医療機器メーカーで働きはじめると、自社が関わる製品の役割を早く理解したい場面が多くあります。なかでもインターベンションは、扱う機器の種類が多く、全体像をつかみにくい分野です。インターベンションとは、体を大きく切らず、カテーテルや針を血管や体内に通して行う治療介入全般を指します。外科手術より傷が小さく、体への負担が少ない点が特徴です。
この記事では、インターベンションの概要を整理した上で、治療で使われる医療機器を、アクセスデバイス・治療デバイス・イメージングシステムの3種類に分けて解説します。
インターベンションとは
インターベンションとは、体を大きく切開せず、カテーテルなどの医療機器を血管や体内に通して行う治療介入全般を指します。外科手術と比べて傷が小さく、回復が早く、体への負担が少ない点が特徴です。高齢者や、外科手術による体への負担を軽減したい患者さまに対しても選択される治療法の1つです。
治療する部位や目的によって種類はさまざまで、心臓の血管を治療するPCI、手足の血管を治療するEVT、心臓の構造異常を治療するSHDなどがあり、いずれも血管に通したカテーテルを病変まで進めて行う点が共通します。X線などの画像で体の中を見ながら、バルーンで血管を広げたり、ステントを留置したりするなど、治療する病気や部位に応じてさまざまな医療機器が使い分けられます。
インターベンションで使われる医療機器
インターベンションでは、目的の異なる医療機器を組み合わせて使います。血管に入り口をつくるアクセスデバイス、病変を治療する治療デバイス、体の中を映すイメージングシステムの3種類を解説します。
アクセスデバイス
アクセスデバイスとは、手首や足の付け根の血管を入り口にして、カテーテルを病変部まで届けるための道筋をつくる医療機器です。代表的なものが、血管へのアクセスを確保するイントロデューサーシースです。シース本体に血管を広げるダイレーターやガイドワイヤ、穿刺用の針などがセットになっています。
また、先に血管へ通すのがガイドワイヤで、親水性コーティングや先端の柔軟性により、複雑な血管内でも操作しやすく、後続のカテーテルを目的部位へ誘導する役割を担います。さらに、造影剤を流して血管の状態を映す血管造影カテーテルもアクセスデバイスに含まれます。なお、治療後に穿刺部位の止血を補助する血管閉鎖デバイス(VCD)も使用されます。
治療デバイス
治療デバイスとは、病変部に直接働きかけ、治療を行うための医療機器です。代表的なのが、狭くなった血管を内側から支えて広げたまま保つステントです。心臓の冠動脈では、再び狭くなるのを防ぐ薬剤を表面に塗った薬剤溶出性ステントが使われます。狭まった部分をふくらませて押し広げるバルーンカテーテルも、治療デバイスのひとつです。
末梢血管では、人工血管と金属製のステントを組み合わせたステントグラフトで血管を補強します。脳動脈瘤などでは、カテーテルを通して脳動脈瘤内部にプラチナ製のコイルを詰め、血液の流れ込みを抑制し、破裂リスクの低減を目的として使用されます。開頭手術を行わずに治療できる場合があり、体への負担の軽減が期待されます。このように、病変や部位に応じて、適したデバイスが選ばれます。
イメージングシステム
イメージングシステムは、血管や病変部の状態を画像として可視化し、診断や治療を支援する医療機器です。代表的なのが、超音波を使う血管内超音波診断システム(IVUS)です。血管壁の断面をとらえ、ステントのサイズ選びや治療効果の確認に役立ちます。血管の外側に近い部分まで見えるのが強みです。
もうひとつが、近赤外線という光を使う血管内光干渉断層撮影システム(OCT/OFDI)です。観察できる深さは1~2mmと浅いものの、IVUSと比べて高い解像度で血管内腔を観察できることが特徴です。観察時は近赤外線が血液で乱反射するため、造影剤などを注入して血液を一時的に排除します。
