センサー電極に使われる導電材料の種類
各材料の加工方法や用途をご紹介

センサーは、さまざまな物理現象、化学現象を電気などの信号に変換する部品です。たとえば、光に反応する光センサー、物体の速度や加速度を測定する振動センサー、溶液のpHを測定するpHセンサーなどがあります。
センサーの出力は主に電気信号であり、電気信号を取り出すには電極が必要です。検出対象の種類やデバイスの用途などに応じて、適切な電極が選択されます。

今回の記事ではセンサー電極の材料に着目し、材料ごとの機能や用途、加工方法などを紹介します。

Cu・Cu合金

 

Cuは電気抵抗値が低い材料であり、その特性を生かしてタッチパネル用の銅メッシュ電極などに使用されています。

タッチパネル用電極としては他にも、透明な膜状電極であるITO(酸化インジウムスズ)が知られています。しかしITOは電気抵抗が高いため、タッチパネルを大型化すると応答速度や検出感度が低下してしまう点が問題でした。そのため、電子黒板をはじめとする大型のタッチパネルでは電気抵抗が低い銅メッシュ電極がおもに採用されています。

続いては、Cu合金です。ひずみゲージの電極には、おもにNiをおよそ45%含む銅ニッケル合金が使用されています。
ひずみゲージは、測定対象物に加えられたひずみを電気信号として検出するセンサーです。測定対象物にひずみゲージを接着すると、材料の伸縮に応じてひずみゲージも伸縮します。この際にひずみゲージの電気抵抗が変化するので、この変化を測定すれば材料に加えられたひずみの大きさが分かります。

銅ニッケル合金の中でも特にコンスタンタン(銅55%、ニッケル45%)は、電気抵抗の温度依存性が小さいことが特徴です。そのためコンスタンタンは、ひずみゲージのように電気抵抗の精密測定が必要なセンサーに適しているのです。

コンスタンタンを使ったひずみゲージは、荷重、位置のゆがみや変位、振動などを測定するセンサーに使用されています。

CuやCu合金電極は、フォトエッチングによりパターニング加工されるのが一般的です。

NISSHAのCu合金パターニング加工はこちらで紹介しています。

Au

 

Auは電気化学センサーなどの電極として使用されています。電気化学センサーは酸化還元電位を利用して検体の状態を検出するセンサーであり、pH計やバイオセンサー(生体分子を検出するセンサー)なども電気化学センサーの一種です。

Auはイオン化傾向が小さく、金属状態で存在しやすい元素です。電気化学反応で使用しても溶出しにくいため、電気化学センサーの電極として優れています。

ITO

 

ITOは、電子ビーム蒸着やスパッタ蒸着、塗布などの工法によってフィルム上に成膜されます。

そのITO膜を電極形状にパターニングする工程ではエッチングが使われます。パターニングマスクの形成方法にはフォトレジストを使用する方法(フォトリソグラフィー)や、スクリーン印刷でマスク材を印刷する方法もあります。

加工方法は、製造する電極パターンのサイズや形状に対して適切な工法が選定されています。

NISSHAのITOパターニング加工についてはこちらで紹介しています。

Agナノワイヤーインク

 

Agナノワイヤーインクは、透明樹脂中にナノサイズの極微細なワイヤー状の銀フィラー(Agナノワイヤー)を分散した材料です。Agナノワイヤーは目視では確認できないため、透明な膜を形成できます。そのため、AgナノワイヤーはITOの代替材料として期待されています。

Agナノワイヤーインクでは、Agナノワイヤーが電気的な接点として機能します。Agナノワイヤーは樹脂中に分散して絡み合っているため、柔軟性のある樹脂材料を使用した場合、塗膜を折り曲げてもAgナノワイヤーの接点は維持されます。このような特徴から、Agナノワイヤーインクはフレキシブルデバイス用の透明電極などに使用されています。

 

カーボン

 

カーボンは電気化学センサーなどに広く利用されています。カーボン材料には「電位窓が広い」「表面修飾がしやすい」「価格が安い」といった特徴が有ります。炭素がつくる分子構造の違いにより、さまざまなカーボン電極が存在します。

カーボン電極を用いたセンサーの代表例は、血糖値センサーや圧力センサーです。

血糖値センサーでは、導電性のあるカーボン粉末を酵素とともにオイルで固化したカーボンペーストを電極材料として使用しています。このようなカーボンペーストは安価であり、また印刷により大量生産しやすい点が特徴です。

カーボン電極は、カーボンインク(ペースト)をベースフィルム上にスクリーン印刷する方法でパターニングされます。

PEDOT(ポリエチレンジオキチオフェン)

 

PEDOTは導電性ポリマーの一種であり、透明度の高い薄膜形成が可能な材料です。

導電性に加えて耐熱性や安定性も高く、さまざまな用途に使用されています。

また、ITO(酸化インジウムスズ)に代わる新たな透明電極材料としても注目されています。

ITOは、タッチパネル用の透明電極材料としてよく用いられる物質です。しかしITOに含まれるインジウムは発がん性を有するレアメタルであるため、健康への影響や資源の枯渇が懸念されています。そこで、ITOの代替としてPEDOTが検討されているのです。

PEDOT膜はスクリーン印刷によりパターニングできます。

NISSHAはセンサー電極加工のエキスパートです

NISSHAでは、フォトリソグラフィスクリーン印刷の受託加工サービスを行っています。

ロールtoロール方式の生産設備を保有し、大量生産を見据えたセンサー電極の開発をサポートします。

要望や質問があればお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

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