近年、生体内で分解吸収される材料、「生体吸収材料」が医療分野で注目され、活用が広がっています。 医療の質を高め、患者さんのQOL(クオリティ・オブ・ライフ)の改善にも大きく寄与する生体吸収材料。 本コラムでは生体吸収材料とはどのようなものか、どんな医療機器に使用されているのかなどご紹介していきます。
生体適合性材料の一種「生体吸収性素材」
医療分野において皮膚に接触したり、体内に入れられるような医療機器を構成する材料には「生体適合性」が求められます。
生体適合性材料の一種である生体吸収材料を利用した医療機器の受託製造や受託製造開発も、NISSHAは行っています。
生体適合性とはどのような性質で、生体適合性材料とはどのような材料かについて簡単に説明します。
生体適合性とは?
生体適合性とは、「装着あるいは移植した際に、生体に異物として認識され、排除されることなく馴染む性質」のことです。
生体適合性の低い材料が使用されてしまうと体が異物と判断して異物反応や拒絶反応が起こってしまいます。
異物反応や拒絶反応を起こすと、血栓や炎症が発生したり、中には発がんにつながることもあるため、特に体内に留置される医療機器では生体適合性が非常に重要になります。
生体吸収性材料とは?
生体適合性材料の中でも体内で分解し、体に吸収される材料を「生体吸収性材料」といいます。
その特性から体内に留置される医療機器に使用されることが多く、主に下記のようなメリットがあるので、QOLの改善にもなります。
- 手術後に除去のための処置を行う必要がなく、患者さまの苦痛を軽減できる
- 体内に長期にわたり留置されることがなく、安全性が高い
- 成長により体のサイズが変わる子供にも適用できる
- など
生体吸収性材料では、分解前の材料が生体適合性を持つだけでなく分解生成物の安全性も求められるため、より厳しい条件が課せられます。
生体吸収性材料に求められる条件
生体吸収性材料として使用される材料は、以下のような条件をクリアする必要があります。
- 分解前の材料が生体適合性に優れる
- 分解生成物が無毒であり、代謝・排泄される
- 適度な力学的特性を有する
- 適度な時期に分解・吸収される
- 任意の形状に成形加工できる
生体吸収材料の種類
生体吸収材料の種類は主に3つあります。
これらは、医療機器の使用用途などにより使い分けられます。
天然高分子
人や動物由来の高分子材料であり、生体親和性や吸収性が高い一方、抗原性によるアナフィラキシーや、感染症のリスクがあります。
主な天然高分子
コラーゲン、ヒアルロン酸、アルギン酸、ゼラチン、キチン、キトサン、カルボキシメチルセルロース(CMC)、グリコサミノグリカン、フィブリノゲン、etc.
合成高分子
人工的に作られた合成高分子は、天然高分子に比べると吸収性や親和性などに課題もありましたが、近年ではそれらを解消した材料が開発されており、医療機器への適用が広がってきています。
主な合成高分子
ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、L-ラクチド-ε-カプロラクトン共重合体、乳酸/グリコール酸共重合体、etc.
無機材料
主に骨や歯の欠損治療に使用されます。
主な無機材料
リン酸三カルシウム、炭酸アパタイト etc.
生体吸収性の金属として近年マグネシウムが注目され研究開発が進んでいます。
マグネシウムは生体吸収性を持ちながら金属であるため、樹脂に比べて強度が高いという特徴があります。
骨や関節の固定や縫合器具、ステントなどへの応用が期待されています。
生体吸収性材料の加工ならNISSHAにお任せください
QOLの改善にも役立つ生体吸収材料を使用した医療機器の製造・開発もNISSHAは行っております。
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