インターベンションで使われる代表的なカテーテル
カテーテルは役割ごとに形状が異なります。治療器具を病変部まで導くガイディングカテーテル、先端のバルーンで血管を広げるバルーンカテーテル、蛇行した血管や複雑病変に対応するマイクロカテーテルの3種類を解説します。
ガイディングカテーテル
ガイディングカテーテルは、穿刺した血管から挿入する、中が空洞になったチューブ状のデバイスです。ほかのカテーテルより太く、安定した通り道をつくり、バルーンカテーテルやステントなどの治療デバイスを、目的の病変部まで安全に送り届ける役割を担います。
たとえば、心臓の冠動脈を治療するPCIでは、冠動脈入口部にガイディングカテーテルを配置し、その内側を通してガイドワイヤや治療デバイスを病変部へ進めます。ガイディングカテーテルは治療デバイスの通り道となるだけでなく、冠動脈の屈曲や石灰化から生じる抵抗に対してカテーテルを進めるためのバックアップサポートとなります。
バルーンカテーテル
バルーンカテーテルは、先端のバルーンを膨らませて、狭くなったり詰まったりした血管を内側から押し広げるためのカテーテルです。病変部までバルーンを進めた後、バルーン内に希釈した造影剤を注入して拡張し、狭窄した血管を内側から押し広げます。
また、ステントを留置する前に通り道を広げたり、留置後にステントを血管壁へ密着させたりする場面でも使われます。外科手術より体への負担が少なく、短時間で治療できる利点があります。バルーンの径や長さは、治療対象となる血管径や病変長、病変の性状などを考慮して選択します。
マイクロカテーテル
マイクロカテーテルは、細径で柔軟性が高く、蛇行した血管や複雑病変へのアプローチを補助するカテーテルです。ガイドワイヤに沿わせて病変部近くまで進め、ガイドワイヤを補助しながら、ワイヤー交換や選択的な造影、薬剤投与などを可能にします。
一般的名称では、冠動脈だけに使う冠動脈貫通用カテーテルと、ほかの血管にも使える中心循環系マイクロカテーテルの2種類に分かれます。冠動脈では先端1mm以下の細さが選ばれ、慢性完全閉塞などの難しい病変で活躍します。
インターベンションで使われる代表的なステント
ステントは、広げた血管が再び狭くなるのを防ぐために留置する金属の網状の筒です。金属のみでできたベアメタルステントと、再狭窄を抑える薬剤を表面に施した薬剤溶出性ステントの2種類を解説します。
ベアメタルステント
ベアメタルステントは、薬剤を塗っていない金属だけでできた、もっとも基本的なステントです。網状の金属で血管を内側から支え、押し広げた状態を保ちます。留置した後は、血栓を防ぐ抗血小板薬を飲む必要がありますが、服用期間が薬剤溶出性ステントより短くて済む点が利点です。抗血小板薬を長く飲めない、出血のリスクがある患者さまに適しています。
一方で、血管の壁にできた傷を治そうとする反応までは抑えられません。傷が治る過程で内側の組織が過剰に増え、再び血管が狭くなる再狭窄が起こりやすい点から、現在は薬剤溶出性ステントが選ばれる場面が増えています。
薬剤溶出性ステント
薬剤溶出性ステントは、細胞の増殖を抑える薬剤を表面に塗ったステントで、現在のステント治療の中心です。血管を支えながら、再狭窄の原因となる組織の過剰な増殖を、薬剤がゆっくり放出されて抑えます。薬剤は主にステントを留置した部位に作用します。ベアメタルステントと比べて再狭窄を抑制できることから、現在広く使用されています。
一方で、ステント内側を覆う膜の形成も薬剤で遅れるため、血液が固まってできるステント血栓症に注意が必要です。第一世代では遅発性の血栓症が課題でしたが、改良が進んで現在は減っています。予防のため、血液を固まりにくくする抗血小板薬を、一定期間しっかり飲む必要があります。
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