自動運転車やコネクテッドカーの開発は日々進化を遂げています。自動運転車 では、ドライバーは運転だけに集中する必要が無くなることから、車内空間にはこれまで以上に居心地の良さといった快適性が求められるようになります。近未来の車内ではAI(人工知能)がドライバーや乗員に向けてパーソナライズされた情報を案内し、コンテンツを大画面モニターに表示するといったイメージ図をよく見かけますが、そこで大きな役割を果たすのが車載ディスプレイです。今回はCASE※時代を迎え、大型化や高度化などの技術革新が進む車載ディスプレイと、それに関連するNISSHAの取り組みについてご紹介します。
※CASE:Connected, Autonomous, Shared and Service, Electric
Contents
自動車の電装化(EV化)や高度情報化が加速する中、今、カーナビなどの車載ディスプレイの大型化・高度化が注目されています。テスラのモデルSに搭載されている17インチの縦型巨大モニターは有名ですが、国産車でも2020年に登場したスバルの新型レヴォーグに縦型11.6インチのディスプレイが標準装備されるなど、国内外で車載ディスプレイの大型化・高度化が進んでいます。
2021年1月にオンラインで行われたCES2021では、メルセデス・ベンツが発表した新型電気自動車(EV)セダン「EQS」に採用する新たなインフォテインメントシステム「MBUX Hyperscreen(ハイパースクリーン)」が、自動車業界に限らず家電メーカーなど多くの参加者の関心を集めました。
※「EQS」および「MBUX」は、Daimler AGの登録商標です。
「MBUX」は2018年からメルセデス・ベンツで採用が始まった、対話型のAI音声アシスタント機能でナビゲーションなどができるシステムです。そしてAIによるインフォテインメントや快適性、車両機能の操作性や表示などをさらに進化させたのがMBUX Hyperscreenで、メルセデス・ベンツとして最大のヒューマンマシンインタフェース(HMI)だといわれています。
MBUX Hyperscreenの特徴の一つが、ダッシュボード一面に広がる大きく湾曲した大型ディスプレイです。運転席側から助手席側まで左右に広がったディスプレイは横幅が141cm、ディスプレイの有効面積は2432.11平方cmにのぼります。広く丸みを帯びたコックピットに沿うように大きく湾曲したスクリーンユニットは、3つのディスプレイがまるで1枚のスクリーンのようにシームレスに連結した構造になっています。
鮮やかな表示を追求するために中央と助手席側のディスプレイには自発光素子を使ったOLED(有機ELディスプレイ)を採用し、画角や照明に関係なく高コントラストな表示を実現しています。
メルセデス・ベンツCTOのサジャド・カーン氏もCES2021で「新しいMBUX Hyperscreenは独特の美しさと、卓越した使いやすさを兼ね備えている」と紹介しました。(同社リリースより)
車載ディスプレイに必要不可欠な技術・製品の一つがタッチパネルです。NISSHAではスマートフォンやタブレット、ゲーム機、また産業用端末や自動車の車載品として、タッチパネルを国内外で30年以上にわたって開発・供給してきました。NISSHAのタッチパネル(タッチセンサー)は、 静電容量方式タッチパネルです。これは、パネルの表面に指で触れると、透明電極間の静電容量(電荷)が変化し、その変化を電気信号として検出することでタッチ位置が認識されるという仕組みです。
また、NISSHAのタッチパネルはシクロオレフィンポリマー(COP)というプラスチックフィルムを基材に使用しています。COPは透明かつ曇りが少ないフィルムで、ガラスと同等の高い透過率と低Hazeという光学特性を持っています。反射率も低く抑えられているので、モアレと呼ばれる波紋のような模様が画面上に発生することもありません。
タッチパネルはOLEDの上に組み込まれますが、OLEDの高コントラストで鮮やかな映像は、高い透過率と低Hazeのおかげで妨げられることなく画面に表示することができます。また低い反射率はOLEDの漆黒感を損なわず、画面をオフにしたときのシームレス(画面と額縁の視差をなくす)を実現します。
さらに、 COPフィルムを基材とするNISSHAのタッチパネルは、ガラスを基材とするセンサーよりも薄くて軽く、曲げることもできるうえ、耐衝撃性もあるため落としても割れることがありません。またフィルムの特長を活かして、一般的な四角形の平面だけでなく台形や曲面(最小R100㎜)など異形状のデザインへの加工も可能です。さらにディスプレイの表示装置を囲む枠(額縁)の幅が狭い狭額縁設計によって表示領域が広くなり、デザイン自由度も高くなることから、スタイリッシュでより洗練されたプロダクトデザインにも対応できます。
髙コントラストで鮮やかな表示が可能なOLEDは、基盤をプラスチック(POLED:プラスチックOLED)にすることで曲面化も可能です。NISSHAのCOPタッチパネルは、その優れた視認性とデザイン自由度の高さから、OLEDとの組合せに高い親和性があるといえます。
大型のタッチパネルを製造するには専用の設備が必要になりますが、NISSHAでは2020年に大型タッチセンサー用の専用設備を導入しています。これにより、スマートフォン向けから大型車載ディスプレイに対応する曲面大型タッチパネル(最大1000㎜)まで、幅広いサイズバリエーションへの対応が可能になりました。車載要求を満たす仕様の製品を安定的に提供できることも、NISSHAのタッチパネルの大きな特長の一つだといえます。
NISSHAでは、自動車の次世代デザインニーズに合わせた曲面大型タッチパネルなどを提供しています。
詳細はこちらへ。
後編 カバーパネル成形技術について
フィルムディバイス開発や量産におけるご相談はお気軽にご連絡ください