温度センサーのカスタム生産に対応する
NISSHAの薄膜金属加工技術

近年、さまざまな分野で温度センサーの必要性が高まっています。

例えば、燃料電池自動車に搭載されている燃料電池のセルの温度分布を測定するためには、高精度、小型そして高寿命を持った温度センサーが必要になってきます。

他にも、近年注目を集めているマイクロフローリアクターを用いた化学合成技術には、反応を高精度で制御するため、リアルタイムで温度をモニターできるセンサーが求められています。

電子デバイスの多くは、デバイス本体または使用環境の熱条件によってその性能が左右されます。そのため、温度センサーには高い測定精度が求められます。また、温度センサーが使われるデバイスが多様化したことで、搭載性なども考慮した付加価値の高いセンサーが求められています。

NISSHAのロールtoロールパターニング技術は、測温抵抗体型温度センサーの開発に貢献します。

この記事では、金属を用いた温度センサーである測温抵抗体の種類や特徴に加え、その中でも薄膜の温度センサーを実現するNISSHAの加工技術について解説します。

金属を用いた温度センサーの種類

金属を用いた温度センサーには、熱電対、測温抵抗体、バイメタル温度計などがあります。

熱電対

ゼーベック効果を利用した温度センサーで、2種類の異なる金属線で構成されています。

まず、2種類の異なる金属を接触させて閉回路を作ります。その片方を加熱すると両方の接点に温度差が生じます。温度差が生まれることで金属固有の起電力が発生し、電流が流れます。これをゼーベック効果といい、熱電対はこの効果を利用した接触式温度センサーです。

温度センサーの中では比較的安価であり、シンプルな構造で信頼性が高い点が大きなメリットです。同一の熱電対で、0℃から1200℃など、幅広い温度範囲の測定が可能な点も熱電対の特徴の一つです。

バイメタル温度計

熱膨張率の異なる2種類の薄い金属板を張り合わせた温度センサーです。
熱膨張率が異なるため、温度変化が生じると合板が低熱膨張側に反り上がります。この変位によって温度を測定するのが、バイメタル温度計です。

構造が単純で耐久性に優れているため、工業用途などで多く用いられています。

測温抵抗体

温度によって変動する金属の電気抵抗を利用した温度センサーです。
一般的に、金属の電気抵抗は温度に比例して変化し、低温の場合、電気抵抗は小さく、高温になるにつれて電気抵抗は大きくなっていきます。この原理を利用したのが測温抵抗体です。

同じ接触式温度センサーである熱電対に比べて感度が高いことが特徴で、常温付近の温度や極低温の測定を得意としています。
また、温度と抵抗の関係がよく知られているため、精度が高いことも特徴の一つです。

一方で、最高使用温度は熱電対に比べると低く500℃程度、さらに機械的な衝撃や振動にも弱いといった面もあります。

今後、小型化が求められる領域では測温抵抗体を使った温度センサーが有利になってきます。

NISSHAのパターニング技術は、この測温抵抗体の開発に適しています。ここからは測温抵抗体に焦点を絞ってご紹介していきます。

測温抵抗体の種類と特徴

測温抵抗体は使用する金属により特性が変わるため、金属の選定が重要になってきます。

まず温度センサーには以下の特性が必要とされています。

  • 広い温度範囲で温度と抵抗の関係が一定
  • 化学的に安定で経年劣化が起きにくい
  • 固有抵抗の大きい

これらの条件をクリアする代表的な金属としてプラチナ(Pt)があります。他にも銅(Cu)、ニッケル(Ni)、白金コバルト(Pt/Co)などが利用されています。

次に、それぞれの材料で作られた測温抵抗体の特徴について確認します。

白金測温抵抗体

温度による抵抗値の変化が大きく、耐久性・安定性が高いことが特徴です。
白金測温抵抗体は最も多用される測温抵抗体です。主にPt100,Pt10,JPt100がありますが、Pt100が多く用いられています。

銅測温抵抗体

温度特性のばらつきが小さく安価で製造できますが、固有抵抗が小さいため小型化できないという課題があります。また、高温時に酸化しやすくなるため、白金などよりも測定範囲が低く、温度の上限は180℃程度となってしまいます。

ニッケル測温抵抗体

1℃あたりの抵抗値変化が大きく、安価に製造できる素材です。しかし、300℃付近で抵抗と温度の関係に変曲点があるため、300℃程度までしか使用できません。

白金・コバルト測温抵抗体

抵抗素子に白金・コバルト希薄合金を使用しており、他の測温抵抗体よりも低温に強く、-272℃まで測定が可能です。一方で、高温には弱く27℃までとなっているため、低温専用の温度センサーとして使われることがほとんどです。

それぞれの測温抵抗体ごとに、測定可能範囲を表にまとめたものが以下となります。
この表から、白金は汎用性が高く、銅・ニッケルは価格を抑えたい場合に活用。そして、極低温の測定をしたい場合には、白金・コバルトを用いることがスタンダートになっていることがわかります。

種類 測定可能範囲
白金 -200℃~660℃
0℃~180℃
ニッケル -50℃~300℃
白金・コバルト -272℃~27℃

一般的な測温抵抗体センサーの課題

測温抵抗体はコイル状にした極細の抵抗線を、絶縁ガラスなどに入れ、金属製のフードで被覆した構造物になっています。

温度センサーを小型化するためには、抵抗線をできる限り細くしなければなりませんが、細線化にも限界はあり、測温抵抗体センサーを極小化することは難しいとされています。

近年では小さな隙間や小型部品への組み込みが要求されるようになっており、従来の測温抵抗体では対応することができませんでした。

しかし、小型デバイス市場において温度測定の要望は年々高まっており、極小温度センサーの登場は待ち望まれている状況です。

温度センサーの加工を実現するNISSHAの加工技術

NISSHAでは、ロールtoロールのパターニング設備を活用してフィルム上に測温抵抗体を形成する技術を開発しています。この技術により、測温抵抗体温度センサーの薄膜化、小型化が可能になります。

フィルム状の測温抵抗体であれば、小型製品の筐体に組み込みやすく、組み込み場所の自由度も高くなります。また、薄くて柔軟なセンサーであるため、平面だけでなく緩い曲面への設置も対応可能です。

フォトエッチング加工

NISSHAは測温抵抗体に用いられる銅やニッケルの薄膜エッチング加工に強みを持っています。Line/Space =10/10µmでの高精度配線をフィルム両面にパターニングする技術を保有しています。また、露光エリア500×1,000mmの大面積パターニングにも対応可能です。

薄いフィルムを基材としているので、電化製品の小型筐体や曲面に貼り付けることが可能です。また、配線設計が自由にできるため、組み込む筐体に合わせて自由にパターニングできます。

 

ロールtoロール

NISSHAでは、500mm幅のロールフィルムを使用した大量生産に強みがあります。割れやすく、扱いが難しいCOP(シクロオレフィンポリマー)のような材料のロールフィルムであっても、独自の装置開発技術により大量生産を実現しているため、コストを抑えることが可能です。

 

 

モジュール作製まで対応

大量生産したフィルムに対して、高寸法精度での個片カットや機能膜の貼合、筐体部品とフィルムを一体化したモジュールパーツの加工など、お客様の要望に応じた加工形態で製品を納入することが可能です。

 

 

NISSHAは薄くて搭載自由度が高いフィルムタイプの温度センサーを実現する加工技術を保有しています。興味を持っていただけた方は、まずは一度、お気軽にご相談ください。

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