するしかありませんでしたが、このデバイスにより治療の選択肢が広がりました。

薬剤溶出ステント

薬剤溶出ステント(DES)は、再狭窄を防止する薬剤を塗布したステントを体内に留置し、薬剤を徐々に血管へ溶出して再狭窄を抑えるデバイスです。2004年の保険適用以降、狭心症や心筋梗塞治療で広く用いられています。
局所へ効率的に薬剤を投与できるため、新生内膜の増殖を抑制します。通常のステントと同じ手技で植え込むことができ、導入も円滑です。しかし、血栓形成のリスクがあり、一定期間の抗血栓薬の服用が必要です。また、このデバイスの適応は病態や治療方針によって異なります。

マイクロカテーテル

マイクロカテーテルは、複雑病変に対する経皮的冠動脈インターベンションにおいて欠かせない極細デバイスです。
1.5~2.0Fr程度の先端径で、130cm・135cm・150cmの長さがあり、特に慢性完全閉塞病変に対する逆行性アプローチでは、150cmのタイプが活躍します。ガイドワイヤー操作の安定化やワイヤー交換、選択的薬剤・造影剤投与など、多彩な機能があります。

一部の病変に使われる特殊な血管系カテーテルの種類

重度の石灰化やステント再狭窄など、通常のデバイスでは対応が難しい病変には、以下の特殊カテーテルが活躍します。

エキシマレーザーカテーテル
先端からエキシマレーザー光を照射し、動脈硬化や血栓を直接蒸散させます。慢性完全閉塞、分岐部病変、急性心筋梗塞、ステント内再狭窄などに有効とされています。
ロータブレーター
ダイヤモンド粒子を付けたバーを毎分15万~20万回転させて石灰化病変を削ります。柔らかい弾性組織は傷つけにくく、削片は微小なため血流を阻害しません。
ダイヤモンドバック
ダイヤモンドで構成されるクラウンが軌道回転し、クラウン径より広い範囲を前後方向に切削できます。病変形態によっては、ロータブレーターとの使い分けや併用により、石灰化病変を治療します。

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