フォトリソグラフィは、光(主に紫外線)を使用して基板上のCu薄膜などにパターンを形成する技術です。パターン形成にはレジストとよばれる感光性樹脂が使用され、レジストは最終的に有機溶剤などで除去されます。
このように通常のエッチング加工では除去されるレジストですが、レジストを用いてさまざまな微細構造体を作成することも可能です。レジストで作られた微細構造体は、世の中のさまざまな場所で利用されています。
今回の記事では、レジストの特徴や用途、レジストを使用した微細構造体の形成事例などをご紹介します。
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感光性樹脂は、光に反応して化学構造が変化する高分子化合物です。例えば、光によって着色する樹脂や、光を当てると架橋反応が進んで溶媒に溶けなくなる樹脂などがあります。
冒頭でご紹介したレジストも感光性樹脂の1種です。レジストには、光を当てると硬化するタイプ(ネガ型)と、光を当てると柔らかくなるタイプ(ポジ型)が存在します。レジストはこれらの特性を生かして、フォトリソグラフィで使用されています。
金属のエッチング加工においてレジストは主役ではありません。レジストは、金属薄膜のエッチング箇所を指定するために使用される縁の下の力持ちなのです。
フレキシブル基板の配線などをエッチング加工する場合を考えてみます。
まず、パターニングする金属薄膜の上にレジスト膜を積層形成します。
次に、このレジスト膜にフォトマスクを当てて露光、現像することで不要なレジストが除去され、マスクパターンが形成されます。
こうしてレジストのマスクを形成した基材をエッチング液に通すことで、マスキングされていない部分の金属薄膜が除去され、最終的に目的の形状の金属パターンが得られます。
多くの場合、配線などのパターニングに使われるレジストは最終的に除去されます。
つまり、金属をパターニングするための副資材の役割です。
金属のエッチング加工ではあくまでも「脇役」だったレジストですが、レジストを使用して微細な構造体を作る場合もあります。
このケースでは、基板上にレジスト膜を形成し、作りたい構造体の形状に合わせてレジストに光を照射します。 これにより、レジストを任意にパターニングできるのです。
レジストで作成した構造体には、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは5つの例をご紹介します。
液晶ディスプレイには、カラーフィルタとよばれる基板が使用されています。カラーフィルタ上には赤、緑、青の3色の画素が順に並んでおり、各画素はブラックマトリックスとよばれる構造で仕切られています。
実は、これら各画素とブラックマトリックスは全てレジストで作られているのです。
カラーフィルタ上の各画素は非常に小さいため、特定部分をピンポイントで色付けして製造するのは現実的ではありません。そこで役立つのが、レジストの感光性です。赤、青、緑のレジスト(カラーレジスト)を使用してフォトリソグラフィでパターニングを行えば、指定した部分にだけレジストを残せます。
液晶ディスプレイの画質を向上させるには、各画素の仕切りであるブラックマトリックスをより黒く、より細くする必要があります。精密なブラックマトリックスを形成するには、黒色のレジストをフォトリソグラフィでパターニングするのが最適です。より細いパターンを形成できる、高性能なブラックマトリックス用レジストの開発が日々進められています。
レジストは、電子機器の配線を隠すためにも利用されています。
スマートフォンなどの外周部には検出信号を取り出すための配線(額縁配線)が存在します。従来は額縁配線をマスキングするためのパターンをガラスパネル上に印刷していましたが、印刷の位置精度が悪いため額縁のマスク部分が広くなる点が問題でした。そこで考案されたのが、レジストのパターニングによるマスキングです。
フォトリソグラフィを用いて、額縁配線上にのみ高精度でレジストを形成します。結果として従来よりもマスク部分が狭くなり、透明部の面積をより広くできるようになりました。
マイクロ流路の壁部分は、レジストを塗布した基板を回転させながら露光する方法(回転傾斜露光法)などで形成されます。これもフォトリソグラフィによる微細加工の1種です。
パターニングしたレジストをメッキ用の鋳型として使用するケースもあります。微細パターンを形成したレジスト上に金属をメッキした後、金属部分を取り外して製品とする方法です。取り外した金属部分を鋳型として樹脂成形を行う場合もあります。
フォトリソグラフィを用いるとアスペクト比の大きい鋳型を作成できるため、小型化が要求される金属部品の製造にはこの方法が活用されています。例えば、高機能LSI中で使用するマイクロナノコネクタもこの方法で作られています。
メタマテリアルは、ナノメートルサイズの構造体を大量に集積したものです。ナノ構造の大きさや形を制御することで、自然界の物質では不可能なさまざまな光学特性を実現できます。ディスプレイやカメラのカラーフィルタとしての利用も検討されている、有望な物質です。
メタマテリアルの製造に必要なのが、フォトリソグラフィです。シリコン基板上のレジストに四角形をパターニング後、レジスト上にアルミニウム薄膜を塗布してメタマテリアルを製造します。四角形の1辺の長さや四角形間の間隔を調整して、さまざまな色を作り出すことが可能です。
NISSHAでは、フォトリソグラフィの受託加工サービスを扱っています。ロールtoロール方式の設備を保有しており、高い精度で大量生産が可能です。
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