薬剤溶出ステント(DES)は、心臓の冠動脈治療で広く使われている医療機器です。ただし、基本構造や従来のステントとの違い、世代ごとの進化を正確に説明するには、相応の知識が求められます。
この記事では、DESの概要、利用背景、メリット・課題、世代間の違いを解説します。再狭窄を抑える仕組みはどうなっているのか、第1世代から第3世代へとどのような改良が重ねられてきたのかといったDESの疑問を説明する際の基礎知識としてご活用ください。
薬剤溶出ステント(DES)とは
薬剤溶出ステント(DES)は、血管を内側から支える金属製の骨格に、再狭窄を抑える薬剤を組み合わせた冠動脈疾患用ステントです。経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で使われ、血流を確保する物理的な役割と、血管内の過剰な組織増殖を抑える薬理的な役割を同時に担います。
DESが開発されるまでの治療では、血管形成術のみでは血管が再び狭くなる例が少なくなく、金属ステントの導入で改善された後も、新生内膜の増殖による再狭窄は一定割合で起きていました。DESは、この問題に対して局所的に医薬品を届ける設計を取り入れた点に特徴があります。
DESは単なる金属ステントの改良ではなく、薬剤送達機能を備えた複合医療機器であるといえます。
薬剤溶出ステント(DES)の基本構造
DESの基本構造は、ステント本体(金属骨格)、薬剤、そして薬剤を保持・放出するコーティング層の3つで成り立っています。血管内に留置されると、金属骨格が内腔を支え、表面の薬剤が一定期間にわたって血管壁に作用します。
ステント本体は、拡張時の支持力や追従性、デリバリー性を左右する中核部材です。チューブ型やリンク型など設計の考え方は複数あり、形状や材質の違いが拡張挙動や血管との適合性に影響します。
薬剤には細胞増殖を抑える成分が用いられ、再狭窄の主因である新生内膜の過剰形成を抑制します。コーティング層は、薬剤の保持と放出速度の調整を担う部分です。
製品設計では、薬剤の選定に加えて、ポリマーの生体適合性、溶出制御性も考慮されます。
薬剤溶出ステント(DES)が利用されるようになった背景
DESが広まった背景には、従来の冠動脈疾患の治療で再狭窄を十分に抑えられなかった事情があります。
経皮的冠動脈形成術(PTCA)は低侵襲な治療として普及しましたが、バルーン拡張のみでは再狭窄率が約30~50%に達しました。その後ベアメタルステント(BMS)が導入されて改善されたものの、それでも約20~30%の再狭窄が残り、再治療を要する患者さまが一定数いました。
DESは、血管を広げて保持するだけでなく、局所に薬剤を届けて細胞増殖を抑えるという発想から生まれました。機械的拡張と薬理作用をひとつの機器で両立させた点が、採用が広がった理由です。
薬剤溶出ステント(DES)のメリット・課題
薬剤溶出ステント(DES)を理解する上では、再狭窄抑制という大きな利点と、血栓症予防のために求められる管理負担の両面を押さえることが重要です。
以下では、DES治療のメリットと課題を解説します。
薬剤溶出ステント(DES)のメリット
DESのメリットは、再狭窄率を大幅に下げられる点です。ステント表面から細胞増殖を抑える薬剤が徐々に放出されるため、新生内膜の過剰形成が起きにくく、ベアメタルステント(BMS)に比べて再狭窄の発生が少なくなっています。再狭窄率の低下があったため、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応は拡大されることになりました。
ただし、新世代DESでもステント内再狭窄は1年が経過した時点で約5~10%で発生するとされており、再狭窄がなくなったわけではありません。大幅に改善されたものの、完全に排除された問題ではないという点は押さえておく必要があります。
薬剤溶出ステント(DES)の課題
