バルーンカテーテルは、先端に付いたバルーン(風船)を膨らませることで、血管や管腔を広げたり、カテーテルを体内に固定したりする医療機器です。なかでも血管形成術用バルーンカテーテルは、狭くなった血管を内側から押し広げる治療に用いられ、バルーンの膨らみ方や機能によって複数の種類に分けられます。
この記事では、バルーンカテーテルの基本から、血管形成術用バルーンカテーテルの種類、用途ごとの特徴まで解説します。
バルーンカテーテルとは
バルーンカテーテルとは、先端のバルーンを膨らませて使う医療用の管です。代表的なものに、膀胱に留置した管が抜け落ちないよう工夫された「フォーリー」と呼ばれるタイプがあります。こうした留置用の用途に加え、その後はさまざまな目的に応じたバルーンカテーテルが開発されました。1960年代にはトーマス・フォガティによって血栓除去用バルーンカテーテルが開発され、さらに血管形成術用のバルーンカテーテルも登場したことで、用途は大きく広がりました。現在は、心臓血管用のほか、消化管・胆管用、泌尿器用などがあります。ここでは、主な種類を紹介します。
血管形成術用バルーンカテーテル
血管形成術用バルーンカテーテルは、冠動脈や末梢血管などに使用される、先端にバルーンが付いた管です。動脈硬化などで狭くなった血管(狭窄部)を、内側から物理的に押し広げる目的で使用されます。
使い方は、まず手足の血管から管(ガイディングカテーテル)を挿入し、その管の中にバルーンカテーテルを通して、狭窄部までバルーンを進めます。目的の場所に届いたらバルーンを膨らませ、狭くなった血管の内腔を拡張します。そして、十分に広がったらバルーンをしぼませて抜き取ります。狭窄部まで到達させるための通過性や、狭窄部を拡張するための拡張性能を備えているのが特徴です。病変によっては、再狭窄を防ぐためにステントと呼ばれる金属製の網状構造体を留置することもあります。
その他のバルーンカテーテル
バルーンカテーテルは、血管形成術以外の治療や処置にも用いられます。代表的なのが膀胱留置用カテーテルで、尿道から膀胱内に挿入し、先端のバルーンを水で膨らませて固定することで、尿を持続的に体外へ排出します。自力で排尿できない場合や、手術後に排尿管理が必要な場合などに使われます。
また、食道が狭くなって食事を取りにくい場合には、内視鏡で確認しながらバルーンを膨らませ、狭窄部を内側から広げる食道拡張術に用いられます。さらに、胆汁の流れが悪くなったときに行う経皮経肝胆道ドレナージや、急性胆嚢炎などで行う経皮経肝胆嚢ドレナージでも、チューブの固定や排液の補助にバルーンカテーテルが使用されることがあります。
血管形成術用バルーンカテーテルの種類
血管形成術用バルーンカテーテルは、加圧時の膨らみ方の違いにより主に3種類に分けられます。ここでは、それぞれの特徴と用途を解説します。
コンプライアントバルーン
コンプライアントバルーンは、加圧に応じてバルーン径が大きく変化する柔軟性の高いバルーンです。ポリウレタンやナイロン系エラストマーなどの柔軟性の高い材料が用いられることが多く、低圧でも膨らみやすい点が特徴です。血管壁の形状に沿って広がりやすいため、血管への追従性に優れています。
一方で、拡張径の精密なコントロールを必要とする用途では、ノンコンプライアントバルーンが選択されることがあります。
セミコンプライアントバルーン
セミコンプライアントバルーンは、中程度の弾性を持つ素材で作られ、加圧に応じてバルーン径がある程度変化するタイプです。狭窄部への到達性に優れており、血管が屈曲している場合や、狭い部位まで進める必要がある場合に用いられます。拡張圧を調整することで径をある程度コントロールできるため、病変を広げる初期段階で使われることが多い点も特徴です。広がりやすい部分から膨らみ、硬く細い部分を徐々に押し広げるイメージで使用されます。
一方、硬い石灰化病変では、狭窄部が十分に広がらず、両端の正常に近い部分だけが膨らむ「ドッグボーン現象」が起こる場合があります。そのため、病変の硬さや血管径を見極めて選択することが大切です。
ノンコンプライアントバルーン
ノンコンプライアントバルーンは、PETなどの硬い素材で作られ、加圧してもバルーン径がほとんど変化しないタイプです。高圧で拡張しても径を一定に保ちやすいため、狙った血管径に合わせて正確に広げたい場合に用いられます。特に、石灰化を伴う硬い病変の拡張や、ステント留置後にステントを血管壁へ密着させる後拡張・最適化に適しています。広がりやすい部分から膨らむのではなく、しっかり圧をかけて狭窄部を押し広げるイメージです。
また、ドッグボーン現象が起こりにくい点も特徴です。一方で、柔軟性は低いため、屈曲した血管や狭窄部への到達性はやや劣ります。
特殊な機能を持つバルーンカテーテル
バルーンカテーテルには、薬剤送達や石灰化病変への対応など、特殊な機能を持つものもあります。ここでは代表的な3種類を解説します。
DCB
DCBはDrug Coated Balloonの略で、日本語では薬剤コーティングバルーンと呼ばれます。バルーン表面に細胞増殖を抑える薬剤を塗布し、狭窄部で拡張することで血管壁へ薬剤を届ける仕組みです。冠動脈治療では、ステント内再狭窄の治療や、ステントを追加で留置したくない病変などで用いられます。薬剤を十分に移行させるため、狭窄部まで速やかに進め、一定時間バルーンを拡張することが求められます。
血管内にステントを留置せず治療できる可能性がある一方、硬い病変や狭窄が強い部位では、事前に通常のバルーンやスコアリングバルーンで内腔を確保してから使用するなど、病変の状態に応じた前処置や判断が必要です。
IVLバルーン
IVLバルーンは、Intravascular Lithotripsy(血管内破砕術)に用いられる特殊なバルーンカテーテルです。血管内でバルーンを拡張し、カテーテルから発生する衝撃波を石灰化病変に照射することで、硬くなった石灰化プラークに亀裂を入れ、血管を広げやすくします。
通常のバルーンでは十分に拡張しにくい高度石灰化病変に対して使われ、処置後に通常のバルーン拡張やステント留置を行いやすくする役割があります。石灰化を削る治療とは異なり、細かい破片が末梢へ流れるリスクや血管損傷のリスクを抑えやすい点が特徴です。ただし、適応は病変の性状や血管の状態によって判断されます。
スコアリングバルーン
スコアリングバルーンは、バルーン表面に刃状の部品やワイヤーを備えた特殊なバルーンカテーテルです。拡張時に力が特定の部位へ集中するため、通常のバルーンよりも狙った位置に切れ込みを入れながら病変を広げやすい点が特徴です。石灰化を伴う硬い病変や、ステント内再狭窄で増えた新生内膜の処理などに用いられます。
病変を整えた上で、DCBの使用やステント留置につなげる前処置として役立つ場合もあり、適応は症例ごとに判断されます。一方、構造上、通常のバルーンより通過性は劣るため、血管の屈曲や狭窄の程度を踏まえて慎重に使用されます。
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