医療機器の洗浄は、患者さまの安全を守るために欠かせない重要なプロセスです。適切な洗浄が行われなければ、感染症のリスクが高まり、医療現場に深刻な影響を及ぼす可能性があります。洗浄には消毒や滅菌とは異なる役割があり、用手洗浄、機械洗浄、浸漬洗浄など複数の方法が存在します。また、洗浄の有効性を科学的に証明する洗浄バリデーションも重要な要素です。
この記事では、医療機器の洗浄とは何か、消毒・滅菌との違い、具体的な洗浄方法、洗浄バリデーションの工程まで詳しく解説します。
医療機器の洗浄とは
医療機器の洗浄とは、医療機器に付着した残留物や汚染物質(血液、体液、有機物など)などの異物を洗浄液で溶解させて除去し、微生物数を低減する工程です。塵や汚れが付着していれば無数の微生物を含むあらゆる種類の生物が棲みついているかもしれません。
滅菌医療機器の製造では滅菌工程前に洗浄を実施し、汚染微生物数を少なくします。未洗浄のまま滅菌処理をすると微生物の死骸が残存して汚れが固着し、洗浄しても残留しやすく滅菌不良の原因となります。洗浄によりバイオバーデンは大幅に減少し、その後の滅菌工程の信頼性向上につながります。
洗浄と消毒・滅菌の違い
洗浄・消毒・滅菌の違いは以下の通りです。
- 洗浄(cleaning)
- 対象物からあらゆる異物(汚れ、有機物など)を物理的に除去することです。用手洗浄や機械洗浄を用い、洗浄剤は界面活性剤、アルカリ洗浄剤などが一般的です。
- 消毒(disinfection)
- 生存する微生物の数を減らし、対象物から芽胞を除く多くの病原体を殺滅します。消毒は熱水消毒(80℃、10分間)や紫外線消毒、各種消毒薬による方法があります。
- 滅菌(sterilization)
- 細菌芽胞を含む微生物を殺滅または除去することです。滅菌方法は、材質や耐熱性などに応じて選択します。耐熱性の医療機器には高圧蒸気滅菌法が用いられることが多く、適用が難しい場合はEOGや過酸化水素ガス(プラズマ)など、他の滅菌方法が選択されます。洗浄は異物を物理的に除去し、微生物数を低減する工程、消毒は芽胞を除く病原体を殺滅する工程、滅菌は芽胞を含む微生物を殺滅または除去する工程です。
医療機器の洗浄方法
医療機器の洗浄方法は大きく3つに分けられます。汚れや有機物などの異物を洗浄液中に溶解させて除去するために、ブラッシングや清拭で行う用手洗浄、ウオッシャーディスインフェクターや超音波洗浄機を用いる機械洗浄、洗浄剤に一定時間浸す浸漬洗浄があります。ここでは、それぞれの洗浄方法の特徴について詳しく解説します。
用手洗浄
用手洗浄は、ブラシやスポンジなどを使用して物理的に洗浄する方法で、汚染された器具をブラッシングし、目視できる範囲で汚れを落として取り除きます。作業はブラッシング、浸漬、清拭などが中心で、浸漬洗浄と一緒に進める場合もあります。目視できる範囲で汚れを落とすため、作業者によってバラツキが出てしまい、時間がかかる方法です。
器具の数量が少ない場合、微細な器具の洗浄、機械洗浄できない場合は有効です。一方で、鋭利な器具による切創の危険性があり、作業者によって技術レベルが異なる点も踏まえて進めます。
機械洗浄
機械洗浄は、機械を使用して、超音波、水圧、洗浄剤により洗浄する方法です。用手洗浄に比べて洗浄条件を管理しやすく、洗浄結果のバラツキを抑えやすい特徴があります。代表的な装置はウオッシャーディスインフェクター、超音波洗浄機などです。
超音波洗浄は、超音波エネルギーで無数の真空状態の泡(キャビテーション)を発生させ、器具に付着した汚染物を剥ぎ取り、入り組んだ部分にも効果がおよび、繊細な器具の洗浄に適しています。一方で、膿盆など広い面積を有するものは中心部にキャビテーション効果がおよび難い場合もあります。また、ガラス製品や比重が軽いものは、条件によっては十分な洗浄効果が得られにくい場合があります。
浸漬洗浄
浸漬洗浄は、洗浄液中に漬け込むことで汚れを分解、除去する方法です。洗浄液中に漬ける工程で処理できるため、誰が実施しても洗浄効果にバラツキが出にくく、簡単に処理できる洗浄方法とされています。
汚れを除去する際は、洗浄液に漬け込む時間や漬ける状態をそろえ、洗浄液が対象に接する範囲を確保します。一方で、洗浄液に接していない箇所は洗浄できません。内腔のあるものは空気が残らないように浸漬する必要があり、空気が残ると洗浄液が接しない箇所が生じます。内腔のあるものを洗浄液中に漬ける際は、洗浄液に確実に接する状態を作り、汚れの分解と除去につなげます。
医療機器における洗浄バリデーションとは
医療機器における洗浄バリデーションとは、洗浄プロセス(洗浄の手順)とパラメータを確立し、事前に意図する洗浄効果が得られることを検証する取り組みです。手順とパラメータを遵守して作業を実施することで、1ロット目も100ロット目も、同様の洗浄効果が得られることを確認します。
滅菌医療機器の安全性を確保するためには、滅菌処理だけでなく、その前段階である洗浄工程が極めて重要です。残留した異物が人体に影響を与えないよう付着物を可能な限り分解・除去し、洗浄バリデーションによって確立した洗浄プロセスで意図する洗浄効果が得られることを事前に検証して、現場における確実な洗浄の実施につなげます。
医療機器の洗浄バリデーションの工程
医療機器の洗浄バリデーションの主な流れは次の3段階です。
- 洗浄基準の決定
- まず洗浄基準を定め、洗浄手順の決定につなげます。どの医療機器を対象とするのかを明確にし、洗浄の範囲を特定した上で、どのように洗浄するのかを決めます。この段階で、使用する洗浄装置、洗浄剤、手順などの詳細を定めます。洗浄装置の使い方や洗浄剤濃度などの条件をそろえておくことが、後段の洗浄手順の有効性検証の前提になります。
- 洗浄手順の実施
- 担当者が指定された手順に従って対象の医療機器を洗浄します。手順に沿って進めることで、洗浄の実施方法が統一され、洗浄剤濃度などの条件が所定どおりに管理されているかを確認しやすくなります。
- 洗浄手順の有効性検証
- 洗浄手順の有効性を検証するためにテストを実施し、意図した結果が得られているかを確認します。検査には通常、目視検査、微生物学的分析、化学分析が含まれます。目視検査は残留物や汚染の兆候を確認するために実施され、微生物学的分析は洗浄後の微生物の状況を評価します。化学分析は洗浄剤の残留物と濃度を確認するために行われ、洗浄手順や条件が適切であったかを見極める材料になります。
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