DESの主な課題は、ステント血栓症への注意が欠かせない点です。薬剤の作用で血管内皮の治癒が遅れると、ステント表面が血液成分と反応しやすい状態が続き、副作用として血栓が形成されるリスクが生じます。ステント血栓症の頻度自体は高くないものの、発生した場合は重大な心血管イベントにつながりうるため、留置後の管理上、無視できない問題です。第1世代DESでは遅発性・超遅発性のステント血栓症が大きな課題となり、後の製品改良でも重要な評価項目として扱われてきました。
血栓症リスクに対応するため、DES留置後の患者さまには抗血小板薬の継続的な服用が前提になります。従来は2剤併用抗血小板療法(DAPT)を一定期間続ける運用が一般的で、留置後1年間の継続を想定した評価例もあります。近年はデバイスの改良に伴いDAPT期間の短縮も進んでいますが、出血リスクと血栓リスクの両方を見ながら判断する必要があり、治療後の管理はベアメタルステントより複雑になります。
薬剤溶出ステント(DES)の3つの世代
薬剤溶出ステント(DES)には3つの世代があり、世代が進むにつれて再狭窄抑制に加え、安全性や操作性も改良されてきました。世代間の違いは、薬剤を保持する表面材料、金属骨格の設計、溶出薬剤の種類、留置後の血栓リスクなどに表れています。大まかにいえば、1世代は効果を示した初期モデル、第2世代は安全性を高めた改良型、第3世代は長期的な負担をさらに減らす方向で進化したタイプです。
以下では、DESの各世代について解説します。
第1世代DES
第1世代DESは、薬剤溶出ステントの有効性を広く示した最初の世代です。日本では2004年に販売が始まり、再狭窄率を大幅に下げたことで、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)の適応拡大につながりました。従来の金属ステントでは再治療が必要になる例が課題でしたが、第1世代DESの登場でその弱点は大きく改善されています。
一方で課題もあり、留置後、時間が経ってから血栓が生じる遅発性・超遅発性のステント血栓症が問題となり、抗血小板薬を長期間継続する必要性が強く認識されるようになりました。発生頻度自体は高くないものの、発生時の影響が大きいため、次世代のDESでは表面材料や骨格の見直しが進みました。
第2世代DES
第2世代DESは、第1世代で見えた課題を改善した世代です。主な変更点は、臨床研究の中で薬剤を保持する表面材料の生体適合性向上に加え、溶出薬剤や金属骨格が見直された点にあります。骨格がより薄くなったことで血管へのなじみがよくなり、デリバリー性も改善されました。有効性を保ちながら、安全性と操作性を高めた設計といえます。
第1世代で問題となった過敏反応や血管への負荷が軽減され、ステント血栓症への懸念も小さくなりました。国内では2009年5月にゾタロリムス溶出ステント、2010年1月にエベロリムス溶出ステントが発売され、その後、中長期の安全性が改善されたことを背景に主流化が進みました。
ただし、血栓リスクが完全になくなったわけではなく、DESである以上、留置後の抗血小板療法や経過管理が重要である点は変わりません。
第3世代DES
第3世代DESは、長期的な安全性をさらに高める方向で進化した世代です。生体吸収性ポリマーを使用するタイプが代表的で、薬剤の放出が終わった後に表面材料が体内で吸収される設計が採用されています。留置直後はDESとして機能し、一定期間後は金属骨格のみが残る形に近づく点が特徴です。骨格もさらに薄くなり、血管への負担を抑える工夫が進んでいます。
第3世代DESは再狭窄抑制の効果を維持しつつ、長期間残存する表面材料の影響を減らす考え方で開発されました。びまん性病変や小血管病変など再狭窄が起きやすい病変でも有効性が報告されており、2剤併用抗血小板療法(DAPT)の期間短縮も進んでいます。
医療機器の製造受託ならNISSHAにお任せください
医療機器の製造受託先を選ぶ際は、QMS省令に準拠した製造体制、クリーンルーム環境、グローバル規制への対応力が重要な判断基準になります。NISSHAでは、シングルユース医療機器を中心に、製造・組立・検査・包装・滅菌対応・出荷まで一貫した受託体制を整えています。詳細につきましてはNISSHAの医療機器製造受託ページをご覧ください。






















































